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国内本紙でも記事として掲載したように、2日に出された大雪の予報により、関東甲信地方では予防的な通行止めが行われている。ことしに入ってからも積雪による高速道路での立ち往生が発生しているが、過去には24時間を超える立ち往生もあり、ドライバーのみの安全を守る意味でも、無理な運行を行わせない道路規制には意味があるといえる。
しかし、単なる事なかれ主義からくる通行止めなのであれば、それは意味もなく物流を止めてしまうことにもなりかねない。
フジトランスポートの松岡弘晃社長は本誌の取材に対し「今日は関東と関西を走るトラックの大半が運休になっている。今日の荷物は明日に移行するというケースが多いようだ。しかし、17時現在の東名高速道路はほとんど雪は降っていない。道路交通情報センターのライブカメラ映像を見ても、降雪が無い場所も少なくない。物流が集中するつくばや三郷、岩槻などもまったく雪は降っていない。中央道と圏央道は雪が多少あるが、スタッドレスタイヤを装着していれば走行には問題がないレベル。この程度の雪でこれほどの大規模な通行止めを行ったNEXCOの判断は妥当といえるのか。せめてスタッドレスタイヤをはいているトラックだけでも、走行できるようにするべきだったのではないか」と語った。
災害級の降雪があるのであれば規制をするのは妥当だが、スタッドレスタイヤで走行できるのであれば、物流を止めてしまう規制をする必要があったのであろうか、というのは確かに合理的な疑問である。高速道路が走行可能なエリアでは、「雪がないのでトラックは下道を走っている。そのため国道などの幹線道路は渋滞が発生している」(松岡氏)という状況だという。
物流業界では2024年問題、人手不足などからDX(デジタルトランスフォーメーション)の推進が叫ばれ、無駄な運行や待ち時間を減らし、効率的な物流を実現しようという気運が高まっている。物流業界がDXによって効率化されていっても、妥当性を欠く施策が行われれば、モノの流れは滞ってしまう。交通の世界においてもより精度の高い施策を打てるソリューションの導入を期待したい。
また、近年では関東・甲信などの太平洋側や、降雪が極めて少ない四国、九州の地域でも雪が降ることがある。こうした、20〜30年前の常識では考えられないような気象状況もあり得ることをドライバー側も認識し、冬季には即座に対応できるよう備えておくべきだろう。