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高速・高精度の画像認識で庫内作業は「新時代」に

2022年6月28日 (火)

話題LOGISTICS TODAY(東京都新宿区)主催のオンラインセミナー「物流最新テクノロジー事例フォーラム/物流センター編」が28日開催され、近年、物流センターなどで利用が広がっている高速・高精細の画像読み取り技術の導入効果や将来展望について、現場をよく知る3人が本誌の赤澤裕介編集長と語り合った。一時代を築いたレーザー式から画像処理へと、技術の大転換点が到来しているとの認識で一致した。

▲(左から)プラスオートメーションCMO・大西弘基氏、ダイワハイテックス執行役員・大久保憲氏、COGNEX物流事業部統括部長・武田智彦氏、LOGISTICS TODAY編集長・赤澤裕介氏

このフォーラムは「物流効率を飛躍的に引き上げる高速・高精細認識技術」「物流革新本格化、センター業務が歴史的転換期に」がテーマ。当初想定を大きく上回る200人近くが視聴した。

現在、多くの物流センターや倉庫では、作業員が商品の仕分けやピッキングをする際、手持ちのハンディーターミナルで商品についたラベルの情報を読み取り、データをホストコンピューターなどに送信している。バーコードにハンディーのレーザー光線を当てて反射を読み取るのが、これまでの主流だった。これに対し、近年導入が進んできているのが、バーコードまたは商品丸ごとを画像としてデジタルカメラで認識する装置だ。

AI(人工知能)のアルゴリズムによる解析で、様々な情報をデータ処理でき、しかも高速で誤認ミスが少ない。アパレル商品の袋に貼り付けられたバーコードが湾曲していても読み取れる。ロボットと並び、倉庫内での物流DX(デジタルトランスフォーメーション)を代表する先端技術だ。

COGNEX武田氏「EC急増、人手不足の克服に」

登壇者の一人、武田智彦氏が物流事業部統括部長を務めるのが、この技術で先頭を走る工業用画像処理機メーカー、COGNEX(コグネックス、東京都文京区)。40年以上にわたって世界2万5000社以上に300万台以上の機器・システムを提供してきた。

武田氏は英語で「マシンビジョン」と呼ぶ画像読み取りの仕組みを倉庫現場に沿って説明した上で、「少し前まではハイエンド(高級品)産業に使われる装置だったが、徐々に物流現場に入ってきている。なるべく機器にコストをかけたくないはずの物流企業だが、最近は庫内作業を高精度・高速化したいニーズが高まっている」とユーザーのトレンドの変化を語った。

小型カメラをラインの上や横に設置して使うタイプが同社製品の中心。新型コロナウイルス禍で本格化したEC(電子商取引)荷物の急増と、労働力人口の減少による人手不足・高齢化。それらに苦しむ倉庫や物流センターの経営者が、先端テクノロジーで克服しようと画像認識に注目しているのだという。

このことは、LOGISTICS TODAYが独自に行った物流事業者へのアンケート調査で、読み取り機を選ぶ際に最も重視する要素で「導入コスト」より「読取り精度」をあげた回答者が最も多かったこととも符合する。

2人目の登壇者、大久保憲氏が執行役員を務めるダイワハイテックス(同板橋区)はコグネックスの画像認識装置を活用した包装機をEC事業者などに納めている。「大量の商品を短時間でさばかねばならないEC通販の倉庫では、自動梱包装置はバーコードの安定的な読み取りが一番キーな部分だが、レーザー式では機能的に限界がある。画像処理の方が向いている」と画像認識技術の優位性を語った。レーザー式はバーコードを読み取る際の光線の当て方が限定され、縦・横・斜めにずれると作業性が悪くなるが、画像認識はその点で優れているという。

圧倒的なスピード、高い汎用性

3人目のプラスオートメーション(+A、同港区)CMO、大西弘基氏は、ソリューションプロバイダーとして世界中の物流ロボットを顧客企業に紹介するなど、導入の橋渡しを担っている。メーカーとは違ったユーザー側の目線で技術や製品を吟味する立場だ。その同社も、コグネックスの技術を活用して顧客に機器・システムを提供している。

大西氏は「翌日配送が当たり前になっている。商品がピース単位で扱われるECの場合、読み取りの精度と速度が倉庫の生産性にダイレクトに影響する」と指摘。例えば1個の商品の仕分けに1秒余計にかかると3000ピースで約1時間遅れることになると解説した。

フォーラムでは、コグネックスの機器を導入した国内外の物流現場の様子が複数の動画で紹介され、作業者が大量の商品を圧倒的なスピードで仕分けする光景に、赤澤編集長らも驚いた様子だった。騒音のある庫内で装置がバーコードの画像認識が済んだことを音ではなく光の色で作業員に伝え、聞き取りミスを防ぐ工夫が評価され、導入に至ったケースもあったという。ロボットなど他社の先端技術を組み合わせた導入事例も多く、コグネックス製品の汎用性の高さをうかがわせた。

画像認識装置の価格はレーザー式の10倍以上だが、武田氏は「人手不足に直面している今、値段よりも精度と速度が採用の決め手になっている」と、物流DX時代の本格的な到来を強調した。

■物流ロボット特集