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国際物流総合展のセミナー・フォーラム関心度ランキング

DX化など先進施策に高い注目、わが業界の「強み」に

2021年10月11日 (月)

話題LOGISTICS TODAY編集部が9月24日から30日にかけて、物流企業や荷主企業を中心とする読者に対して実施した「国際物流総合展2021 INNOVATION EXPO」に関するニーズ調査(有効回答数837件、回答率26.3%)。会期中に開催されるセミナーやフォーラムの関心度調査では、地図情報を活用した配車システムやクラウドWMS(倉庫管理システム)、先進的な開発プロジェクトなど、物流業界における最新のトレンドを象徴したテーマに関心が集まった。本稿では、INNOVATION EXPOの見どころとしてLOGISTICS TODAYが特集内で紹介した、物流業界における日本の「強み」や、今後の物流展示会の運営のあり方についても考察する。

物流展10月13日開幕、注目ブースの見どころは(21年9月29日掲載)
https://www.logi-today.com/457786
物流展直前報告/注目を集めるブースはここだ(21年10月6日掲載)
https://www.logi-today.com/459483

10月13日から3日間の会期で開催されるINNOVATION EXPOでは、日替わりで参加企業によるセミナーやフォーラムが開かれ、出展ブースで紹介する先進的な取り組みの背景を深掘りしたり、新たな観点で解説したりと、登壇者が趣向を凝らしたテーマで持論を展開する。来場者にとっても、興味のある出典企業だけでなく、多様な領域の物流関連ビジネスの現場を学べる機会として、多くの来場者が足を運ぶ人気イベントだ。

ゼンリン「地図情報による配車計画システム」に高い関心

会期の1日目(10月13日)に予定されるセミナーとフォーラムのうち、事前の関心が高かったのが、ゼンリンの「地図情報を活用した『配車計画×ナビゲーション』」で、全体の22.0%を占めた。仏Exotec(エグゾテック)の「倉庫自動化ソリューションをより効率化、柔軟化するExotecシステム」(17.9%)、アイオイ・システムの「リフトアップAGVと最新ピッキングシステムがもたらす自動化と効率化」(15.2%)が続いた。

住宅地図メーカーで知られるゼンリンは、デジタルマップ開発技術を物流業務の効率化に応用してビジネスの新境地を開いている。経路探索の最適化を図るとともに、ナビゲーションシステムでドライバーの業務を支援する運送・配送業務向けソリューションを積極的に展開。主にラストワンマイルを意識した、配車・運行計画における技術や知識を平準化して効率的な配車計画を実現するシステムを独自に開発し、圧倒的な量と精度を誇る住宅地図データをベースに最適化したルートを提示する。ラストワンマイルを中心とした配送サポートツールとして、認知度も高まっている。

仏スタートアップ企業のExotecは、倉庫向け物流ロボット開発で存在感を高めている。同社が発明したSkypod(スカイポッド)は、小売やEC(電子商取引)事業者の倉庫作業で「生産性を4倍に引き上げ、高密度な在庫格納によって保管量を5倍に増やす」ことができる自動倉庫システムで、自律型ロボットは秒速4メートルで前後、左右、上下に3次元で移動できる。アイオイ・システムは、自律搬送(リフトアップ)AGVに着目してピッキングシステムを構築し話題を呼んでいる。

■1日目(10月13日)開催のセミナー・フォーラム関心度ランキング

WMSトップ企業としてシーネットへの期待大

第2日(10月14日)で関心が集まるセミナー・フォーラムは、シーネットの「クラウドWMSで始める、中小企業の業務改善と物流DX」(13.4%)とアッカ・インターナショナルの「ロボ活用で実現するBtoC物流のニューノーマル」(12.1%)、日立ソリューションズ東日本の「在庫管理もAI活用の時代!ディープラーニングによる在庫診断」(12.1%)、イー・ロジットの「非対研修で継続させる人材育成の在り方」(10.9%)が上位を占めた。この日は、物流DX(デジタルトランスフォーメーション)化にかかる取り組みを紹介する企業が目立つ。

WMSパッケージシェアでトップクラスのシーネットは、低価格での導入・運用だけでなく効率的なカスタマイズが強みだ。WMSとAI-OCR(手書きの書類や帳票をAIが読み取りデータ化するシステム)の連携システムがギオンに導入されるなど、他機能とタッグを組んだ事業展開を加速している。大和ハウス工業グループのアッカ・インターナショナルは、BtoC物流に焦点を当てた一気通貫の物流業務支援をはじめ、複数の販路チャンネルと連携した在庫管理一元化・倉庫管理システムが得意領域だ。日立ソリューションズは物流の入出荷の効率化、イー・ロジットは通信販売における物流システム開発で独自の事業領域を確立している。

■2日目(10月14日)開催のセミナー・フォーラム関心度ランキング

日本GLPの開発コンセプトは業界の関心の的に

第3日(最終日、10月15日)は、依然として物流DX化を意識したシステム開発企業が目立つなかで、日本GLPの「物流施設は、テナント同士がビジネスを高めあう『共創』の場」が19.8%で関心度のトップに躍り出た。次いで、日本気象協会の「気象災害からドライバーと荷物を守る!」(18.5%)と日立物流ソフトウェアの「デジタルロジスティクスソリューション」(16.6%)となった。

