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ロジザード×LOGISTICS TODAY「物流ロボットセミナー」、ギークプラスと三菱倉庫が登壇

課題を解決する「ロボットと人間のハイブリッド」

2022年5月24日 (火)

話題ロジザードは24日、「ロジザード物流ロボットセミナー2022」をオンラインで開催した。21年6月に続いてLOGISTICS TODAY(東京都新宿区)と共同で開催した今回のテーマは、「物流ロボットの導入本格化、『忖度なし』の徹底分析!」。物流ロボットの導入のカギや今後の普及に向けた課題、最新の各種施策について考える機会となった。当初想定を大幅に上回る500人超が視聴した。

新型コロナウイルス感染拡大などを背景とした消費スタイルの多様化が加速し、物流現場では取り扱う荷物の増や種類が急増。人手不足や長時間労働、デジタル化の遅れなど構造的な課題が顕在化するなかで、その解決策として物流DX(デジタルトランスフォーメーション)化が注目されている。その主役がいわゆる「物流ロボット」だ。

ロジザードは今回のセミナーを、この物流ロボットが物流現場にもたらす様々な可能性について検証する機会と位置づけるとともに、今後の方向性について意見を交わす場とする。ロジザードの金澤茂則社長と三菱倉庫の加藤栄一・倉庫事業部長、ギークプラス(東京都渋谷区)の加藤大和社長が登壇し、物流ロボットをめぐる活発で多角的な議論を深めた。LOGISTICS TODAYの赤澤裕介編集長がモデレーラーを務めた。

三菱倉庫が掲げる物流ロボットの導入事例、ポイントは「ロボとWMSの連携」

近年、物流現場では物流ロボットをはじめとする先進機器・システムの導入が進む一方で、ロボットの導入に踏み出せないでいる企業も決して少なくないのが実情だ。今回のセミナーでは、最初の企画として、EC(電子商取引)特化型の戦略的な物流倉庫への物流ロボット導入に踏み切った三菱倉庫の事例を中心に、物流企業の取り組み事例を紹介した。

三菱倉庫は、昨今のEC市場の拡大に伴う物流需要の高まりに対応するため、ECに特化した物流センターとして「SharE Center misato」(シェアセンター三郷、埼玉県三郷市)を21年7月に稼働。EC事業者の抱える多様な物流ニーズへの対応とともに生産性の向上や省人化を目的として、ギークプラスのAMR「EVE P500R」50台を導入した。

EVE P500Rは、仕分け作業を行うピッキングエリアでAI(人工知能)ロボットが棚を運ぶなど、作業員に代わって商品を探し運搬することで商品のピッキング作業に要する時間を大幅に削減できるのが特徴だ。ロジザードの提供するクラウド型WMS(倉庫管理システム)「ロジザードZERO」と標準連携して様々な物流ニーズへの対応が可能なのも、三菱倉庫が採用を決めた理由の一つだ。

現在、SharE Center misatoにはスポーツサイクル専門店「ワイズロード」を全国に33店舗展開するワイ・インターナショナル(東京都豊島区)がEC専用物流拠点として活用。三菱倉庫の加藤氏は「『オペレーション業務を全て任せることができる』点で、ビジネス拡大に不可欠な信頼できるパートナーとして三菱倉庫のSharE Center misatoを選んでいただいた。今後も継続してビジネス展開を支援していきたい」と意義を語った。

▲三菱倉庫・加藤栄一倉庫事業部長

ロボットを使って「人間だけではやりきれない仕事をやろう」という発想

続いて、3人の登壇者によるパネルディスカッションを実施。視聴者の質問も踏まえながら様々なテーマで持論を展開した。

物流ロボットを取り巻く動向について、ギークプラスの加藤氏が「新製品や新機能が続々と提供されている。もはや『何でもできる』から『この機能が強い』機能のロボットで存在感が高まる傾向が強まってきている」と指摘。金澤氏は「ロボットと人間とが機能を分担してハイブリッドで最適化を進めていくようになっていくのでは」と話した。三菱倉庫の加藤氏は「ロボット導入は市場で勝ち残るための戦略的な選択肢になっていくだろう」と予測した。

ロボット導入における永遠の命題でもある、「物流ロボットは人間の仕事を奪うか」の質問について、視聴者への緊急アンケートでは、「人間の仕事を奪う可能性はあるものの、失業率上昇にはつながらない」が43%で最多。「思わない」も32%に達するなど、やや楽観論が目立った。

