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京都府向日市で23年2月に完成する「Landport京都南」、立地条件に強み

国道171号線沿いに野村不動産が初の京都開発物件

2022年3月3日 (木)

話題京都市から大阪府北部を経由して神戸市に至る国道171号は、関西では「イナイチ」と呼ばれる幹線道路だ。大阪府北部のいわゆる「北摂」地域を横断する主要道路の沿線は、住宅街や商業施設に混じってメーカーの工場も進出するなど、関西でも有数の都市圏を構成している。

このイナイチに面した京都府向日市の商業施設跡地でことし1月、建築工事が始まった。2023年2月末には、3379.81坪(1万1172.95平方メートル)の敷地に地上4階建てのボックス型物流施設が完成する予定だ。

野村不動産(東京都新宿区)が手掛ける「Landport(ランドポート)京都南」。マルチテナント型物流施設は、京都府南部エリアのイナイチ沿線では非常に珍しいという。京都における主要道路の要衝に位置し、将来は新名神高速道路の全通でさらに広域アクセスの利便性が高まる「物流適地」における、野村不動産の戦略的プロジェクトの全容に迫る。

野村不動産が関西戦略の第2弾と位置付けた「京都府南部」

▲Landport京都南の外観イメージ

トラックや乗用車、バスなどが途絶えることなく走り抜ける。南北に走るイナイチの東側に面したほぼ真四角の土地に、Landport京都南は誕生する。名神高速道路と東海道新幹線に挟まれたこの場所に立つと、関西における交通の重要拠点であることを実感させられる。

▲関西戦略第1弾の「Landport高槻」

野村不動産が物流施設の開発地として着目した理由も、まさにそこにある。野村不動産は、関西圏における物流施設の開発戦略として「北摂」「京都府南部」における顧客ニーズの高まりに対応するため、開発に向けた取り組みに着手。その第1弾として、2017年6月に「Landport高槻」(大阪府高槻市)を稼働した。

Landport京都南の立地を決定づけた、全国でも高水準の「人口密度」

「向日市を選択した決め手、それは半径5キロ圏内の『労働人口』でした」。野村不動産西日本支社・都市開発事業部の野根雄介・課長代理は、向日市の開発候補地だったイナイチに面した商業施設跡地の半径5キロ圏内の労働人口が30万人に達するとの調査結果が、Landport京都南プロジェクト実現の原動力になったと指摘する。久御山町や京都市伏見区など、検討していた他の候補地に関する半径5キロ圏内の労働人口は20万人未満にとどまっていた。

▲半径5キロ圏内に潤沢な労働者人口が存在し、幅広い世代の労働人口を確保できる

全国でも有数の高密度の人口を擁する向日市は、高度経済成長期以降に宅地開発が急速に進んだ。阪急電鉄京都線とJR東海道線(京都線)を最寄りとする住宅街を形成。現在も幅広い世代の労働人口を確保できるエリアとして、メーカーの生産拠点も進出している。野村不動産が期待を寄せるのも、こうした従業員確保の優位性だ。

「近年、周辺労働人口はテナント誘致で最も気にしている項目の一つです。イナイチ沿線、かつ従業員の通勤利便性を確保できる立地条件は、荷主様への最大の訴求ポイントになります」。野根氏は力を込める。

▲「立地の優位性は最大の訴求ポイント」と話す、野村不動産西日本支社・都市開発事業部の野根雄介・課長代理

イナイチ沿線の強みを機能面にも生かす

Landport京都南の建物配置計画は、トラックのスムーズな出入りを実現するため、出・入口を分けるとともに、建物周りを周回できる導線を確保。1階プランも両面バースを採用し、28台の同時接車を実現。京都南部同規模物件の中では、比較的、敷地内へのトラック吸収力がある。これはイナイチ沿線を意識した配置と言えそうだ。

