ピックアップテーマ
 
テーマ一覧
 
スペシャルコンテンツ一覧

関西物流展特別セミナー登壇レポート/第3回

2022年6月30日 (木)

話題LOGISTICS TODAY(東京都新宿区)の赤澤裕介編集長と永田利紀・企画編集委員が登壇した、「第3回関西物流展」「第1回マテハン・物流機器開発展」の特別セミナー講演「物流ロボット導入事例、隠された『その後』を徹底追跡〜忖度なし。使えたのか、使えなかったのか〜」の現地レポート。第3回は、ロボットに求める「正確さ」について考えます。


AGV憐れみの令、「物流ロボット様がお通りになる」現場

<赤澤>
次のテーマは、ちょっとキャッチーな感じなんですが、「AGV(無人搬送車)憐れみの令」「とめちゃっていいんだよ」。これはどういうことですか。私じゃなくて、永田から提案のタイトルですが。

<永田>
私が目の当たりにした現場の光景です。何十億とロボットに投資した現場で、私は招待客として見させていただいたときに歩いていると、AGVが動いてくるわけです。すると案内してくださった方が「今、AGV通るんでちょっと止まってください」と。「人間を感知すると止まってしまうんで」と言うんです。それはちょっとおかしいな、と思いまして「人間はAGV様が通るのを待つんですか」と、少し意地悪な質問かもしれないんですけれども聞いたら、工数計算と生産性の日報を出さなければならないらしいんです。

「AGVの導入を含めればこういう生産性があるはずだ」と最初に掲げられていて、全員がそこに向けて仕事をしている。機械に不具合があると、この機械が動いていないところで人間がいろいろ苦労しなければいけない。機械様が走ってくると、機械様がお通りになるからみんなが止まれ、と。機械の邪魔をするな、と。「君らは間違えるかもしれないけれど、機械は間違えないから、機械が最優先で仕事してもらうべきだ」というような空気は、経営層はそういうことを頼む経営層ではないんですけれど、頼みもしないのに、現場の中に蔓延している。

来客にそれを言ってしまうっていうところが、もう少しずれてきているんだろうなと思いました。当初、導入時にトップ以下管理層が望んだことと違うところに来てしまって、まるで江戸時代のお犬様を崇めたてまつるのと同じように、AGV様をないがしろにしたり、邪魔したりしてはいけない、という空気になっているということです。おそらく現場の中では不満みたいなものが、言わないまでもあるんだろうなと、推し量れました。

<赤澤>
これ実はかなり重要なポイントがいきなり出てきていると思います。ここでお話を聞いてくださってる皆さん、何かしらロボットの導入に関心をお持ちの方が多いんだろうと思うんですね。いろんな比較検討をされるべきと思いますけれども、そのときにこのフレーズをぜひ、覚えおいていただきたいと思います。

ロボットの動作を人が歩き回ることを前提としないロボットは、なかなかこの先難しいなと感じています。物流現場のオペレーションが変わっていく方向性と、ちょっとずれているなと感じるケースもあります。ロボットってあくまでも人間の作業を助けるもの、手伝うのもの、一緒に協調するものと考えたときに、人がロボットに配慮して通り道を開けなければロボットが機能しないということでは、おそらく先へ進めても失敗する顕著な例になるんじゃないかなと思います。なので、そこに気づかれたらまず立ち止まって考え方を変えられた方がいいのではないかと思いました。

これってどうなんでしょうか。実はそのロボットの取材を最初に始めたのは、5年6年ぐらい前だったかと、思います。その頃に出てきていた物流ロボットはAmazon(アマゾン)のキバシステムを改修して、みたいな頃だと思います。当時でいうとまだまだ物流向け専門で開発されたロボットが少なかった記憶があるんですよね。どちらかというと、製造業でファクトリーオートメーションの現場で使われていたようなものを「技術的には製造業の方が、より難易度の高い要求項目があるので、物流でも使えるだろう」ぐらいの感覚で物流現場に投入されてきていた機種が多かったと思います。実はそれが今の動きにつながってるような気がします。当時って製造業向けのロボットが多かったですよね。

<永田>
その流れで生産管理と同じような正確性が持ち込まれているのですが、いつも私が荷主企業に入って、コンサルするときに申し上げるのは、建前として「誤出荷はゼロでなければならない」「在庫差異はゼロでなければならない」「5Sも徹底しなければならない」というのは、当然競合に対して会社として掲げるわけです。

その中で「誤出荷してもいいんだよ」「誤出荷出るよそりゃ」とは言ってはいけないんですけど、誤出荷は出ます。なぜできるだけ、「ゼロ」というスローガンがすごく多いのかって常々疑問に思っていて、例えば営業が誤見積もりするな、人事が誤採用するな、誤評価もするな、経理で誤仕分けしているし、小口が合わないことってないのか。こうしたことをなぜ物流現場では言ってはいけないのかと、すごく疑問に思ってきて。誤出荷ゼロにするんであれば、営業も誤営業もゼロにしろ、誤人事もゼロにしろ、誤総務もゼロにしろ、っていうところに今回の自動化の出口があると思っています。自動化ってもう少し緩く考えてもいいのではないかな、というのが結論に向かっての一つの出口だと思います。

<赤澤>
ありがとうございます。今日この関西物流展でたくさんのロボットメーカーも出展されていますよね。この中にも、元々は製造業向けの搬送機とかを開発されていた会社さんがたくさんあるなとお見受けしました。ここで出展展示されているロボット見ると、5年〜6年前から設計思想が変わっていると、ものすごく強く感じます。メーカー側が当時、物流向けのロボットを見誤っていたんじゃないかなと思います。かなり機能的に細かい動きとか、高精度な動きをするんですよね、製造業務向けっていうのは。だけれども、それを物流現場にポンと当てはめたときに、まったく機能しないわけです。

これなぜかというと製造業の工場の中って、ロボットを置いたら自由自在に動き回れる位に整理整頓、整備された通路が確保されているんです。どうですか。皆さんの倉庫の中はロボットが自由に動き回れるほど、整然としたレイアウトになっていますか。なかなかそういうわけにいかないと思います。

当時はちゃんとロボット動かそうと思うと、まずはしっかりとした通路幅を確保しなきゃいけないですとか、ロボットのために倉庫のあり方を変えていくようなことをしていたかと思います。それが「やはり違うんだな」と。「動いている物流現場の中にうまくはまるロボットが物流には必要なんだな」と、ロボットメーカー側が気付かれて、どんどん変わってきているのが今のトレンドだと思います。そのへんを、ぜひ導入検討されるときには意識された方がいいとは感じています。


第4回は、現場運用におけるロボットの「位置付け」について議論します。

第2回<<前 次>>第4回

■物流ロボット特集