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物流ソリューション開発を推進する秤メーカーの寺岡精工

「ハカル」技術を礎とした物流DX化を提案

2021年9月29日 (水)

話題コンベアの上を滑るように流れる荷物が黒いゲートを通過すると、ディスプレーに重さと寸法が表示される。まさに、物流DX(デジタルトランスフォーメーション)化の最先端を走る姿がそこにある。大手宅配や荷主、3PLなどの企業が相次いで導入しているこのシステム、実は意外なメーカーが開発した技術なのだ。(LOGISTICS TODAY編集部)

「秤」の開発技術を起点に多方面展開へ

「この技術は、当社が1934年の創業以来培ってきた『秤』(はかり)の開発がベースになっています」。こう話すのは、計量器メーカー・寺岡精工(東京都大田区)の水田和宏・ロジスティクスソリューション事業部長だ。寺岡精工のロジスティクスソリューション事業は、「計量」「計数」「採寸」の順番で進化してきた。そもそも、なぜ秤のメーカーが物流施設のDX化に着目したのか。

「モノを量ることができるならば、個数を計れるのではないか」。この発想が、寺岡精工がロジスティクス事業に踏み出す第一歩となったという。物語は、今から四半世紀前にさかのぼる。

▲デジタルカウンティングスケール。平均値追従システムでより正確な計量を追求する寺岡精工の技術の象徴だ

ここで算数の問題。「ボルトを5本秤の上におくと全体で50グラム。1本の重さは」。正解は10グラム。重さを本数で割った数、つまりボルト一本あたりの重さの平均値を割り出す。それならば、ボルトの本数を計測できるのではないか。「製品に必ず生じる『誤差』の影響を最小限にするため、同じ製品でも計測のたびに平均値を算出し直しています」(水田さん)。こうした平均値追従システムを活用して製品化したのが「デジタルカウンティングスケール」。物流現場でも在庫数量管理などの業務に貢献しており、まさに秤メーカーの面目躍如と言える。

「サイズ計測」という未知の領域への挑戦

こうした正確な個数計測技術は、物流業界でも話題を呼んだ。製品化から数年後、ある倉庫現場担当者から要望を受けた。「重さや個数だけでなく、サイズを測れる機器はないか」。商品のサイズがわからないと、物流現場で荷物を取り扱う際に困るというのだ。しかし、サイズ計測は寺岡精工にとっては未知の領域。そこで、まずは他社の寸法計測装置を導入する形で、ゲート通過時に重量とサイズを同時に計測できるシステムを開発したが、その機器は手動でゲートを動かす必要があり、商品自体の採寸計量には利点があるものの、大量の荷物を取り扱う出荷現場では「自動化」が課題となっていた。

開発陣が自社で自動計測装置の開発に汗を流していたころ、物流業界に劇的な変化が起きはじめていた。「宅配クライシスです。インターネット通信販売や『ふるさと納税』により、物流現場の取扱量が急増しました。ここで製品を出せば、一気に市場を獲得できると考えました」。水田さんのチームは、まさに物流の危機を救えるチャンスと捉え、従来機の自動採寸計量スケールを大幅にアップグレードした「SMART QBING」(スマートキュービング)の開発をスタート。2014年のことだった。

コンベア上の荷物がゲートを通過する際にバーコード判読と計量、サイズ計測を自動化し、データとして即時にフィードバックされる。人手不足に悩む宅配会社や物流会社からの問い合わせが相次ぐヒット商品となった。

多機能との連携を意識した「スマートキュービング」

▲スマートキュービングの開発秘話を紹介する水田さん

スマートキュービングの開発にあたり、特にこだわった点があった。スマートキュービングは、物流現場のコンベアに接続した導入を想定している。「それならば、自動仕分け機やラベルプリンター(自動ラベル貼り付け機)など、出荷に必要な機器と連携できる仕様とすることで、より現場の省力化に貢献できるのではないか」。クラウドを活用したデータ管理や寸法計測に必要なゲート左右の光軸設定を独自に開発しただけでなく、大型荷物に対応した重量計測を可能にするため幅の異なる秤を上下に重ねるなど、計量機メーカーならではのアイデアも盛り込んだスマートキュービングは、まさに寺岡精工のロジスティクスソリューション事業を代表する製品となった。

スマートキュービングは、時代に合わせてさらに進化を遂げている。新型コロナウイルス感染拡大などによる宅配ニーズの高まりで、EC(電子商取引)サイトで取引された荷物が急増している。特に、ポスト投函が可能な小型の荷物の増加が著しい。そこで登場させたのが、ゲートを小型化した「マイクロスマートキュービング」だ。小型荷物向けに開発した自動仕分け機などを組み込む。

「ハカル」から始まる物流改革を提案

▲EC対応を意識した8マルチピッキングカート

寺岡精工は、ロジスティクスソリューション領域を成長分野と位置づけ、スマートキュービング以外にも製品ラインアップを強化。「ピッキング・仕分け」領域では、最大8オーダーを同時にピッキングしながら検品できるカート「8マルチピッキングカート」を開発。カート内に秤を内蔵し、ピッキングと同時に数量検品が可能。ECを意識した少量多種類のピッキング効率化を狙う。ピッキングカートでは、自律走行タイプも開発している。

「ラベル印字」領域では、自動ラベル貼り付け機について、既に製品化されている上面貼り付け機に加えて、側面貼り付けタイプを今秋にも製品化する。さらに、「入荷」領域では、入荷時のバラ商品のサイズ測定に最適な採寸計量器を展開し、梱包サイズや棚保管、トラック積載の最適化に役立つ機器として注目を集める。他にも「入庫・出庫」領域のカウンティングスケール、「計量・配合」領域では原料の計量配合システムがあり、スマートキュービングの属する「出荷」領域を合わせた6領域で製品を展開している。

「寺岡精工のロジスティクスソリューションの製品群は、秤を祖業とする機器メーカーとしての強みが反映されています。『ハカルからはじまる物流改革』を提案していきます」(水田さん)。国際物流総合展では、マイクロスマートキュービングを中心に、秤メーカーのノウハウを結集した物流関連ソリューションを前面に出したブース展開を計画中。「ハカル」のプロフェッショナルならではのロジスティクス技術を体感できる機会になりそうだ。

寺岡精工ロジスティクスソリューションサイト
寺岡精工「国際物流総合展2021」出展案内
展示ブース:A-807
展示内容:秤メーカー独自の物流関連ソリューション

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