日本GLPと言えば、「GLP ALFALINK流山」(千葉県流山市)と「GLP ALFALINK相模原」(相模原市中央区)の両プロジェクトでことし9月に相次いで新棟を完成させ、大きな話題を集めた。物流機能や立地条件だけでなく、まちづくりの一翼を成す「オープンハブ」のコンセプトを意識した地域共生型の開発スタイルは、物流開発のこれまでの概念を覆す衝撃を業界にもたらしている。INNOVATION EXPOでは、入居テナントが生み出す相乗効果という切り口から、日本GLPの物流施設開発プロジェクトの視点を示す機会になりそうだ。

日本気象協会は、物流事業者向けのウェブサービスで主要道路の輸送影響リスクを提供する取り組みが話題を呼んでいる。ことし10月に提供を始まる新機能はこの先6日までの路線上の予測が可能。豪雪や大雨など、輸送に大きな影響を及ぼす道路状況予測の把握は、サプライチェーン確保の可否を左右する。BCP(事業継続計画)の観点からも、今後の技術開発にも注目が集まる。日立物流ソフトウェアは、「ONEsLOGI」(ワンズロジ)シリーズとしてワンストップで取りそろえた物流ソリューションを展開する。日立物流が抽出した物流課題も反映させながら、より現場に即した業務効率化システムを構築することで差別化を図る。

■3日目(10月15日)開催のセミナー・フォーラム関心度ランキング

INNOVATION EXPOをはじめとする物流関連の見本市では、近年の話題はもっぱら業務効率化のためのシステムやソリューションが中心で、業界の関心もその方向に傾斜しているのが実情だ。しかし、出展ブースの内容を詳しく調べてみると、以前の「部分最適」型システムから、一気通貫のソリューションとして「全体最適」型のパッケージシステムやプラットフォームを訴求するブース展開へとシフトする動きが目立ってきている。ことし6月の関西物流展に続き今回のINNOVATION EXPOは、こうした潮流に変わる「潮目」を実感する機会になりそうだ。

日本の物流は「もはや世界トップではない」

ここまで、INNOVATION EXPOにおける出展者やセミナー・フォーラムの関心度について分析してきた。続いて、国内の物流業界における「日本品質」の現在地について、読者の皆様に質問した回答を踏まえて、傾向を調べてみることとする。

■物流の「日本品質」は、世界でどういう位置にあるか

かつて、世界トップを称されるほどの高い信頼性を全世界に知らしめた、宅配をはじめとする各種物流サービスの「日本品質」。世界の業界でどういう位置にあるかについて聞いたところ、「高い水準を維持しているものの、海外勢が肩を並べようとしている」との回答が全体の44.1%を占め、過半数に迫った。さらに「海外勢に逆転を許している」が29.0%、「依然として世界トップレベルにある」は20.4%にとどまった。

回答の傾向を一言で表現すれば、「高い水準にあることは認めるが、もはや世界トップとは言い難い」ということだ。欧米におけるスタートアップの台頭、中国でのロボット開発の急速な発展など、もはや物流DX化の旗振り役は海外勢に委ねられてしまっている印象だ。相対的な地位の低下で影が薄くなっている国内企業は、積極的な海外企業との連携を模索するなどして、「世界標準」の獲得につなげてほしい。INNOVATION EXPOは、その機運を高めるひとつの契機になるだろう。

輸送品質はトップ水準だが技術は「後発」

物流業界において日本が世界に誇る強みについての設問では、69.9%が「定時性の高さ」を挙げた。「貨物破損の少なさ」(59.1%)、「配達員の応対力」(46.2%)、「誤配確率の低さ」(45.2%)、が続いた。いわゆる「輸送品質」の高さを指摘する声が高い一方で、「マテリアルハンドリング(マテハン)機器の性能と普及率」は6.5%、「倉庫内作業の自動化」は5.4%にとどまるなど、物流DX化にかかる技術力に強みを感じる回答率は極めて低かった。物流効率化への課題認識はあるものの、その解決策として国内では未だに技術力が途上にあるとの見方が強いようだ。

■日本が世界に誇る強みとして当てはまると思うもの

こうした認識を踏まえて、今後の物流をテーマとした展示会に期待することについて聞いたところ、「物流関連企業・団体の出展者の増加」(44.1%)と「セミナー・フォーラムなどの拡充」(40.9%)に回答が集まった。特筆すべきは、「海外の企業・団体の出店者数の増加」(25.8%)や「中小・零細企業の出展者数の増加」(23.7%)の回答が比較的多かったことだ。国内の物流関連技術における焦点が「日本品質」から「世界標準」へとシフトする動きが顕著ななかで、海外の先端ソリューションや中小・零細企業のきらりと光る技術力をもっと知りたいとの意向がくっきりと表れている。

■物流をテーマとした展示会に期待すること

新型コロナウイルス感染症の拡大は、物流業界の多くの課題を浮き彫りにした一方で、未曾有のビジネスチャンスをもたらしている。現場は空前の人手不足に悩み、その解決策として業種の枠を超えたイノベーションが生まれてきている。こうした混迷のなかで開幕するINNOVATION EXPOは、物流の将来にどんな光明を示すのだろうか。

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