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関西物流展特別セミナー登壇レポート/第1回

2022年6月29日 (水)

▲特別セミナーの様子

話題大阪市住之江区のインテックス大阪を会場に6月22日から3日間の会期で開催された「第3回関西物流展」「第1回マテハン・物流機器開発展」の特別セミナーに、LOGISTICS TODAY(東京都新宿区)の赤澤裕介編集長と永田利紀・企画編集委員が登壇。「物流ロボット導入事例、隠された『その後』を徹底追跡〜忖度なし。使えたのか、使えなかったのか〜」のテーマで、物流ロボットの導入における考え方や求める機能、全体最適を見据えた活用方法のあり方について持論を展開しました。会場には150人を超える来場者がつめかけ、熱心にメモを取る姿も見られるなど、関心の高さがうかがえました。ここでは、特別セミナーでの2人のやりとりを6回に分けてレポートします。


<赤澤>
LOGISTICS TODAYの赤澤と申します。こちらがLOGISTICS TODAY企画編集委員の永田利紀です。

<永田>
よろしくお願いいたします。

<赤澤>
本日はこの2人で物流のロボットについて、特に失敗事例をお話ししていきたいと思います。成功事例は我々もニュースとしてたくさんの事例を掲載させていただいておりますけれども、失敗側から見た導入を成功に導くためのヒントを探っていきたいなと思っております。まず議論の出発点といたしまして、LOGISTICS TODAYが事前に、「物流ロボットの導入ニーズ」について読者の皆さんを対象に調査した結果があります。これをまとめてありますので、こちらを紹介しながら話を進めていきたいなと思います。

失敗例から学ぶ「物流ロボット導入を成功に導くヒント」

<赤澤>
物流ロボットはいろんなタイプがあるんですけれども、まずは、一番絶対数が多いと思われるAGV(無人搬送車)について。どんな感じなのかと言いますと「既に導入していらっしゃって、なかなか良かったので追加導入を検討しています」という方が多いですね。他のロボットもこの後見ていきますけれども、結構多いです。「未導入だが導入を検討する」という方、この調査は分母が2000人ぐらいの回答なんですけれども、そのうちの800弱ぐらいが導入を検討しています。かなり物流企業、あるいは荷主企業の中で導入意向が強まってきたということですね。

実は今日一緒に話している企画編集委員の永田はですね、物流のコンサルティング経験も結構ありまして、いろんな企業に入ってロボット導入サポートもやっています。永田さん、これどうですか。これを見たらAGVの導入意向はめちゃくちゃ強いような感じもするんですよ。

<永田>
私の関与している現場に関して申し上げると、まずわかっていらっしゃらないことが実態としてあると思います。読んだ本であるとかウェブの情報の部分だけは把握されているんですけれども、自社の現場とのマッチングであるとか、整合とか不整合について今ひとつ理解できていない会社が多いと私の中では感じています。

<赤澤>
なるほど。でも導入を検討している、ニーズ自体は結構感じられるわけですか。

<永田氏>
とても多いと思います。

<赤澤>
他も見てみましょうか。AMR(自律走行搬送ロボット)とAGVのグラフを見比べると、グラフの変化がわかります。やはりまだ導入されているところは少ないですね。だけれども導入意向については、AGVよりもAMRの方が若干上回ってきています。なので、企業のロボット導入意向についても、AGVからAMRに用途が広がってくる気配が感じられると思っているところでございます。

次にGTP(棚搬送型ロボット)です。「Goods to Person」という意味で、モノを人のところに持ってくるロボットですね。ここにきますと途端に導入の割合は下がります。さらに「これから導入を検討する」との数もぐっと減りまして「導入していないし、検討もしていない」企業が多いというところです。このあたりはロボットメーカーもこれからセールスポイントを明確にしていかなければならないのだろうな、と感じております。

一方、ASRS、つまり自動倉庫ですね。例えば今日出展されているオートストア様がこれにあたるんですけれども、実は導入企業あるいは今後導入を検討する企業がかなり増えてきます。やはり自動倉庫の方が導入を検討しやすいのでしょうか。

<永田>
はい。なんとなくですけど、一番宣伝力が高いと申しますか、映像を目にする機会が多いですね。

<赤澤>
AGV導入の動きが活発化する2年前か3年前に、自動倉庫の認知が広がった印象があるんですよね。その中で失敗事例もここにある気がしております。これはまた後ほどお話しします。導入している、もしくは導入を検討している方に対して「導入したい最短時期はいつごろですか」と聞いてみました。これが結構皆さん具体的で。「3年以内」の回答が半分。6割強が「5年以内に導入を検討する」とのことで、かなり具体的になってきている印象です。

物流ロボットを導入できる「現場」として整備できているか

<赤澤>
次に「何で導入しようと考えているんですか」と導入理由について聞いてみました。すると、一番多いのは「人手不足を補いたい」それから「人的コストを引き下げたい」との回答が一番多くて、「誤ピック・誤出荷率を引き下げたい」あるいは「ロボットが本格普及する未来に対する備えとして導入したい」という理由で検討する方が次に多いですね。

これに対して今度は「ロボットを導入しない理由について、なんで導入をしたくないのか」を聞いてみました。ここでも圧倒的に理由として挙げられたのが「導入コストが高い」。それから「ランニングコストが高い」。この2つがですね、非常に際立ちました。もう一つ私が気になったのは、そもそも「ロボットの導入を検討したいんだけれども、どんな選択肢があるか、情報収集の難易度が高い」と回答されている方も少なくない、と。あとこれも多かったですね。「現時点のロボットの性能について、今焦って導入してしまうと、すぐに陳腐化してしまうのではないか」。こういう意見も結構ありました。この4つの意見が、導入しない代表的な理由かなと思いました。永田さん何かご意見ありますか。

<永田>
そうですね。ぜひご来場の皆様に立場ごとにお考えいただきたいと思うのは、まず自分のところが自動化に耐えうる現場になっているかいうことです。例えば、商品マスターひとつ取りましても、営業が使う商品マスター、購買が使う商品マスター、開発で使う商品マスター。客先によってはお客様のJANコード(世界共通の商品識別コード)を会社の中でデータとして保存していると。そういう場合自動化以前に、移行できない。

現場の整備ができていないと、自動化すら選択肢に持てないんだということは、企画として進める中で、まず最初に突き当たる壁になるとご理解いただきたいです。今現場の整備ができてない企業は自動化にいく以前のところで足踏みしなければならないんだと、今一度ご確認いただきたいと思います。今日お戻りになった後にでも、会社の中でもう一度整備していただきたいなと思います。


第2回は、ロボット導入における「目的」と「手段」の明確化について考えます。

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