金澤氏は「ここはロボットを導入することで、『人間だけではやりきれない仕事をやろう』との発想で差別化を推進するべきだ」と観念の転換を求めた。ギークプラスの加藤氏は「人手不足の時代が確実に到来する今後、ロボットを導入しない選択肢はもはや存在しない」と断言した。

▲ロジザード・金澤茂則社長

DX化の「攻め」と「守り」を使い分けて課題解決へ

続いて、未来のロボット動向予測について検討。ここで視聴者緊急アンケート「自社の物流DXに関する課題を説明できるか」について「分からない・整理できていない」との回答が47%に達するなど、物流現場における課題認識の明確化が進んでいない実情が露呈した。

ギークプラスの加藤氏は「ロボットとWMSなどシステムとのネットワーク化が数年後には主流になるだろう。それにより、課題解決力はさらに高まる」と指摘。物流業界における今後のDX化の展開について、三菱倉庫の加藤氏は「DX化の『守り』と『攻め』を使い分けることで、本質的な課題解決力を高めていくべきだ」と語った。

導入すべきは「今」だ!

ロボットなど先進機器の導入時に課題となるのがコストだ。視聴者への緊急アンケートでは、導入コストについて69%が「中長期でどうコストを考えればよいかがわかれば、導入を検討する企業は増えるだろう」と回答。中長期的な方向性を見通せることが、導入の可否を決める条件になっているようだ。

ギークプラスの加藤氏は、物流ビジネスを今後も継続すると決めているのであれば、少しでも早くロボットに投資すべきと強調。「コストではなく『投資』と捉えて、リターンを取りに行くことに注力すべきだ」と訴えた。金澤氏は「ロボット投資は目に見えない『無形の価値』が大きい。つまりは付加価値で判断すべき対象だ」と持論を展開した。

最後に、ロボットを導入しなければどうなるか、さらにそれを踏まえた導入検討のタイミングについて、登壇者は「導入すべきは『今』です」(金澤氏)との意見で一致。ギークプラスの加藤氏は「ロボットを導入していないという理由で、事業者選定のコンペティションの対象から外される事例も出てきている」と衝撃的な逸話を披露。「先進的な技術の導入を通して、顧客ニーズに対応する姿勢が問われることになる」と指摘した。

▲ギークプラス・加藤大和社長

ロジザード物流ロボットセミナーが残した教訓、それは先進機器と人間との「ハイブリッド」の大切さだ

「物流ロボットは物流現場の課題解決にどこまで資するのか」。現場の抱える課題は山積しているにもかかわらず、どこか議論が空転しがちなこのテーマ。その答えが、今回のセミナーで見つかった気がしている。

「物流ロボットが人間の仕事を奪うとは思わない。人的リソースが足りていないのであれば、作業従事者がノウハウを生かして、最適化を考えるべき。こうした仕事を人間が担うべきだと考えるからだ」(三菱倉庫・加藤氏)

「現場のすべての仕事をロボットができるわけではない。必要なのはロボットと人間の『ハイブリッド』という発想だ」(ロジザード・金澤氏)

先進的な機器やシステムの開発や導入現場に身を置く企業のトップや関係者が語ること、それは意外にもロボット万能説ではない。むしろ、人間との「共存」「連携」を重視する。むしろロボット懐疑派の方が、こうした固定観念や誤解に囚われているように思えてならない。その”矛盾”が、今回のセミナーの登壇者による歯に衣着せぬ発言のパワーで打ち破られた印象だ。

確実に人手不足の時代は迫ってきている。ロボット導入をもはや否定する根拠は薄弱になってきている。ただしその事実は、ロボットに仕事を奪われることを必ずしも意味しないのだ。むしろ、ロボットへの理解を深めてしたたかに活用し尽くす知恵を絞る必要があるだろう。それこそが、人間にしかできない現場におけるオペレーションだからだ。

ロジザードは今回のセミナーで「ロボットの導入する際はシステムも一緒に考えてもらいたい」「ロボットとWMSの企業がタッグを組んで支援することで、ロボットを使いこなすスピードが上がる」との訴求ポイントを提示した。システムとの連携による全体的な現場最適化。それは、そこで従事する人間が最適な「設計図」を描くことで初めて実現することであるのは、もはや言うまでもない。まさに、今日のセミナーが残した「教訓」だ。(編集部・清水直樹)

■物流ロボット特集