プランは、全棟もしくは2分割を想定している。2分割で提供する場合、各区画は約3400坪となり、事務所や休憩などのスペースを各フロアの東西に配置しているほか、1階のトラックバースから上階に荷物をスムーズに運べるように各テナントごとに垂直搬送機2機と荷物用エレベーターを1基ずつ配置する。ブレースを極力削減したり、人感照明を採用し、上層階のオペレーションも意識したりしている。

▲イナイチ(手前、国道171号線)沿線に立地され、直接の搬出入が可能

先行して稼働しているLandport高槻も高槻市内を東西に走るイナイチ至近に位置している。Landport高槻は、EC(電子商取引)や食品をはじめとする幅広い業種の企業に訴求する一方で、Landport京都南では京都や滋賀に多く立地する各種メーカーの倉庫としての活用も想定する。

「ダブルランプウェイで各階に接車スペースを確保した大型施設であるLandport高槻と異なり、コンパクトなLandport京都南だからこそ得られるニーズにも対応しながら、立地面と合わせて強みを前面に出していく」(野根氏)。あくまでイナイチ沿線の立地を最大限に生かした施設プランを推進する野村不動産。差別化ポイントを明確化する戦略は、早くも荷主企業の関心を集めているという。

「京都南」の存在価値をさらに高める新名神

他の有力候補地との相互検討の末に、向日市でのLandport京都南の開発を決めた野村不動産。イナイチをはじめ名神高速道路「大山崎」「京都南」の両インターチェンジ(IC)を利用できる利点は、物流事業者や荷主企業としては輸配送業務における非常に大きな利点となる。そこに新たな強みが加わる。新名神高速道路だ。

四日市ジャンクション(JCT、三重県四日市市)と神戸JCT(神戸市北区)を結ぶ新名神高速道路は、滋賀県と京都府、大阪府の一部区間を除いて開業している。未開業区間も順次通行できるようになる予定だが、管轄の西日本高速道路(大阪市北区)は、全通時期について「2027年度」としている。大阪府内におけるトンネル用地の取得の遅れなどが影響しているという。

とはいえ、新名神高速道路が全通すれば、新東名高速道路・伊勢湾岸自動車道を含めて関東と関西を直結する高規格の高速道路が誕生することになる。「東名高速道路・名神高速道路」とともに東西の道路ネットワークが複線化されることで、物流ネットワークのさらなる強靭化が実現。災害時における物流網の確保につながると期待されている。

野村不動産は、当然ながら新名神高速道路を意識していないわけがない。Landport京都南の立地面での優位性が、この新名神高速道路の全通でさらに強固なものになると期待している。新名神高速道路は名神高速道路と高槻JCTで、第二京阪道路と八幡京田辺JCTでそれぞれ接続する。「イナイチと名神高速道路を経由することで、新名神高速道路による広域アクセスの利便性を高めることができます。立地条件で強みを持つLandport京都南の優位性をさらに高めることができると考えています」(野根氏)

「イナイチ沿線」で試される野村不動産の総合力

物流不動産の実態調査によると、関西圏における物流倉庫の空室率の低さが顕著になっている。物流不動産の開発事業者は、北摂や京都府南部における物流施設の開発を加速。新型コロナウイルス感染拡大に伴う消費スタイルの多様化は、関西圏でも物流ニーズの変革をもたらしている。野村不動産もこうした動きに着実に対応しながら、荷主企業に差別化のポイントを明確に示す戦略を推進している。その成果がLandport高槻であり、23年2月末に完成するLandport京都南にも大きな期待をかけている。

「京都府南部では、用途地域の関係もあって開発用地が限られるのが実情です。Landport京都南が持つ『イナイチ沿いの物流施設』としての魅力的な立地と機能性を、訴えていきたいと考えています」(野根氏)

地域特性の十分な理解と、それに応じた物流サービスの提供力。野村不動産の総合力を結集したLandport京都南の成果が明らかになるのは、もう1年後だ。

Landport京都南の周辺図。縦断する国道171号沿線であることが大きな強みだ。

問い合わせ
野村不動産 都市創造事業本部物流事業部
Tel:03-3348-8154
Mail:landport@nomura-re.co.jp

■物流施設特集 ‐関西編‐