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物流展10月13日開幕、注目ブースの見どころは

2021年9月29日 (水)

話題「国際物流総合展2021 第2回 INNOVATION EXPO」は、国内における物流業界の「現在地」と「未来予想図」を把握する絶好の機会となる。LOGISTICS TODAYは、今回の展示会開幕までにつかんでおきたいトレンドについて、3つのキーワードで解説。物流業界の現状を踏まえながら、独自の視点でまとめてみた。(編集部特別取材班)

キーワード1「テクノロジーの逆流」

先進的なテクノロジー、顧客志向のきめ細かなサービス、質の高い接客。日本。創意工夫を凝らした完成度の高さを強みとしてきた日本の産業界。物流の世界においても、それは決して例外ではない。

その代表例が宅配サービスだ。確実に配送先に指定された時間に届けるのはもちろん、荷物の丁寧な取り扱いや接客レベルの高さにいたるまで、現在も世界トップ水準なのは間違いない。ラストワンマイルは日本の物流サービスの品質を象徴する分野だ。

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物流拠点における入出荷や仕分けの現場でも、最先端のマテリアルハンドリング(マテハン)機器や定温装置などの設備面に加えて、荷札判読システムなどITツールの導入も進み、一定レベルの効率化はなされている。

国際物流の領域でも、日本のテクノロジーは高い存在感を示してきた。その象徴が、日本海事機関(IMO)に対する日本の積極的な対応だ。海上運航における安全性の確保や海運技術の向上、海洋汚染や諸国間の差別措置の防止を目的としたIMOの活動において、日本は効率的なタンカー運航や油濁防止などの技術導入などで主導的な役割を果たしてきた。2012年には、日本人で初めて運輸省(当時)出身の関水康司氏が事務局長に就任。海運大国としての役割を世界に示した。

しかし、近年の世界における物流関連技術のトレンドを見渡すと、必ずしも日本が優勢とは言い難い状況が生まれている。その象徴がロボットだろう。米国のスタートアップが物流業務の効率化を意識したロボット開発を推進。その流れは中国にも波及し、スピーディな開発で物流ロボット市場を席巻し始めている。今回の国際物流総合展 INNOVATION EXPOにも海外の企業が参加し独自技術のビジネス提供を目論む。

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背景にあるのは、物流関連ビジネスが世界でも成長産業の一角に数えられる実態だ。先進国から途上国への経済シフトにより、EC(電子商取引)ビジネスに代表される消費スタイルの多様化が全世界に広がってきた。さらに新型コロナウイルス感染拡大は、業界を支える物流現場におけるさらなる効率化の余地を浮き彫りにした。宅配ニーズの増大による現場のひっ迫と人手不足の顕著化は、それに対応するための技術革新の「主戦場」を提供した。そこに世界のハイテク技術が参入しようと躍起になっている。これが現在の物流関連テクノロジーをめぐる動向だ。

テクノロジーの「逆流」。こうした状況下で開催される国際物流総合展 INNOVATION EXPO。自社の強みを物流現場の効率化にどう反映させられるか。参加企業は虎視眈々と参入のチャンスを見据えている。

キーワード2「他業種からの物流参入」

今回の国際物流総合展 INNOVATION EXPOの出展予定企業を調べると、物流に縁がなかった名前も並んでいるのが分かる。「テクノロジーの逆流」は、物流業界が幅広い業種を呼び込む大きなうねりを生み出していることを浮き彫りにしている。

国内の物流業界が抱える最大の課題は、現場の業務効率化に向けた物流DX(デジタルトランスフォーメーション)化だ。消費スタイルの多様化やコロナ禍による宅配ニーズの高まりは、新たな物流需要を生み出すとともに、サプライチェーン全体のさらなる効率化を促す機運をもたらした。

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ここで注目すべきなのは、今回の効率化の「波」が、これまでの物流ビジネスの変化とは全く異質なものであるということだ。従来は、物流センターの増設やマテハン機器の改良版の導入など、既存の取り組みの延長線上でいかに付加価値を見出すかに力点を置いていた。しかし、物流のDX化は、もはやこうした概念をゼロベースで刷新してしまうパワーで、物流現場を変えようとしているのだ。

物流業界のこうしたパラダイムシフトは、自動車業界の例を見ても明らかだ。自動車の電動化は、既存の内燃機関からの脱却という機械的な変化だけでなく、IT業界を中心とする他業種の参入をもたらし、業界構造そのものを変革してしまった。物流業界でもこうした構造変化が現実になるだろう。国際物流総合展 INNOVATION EXPOでは、出展企業の業種に注目することで、近い将来の物流ビジネスの姿が見えてくるだろう。

キーワード3「2極分化」

こうして物流業界を構成するプレーヤーのパラダイムシフトが鮮明になると、企業は生き残りを図る戦略として、どちらかを選ぶことになる。自社の強みを業界標準とする「プラットフォーム」型と、得意領域に焦点を絞りそこでトップを目指す「専門」型だ。

日本の産業界は、これまで専門タイプを強みとしてきた。技術立国として世界に冠たるテクノロジーを開発し、その精度で勝負してきた。こうした戦略は、技術力の向上に貢献した一方で、「ガラパゴス化」という副産物をもたらし、世界標準から取り残されるリスクも味わうこととなった。

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物流業界が直面しようとしている地殻変動は、むしろプラットフォーム化が主流になりそうだ。物流効率化を進めるにあたって、「全体最適」を意識したシステム開発がにわかに加速しているのを実感するからだ。

こうした動きの背景には、機器とITシステムの特性の違いがあると言える。部分的な更新で全体の動きを改善するマテハンなどの機器システムに対し、ITシステムは全体の動きを集約して管理する能力に優れている。物流DXの進展は、まさにITシステムが主戦場となることを考えれば、当然の帰結だろう。

とはいえ、物流業界へのニーズの「幅」への対応は、専門タイプが依然として得意とする分野だ。例えば、巨大な構造体や極めて低温な環境を必要とする貨物の輸送だ。輸送品質の高さに定評のある日本の物流プレイヤーは、こうしたニッチトップ戦略に活路を見出すこともできるだろう。

出展ブースは、「一元管理」「全体最適」のキラーメッセージが花盛りになりそうな予感だ。そのなかで専門分野でトップを目指す企業が並ぶのも、見本市の醍醐味だ。プラットフォームが整備されても、実務部隊がなければ物流DXは機能しないはずだからだ。

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