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「次世代基幹物流拠点」を京都府城陽市に計画

三菱地所のIC直結施設、見据えるは「自動運転」対応

2022年2月14日 (月)

話題高速道路のインターチェンジ(IC)に直結した国内初の物流施設が、2026年にも誕生する。三菱地所が京都府城陽市で開発を計画する、新しい物流システムに対応した「次世代基幹物流施設」だ。将来の完全自動運転トラックや後続車無人隊列走行など次世代のモビリティ(移動・交通手段)に対応した物流施設開発のあり方とは。三菱地所が描く三大都市圏の物流自動化ネットワークの未来像について、物流施設事業部の宝田裕介主事に聞いた。(編集部・清水直樹)

▲三菱地所物流施設事業部の宝田裕介主事

「近接」ではなく「直結」だからできる輸送効率化を追求

三菱地所が計画する次世代基幹物流施設は、2024年度予定の新名神高速道路の大津ジャンクション(JCT)・城陽JCT/IC間の開業に合わせて設置される「宇治田原IC」に直結。ICと物流施設をつなぐ専用ランプウェイを整備し、一般道路を経由せずに構内に乗り入れることができる。

三菱地所が考える、高速道路ICと物流施設の「近接」ではなく「直結」しているからこそ実現できるメリットとは何か。そこには、次世代モビリティの実用化を見据えた最適な導線を追求するとともに、安全な街の確保という視点があった。

――今回の高速道路IC直結の物流施設計画を策定した狙いは。

今回の計画は、あくまでも次世代モビリティの受け入れを前提とした物流施設開発だ。次世代モビリティの実用化を想定した場合、できる限りスムーズなルートで物流トラックを高速道路から物流施設まで誘導する必要がある。そのためには、高速道路のICから極力近い場所に専用の誘導路を設けて物流施設の荷下ろし場と直接結ばなくてはならない。

――物流トラックの円滑な誘導であれば、ICに近接した施設を開発すればよいのでは。

(イメージ)

それは違う。あくまでICと直結することに意義があると考えている。トラックの自動運転や隊列走行のシステムは、高速道路のような信号機や歩行者の横断がない道路を走行するには好都合だ。しかし、高速道路ICを抜ければ、そこは信号機のある交差点やさまざまな交通が交錯する一般道路だ。法規制の観点からも、こうした道路を次世代モビリティ仕様の車両が走行するのは、高いハードルがある。歩行者など住民の安全を守る観点からも、高速道路に直結するのが最適と判断している。

――物流サービスの最適化もIC直結に貢献すると考えているか。

その通りだ。高速道路から信号機などで停止することなく物流施設の構内にエントリーできることで、輸送スケジュールや輸送品質の確保を実現できる。ドライバーが乗務する場合は、より快適でストレスのない就労環境の実現にもつながるだろう。次世代モビリティの目的は三大都市圏を中心とする物流ネットワークの自動化と省人化だ。その実現には、高速道路から物流施設までの結節部分をいかにスムーズで無駄なく車両を走行させることができるかにかかっている。今回の計画の狙いはそこにある。

計画地に京都府城陽市を選んだ「3つの要素」

▲高速道路IC直結型次世代基幹物流施設の完成イメージ(出所:三菱地所)

次世代モビリティの実現に不可欠な要素として三菱地所が策定した、次世代基幹物流施設計画。その開発地として、京都府城陽市を選んだのはなぜか。それは、国内における次世代モビリティによる物流ネットワーク自動化の実現に向けた3つの条件を満たしていたからにほかならない。

――京都府城陽市を次世代基幹物流施設の開発拠点に選定した理由は。

3つある。まずは、新名神高速道路の開通予定地であることだ。新名神高速道路の未開通区間である大津JCT・城陽JCT/IC間が開業すれば、いわゆる高規格高速道路である新東名高速道路と伊勢湾岸自動車道、新名神高速道路がつながり、東名阪の三大都市圏を結ぶ道路網がほぼ完成する。そうすれば、関西圏における物流施設が必要になることから、開発適地として決定した。

――地元自治体も宇治田原IC周辺を産業立地として整備している。

それが二つ目の要因だ。三菱地所の今回の開発地は、「京都府城陽市東部丘陵地青谷先行整備地区(A街区)」に属する。計画は三菱地所が施行予定者となり、土地区画整理事業を実施した上で物流施設を建築するスキームになる。京都府などには、こうした次世代モビリティに対応したIC直結型物流施設の開発計画を説明している。

――三菱地所は新名神高速道路の新規開業区間の沿線で、アウトレットの計画も手がけている。

三菱地所などが手がける「プレミアム・アウトレット計画だ。こちらも京都府城陽市東部丘陵地の先行整備地区における開発案件であり、今回の次世代基幹物流施設の開発地とも近い。物流施設とアウトレットで連携し相乗効果を出せる取り組みもありうる。

首都圏と中京圏にも次世代基幹物流施設を整備

次世代モビリティは、いわゆる高規格高速道路を舞台に三大都市圏の物流ネットワークの自動化を推進することになりそうだ。三菱地所は、京都府城陽市に計画する物流施設を関西圏の「拠点駅」と位置付ける。それならば、首都圏と中京圏における拠点駅はどこになるのか。

――同様の次世代基幹物流施設を、首都圏と中京圏にも整備する計画か。

整備計画を策定中だ。そもそも、物流施設は単独で存在しても機能を発揮できない。複数の拠点を整備することで、その間にネットワークが生まれて物流サービスを提供できる体制が整うからだ。

――基幹拠点の開設における条件は何か。

(イメージ)

まずは、次世代モビリティの大動脈である高規格高速道路を活用しやすい地点であることだ。さらに、都市部に近い場所であること。今回の京都府城陽市も、京都市や大阪市といった関西の都市部にアクセスしやすく距離も離れていない点を評価した。マルチテナント型の物流拠点として成立する場所として、首都圏や中京圏でも同様の判断基準となるだろう。

――首都圏と中京圏における施設の整備スケジュールは。

京都府城陽市とどほぼ同じタイミングを予定している。三大都市圏の輸送網の最適化を目的にしている以上は、完成時期の足並みをある程度そろえる必要があるためだ。

――施設の機能面も、3拠点で同様の仕様とする考えか。

機能面の具体的なイメージ構成はこれからだが、施設の屋上にダブルトラックの連結・解除スペースを設けることを想定している。次世代モビリティとして、ダブルトラックは輸送効率の確保の観点からも重要な取り組みだ。次世代の基幹物流施設は、増加する輸送需要やドライバー不足をはじめとするさまざまな物流課題に対応した機能を先進的に備える必要がある。三菱地所の今回の計画は、こうした取り組みを実現するための「駅」と「ネットワーク」を作るものだ。

三菱地所、新名神IC直結の自動運転対応拠点に着手

■物流施設特集 ‐関西編‐