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開幕直前インタビュー/展示会運営事務局の岩本匡史・営業企画部長

コロナ禍が再定義した「関西物流展」の役割とは

2022年6月2日 (木)

話題大阪市住之江区のインテックス大阪で6月22日から3日間の日程で開催される「第3回関西物流展」。初めての試みとして、「第1回マテハン・物流機器開発展」を同時に開催するなど、多様化する物流ビジネスニーズに対応した取り組みにも挑戦。新型コロナウイルス感染拡大に伴う行動制限などで商談機会の縮小を余儀なくされた物流関連企業の期待は、もはや最高潮に達していると言えるだろう。

こうした状況を背景に関西物流展を取り巻く環境は大きく変わり、新たな潮流も生まれているという。展示会事務局の岩本匡史・営業企画部長に、参加各社・団体のブース展開における傾向や特徴、それを踏まえた見どころについて聞いた。(編集部・清水直樹)

▲第3回関西物流展事務局の岩本匡史・営業企画部長

サプライヤー特化型の展示会を共同開催、「相乗効果」を期待

開催物流展は3回目の開催を機に、新機軸を打ち出す。マテリアルハンドリング(マテハン)や各種物流機器の設計や製造にかかる部品や機械、サービスを紹介する「マテハン・物流機器開発展」をスタート。マテハンや物流機器のメーカーとサプライヤーによる研究・開発面での提携やライセンス契約などを促す。部品メーカーが多い関西圏の見本市ならではの趣向でもある。

――両方の展示会のすみ分けは。

岩本 関西物流展は、先進機器やサービスの商談の場として開催してきた。しかし、出展ブースで繰り広げられるテーマは、必ずしも商談だけではないことがわかってきた。機器と部品のメーカー同士でのシステム開発に向けた提携やライセンス契約の締結など、技術面で連携する機会にもなっている。それならば、こうしたマテハンや機器の設計・製造にかかる部品やサービスに特化した展示会を独立して開催することで、出展者と来場者の双方が対話の目的を明確化できると考えた。

――関西物流展の一部機能を分離するイメージか。

岩本 枠組みとしてはそうなる。ただし、完全に分離した展示会とするのではなく、関西物流展の会場の一区画がマテハン・物流機器開発展となるイメージだ。仕切りを設けるなどの仕掛けはしない。むしろ、方向性の異なる両方の展示会が相乗効果を生み出すことで、新たな展示会の価値を創出する試みと言える。物流課題の解決という広いテーマのなかで、商談だけでない新しい切り口を提示することで、出展者と来場者が連携をさらに深めるとともに、相互の課題認識の共有や問題意識の発掘による新たな価値創造につなげてもらう仕掛けだ。

――2023年には「第4回関西物流展」と「第2回物流機器開発展」を同時に開催することが決まっている。

岩本 物流機器の部品などサプライヤーを対象とした展示会であることをより明確にするため、「マテハン」を抜いた名称に改めた。今回の出展内容やブース運営状況、出展者や来場者の声を分析しながら、第2回からのさらなる規模拡大につなげていきたい。

コロナ禍で再定義される「関西物流展」の役割

19年にスタートした関西物流展は、コロナ禍に翻弄され続けた。第2回の会期は20年10月から21年6月に延期。第3回についても当初計画のことし4月から6月に変更を余儀なくされた。とはいえ、コロナ禍がもたらした経済活動の変化は、関西における物流関連の見本市が果たすべき役割を再定義する契機となった。

――コロナ禍が収束しない状況下での開催となった。

岩本 出展者や来場者をはじめ各方面から寄せられた開催を求める声が、第3回の実施にこぎ着けることができた要因だ。一方で、コロナ禍による商談機会や手法の変化は、関西物流展の意義に変革をもたらしたと考えている。

――どう変わったのか。

岩本 東京と大阪の物流展示会で、出展者の顔ぶれに差がなくなってきたと感じている。コロナ禍以前は、東京での展示会には全国から出展者も来場者も集まる一方で、大阪をはじめとする地方開催の場合は、地元の関係者が中心のイベントとなる傾向があった。それを根底から変えたのがコロナ禍だ。出張機会が大幅に減少したことで、東京の展示会でも全国各地から集客することができなくなった。その結果、出展者が関西圏さらには西日本での営業の機会を新たに模索する動きを見せ始めた。その絶好の舞台となったのが、関西物流展だった。


▲2021年6月に開催した第2回関西物流展の様子

――関西物流展の出展者ラインアップにも変化が生まれているか。

岩本 「初出展」「関西で初公開」をアピールする出展ブースが目立っている。第2回までと比べて明らかに異なる傾向だ。コロナ禍が広がって以降に関西での商談が停滞していた実態を反映していると考えられる。関西物流展の開催希望の高まりは、こうして逸失した営業機会を挽回する思惑も強いのだろう。事務局は第3回の来場者数を計2万人と想定しているが、現時点での来場事前登録者数は前回の同じ時期の2倍になっており、第1回の2万1000人を超える可能性もあるとみている。

出展各社の訴求ポイントを象徴する「4つのキーワード」

関西物流展の開幕まであと3週間を切った。3回目となる今回の出展各社の訴求ポイントは、4つのキーワードで集約できるという。見本市を訪ねれば、その業界における課題や目指す方向性をつかむことができる。ましてや初参加の企業や初公開の機器・サービスがそろう今回は、さらに訪問の機運が高まりそうだ。

――4つのキーワードとは。

岩本 「物流コスト削減」「物流DX」「SDGs」「労働環境改善」だ。いずれも物流業界が抱える、解決すべき課題として挙げられるテーマだが、特に出展社がブースでの訴求を強めているのが、コストだ。会場では、資材から配送ルート、人材、積載率など、様々な角度でコスト削減に向けた先進的な施策を来場者に提案する動きが広がりそうだ。

――コロナ禍の“余波”とも言える盛況も見込めそうな今回の関西物流展。出展者や来場者に何を期待するか。

岩本 コロナ禍は商談機会の減少だけでなく受注までの時間が延びるなど、様々なマイナス影響をもたらしたと指摘されている。今回の関西物流展は、こうしたダメージから脱却しビジネス機会を獲得できる好機になる。感染症対策を徹底するのはもちろんだが、コロナ禍を契機とした新たな営業スタイルを模索する意味でも、ぜひ会場に足を運んで最新の物流業界の動きを肌で感じてほしい。出展ブースでの商談や提携の「種」を探すのはもちろん、意外なビジネス誕生のきっかけをつかめる可能性もあるからだ。