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5月の原油輸入57%減、中東依存はなお8割超

2026年6月17日 (水)

調査・データ財務省が17日発表した26年5月の貿易統計速報で、貿易収支は3786億円の赤字となり、4か月ぶりに赤字に転じた。輸出額は前年同月比17.0%増の9兆5116億円、輸入額は12.5%増の9兆8902億円で、輸入額が輸出額を上回ったものの、前年同月比では赤字幅は42.8%縮んだ。エネルギー・石油化学の欄をみると、2月末以降のホルムズ海峡の事実上の封鎖が日本の調達網に強い圧力をかけ、原油及び粗油の輸入数量は472万7000キロリットルと57.3%減り、輸入額も5392億円と28.5%減った。中東からの原油及び粗油は396万7000キロリットルで、原油輸入全体の8割超を占めた。備蓄の取り崩しと中東以外からの高値の調達で供給をつないだ1か月だった。(編集長・赤澤裕介)

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輸出増の内側で進む価格主導

輸出は半導体等電子部品や自動車、非鉄金属が伸び、金額ベースでは前年を上回った。ただ貿易指数でみると輸出数量指数は前年同月比0.5%増にとどまり、金額の伸び17.0%との差が出ている。輸入も金額が12.5%増える一方、数量は7%ほど減った。金額を押し上げたのは数量の増加ではない。価格と為替の影響で、5月の平均為替レートは1ドル158円29銭と、前年同月の143円97銭から10.0%の円安だった。ドル建ての国際価格が同じでも、円換算の輸入負担は増える。

エネルギーの数字がそれを示している。原油及び粗油は輸入額が28.5%減ったが、輸入の負担が軽くなったわけではない。数量が57.3%減ったのに金額の減りが28.5%にとどまったのは、単価の上昇が数量減を打ち消したためで、単純計算した輸入単価は1キロリットルあたり11万4000円ほどと、前年同月から7割上昇した。より少ない量を確保するためのコストが上がったことを意味する。

ホルムズ海峡の混乱は、4月の段階で日本の調達網を記録的な水準まで直撃していた。4月の中東からの原油輸入量は384万キロリットルと前年同月比67.2%減り、記録的な低水準に落ち込んだ。原油の入着価格も高止まりした。5月も中東からの原油及び粗油は396万7000キロリットルと数量で61.9%減り、低調が続いている。5月の原油・粗油輸入472万7000キロリットルのうち中東からは396万7000キロリットルで、単純計算で8割超にあたる。中東からの輸入が6割超減っても、原油調達に占める中東の比重は高いままで、中東依存が解消に向かったとはいえない。

調達先の移動がより目立ったのは、財務省分類上の「揮発油」だった。速報の主要品目表でみると、揮発油の輸入は世界全体で182万5000キロリットル、金額2324億円で、数量は13.7%減ったが金額は68.5%増えた。地域別では、米国からが56万6000キロリットルと数量で6.7倍、金額は13.2倍に増え、欧州連合(EU)からも222.9%増、東南アジア諸国連合(ASEAN)からも93.5%増と、中東以外からの流入が増えた。ただ財務省統計の「揮発油」はナフサを含み得る石油製品のくくりで、ナフサ単体の数量や相手国は速報段階では切り出せない。第一生命経済研究所の新家義貴氏も、速報段階ではナフサ単独の国別輸入は把握できず、確報などで改めて確認する必要があると指摘する。ナフサ単体の国別輸入は、6月26日に予定される輸入9桁速報でHSベースで確認できる。現時点で言えるのは、ナフサを含み得る揮発油・石油製品で、中東からの調達先が米国などに移ったということまでだ。

その揮発油の調達先分散には、単価の代償が伴う。速報の数量と金額から単純計算すると、5月の揮発油の運賃保険料込み(CIF)単価は米国品・EU品がいずれも1キロリットルあたり13万円前後で、中東品の9万円ほどを上回る。世界平均の12万7000円ほどと並ぶか、やや高い水準だ。この単純計算は速報の揮発油を一括したもので、地域ごとの品種構成や輸送距離、保険などの条件差を含む。それでも、供給の断絶を避けるため、一部の石油製品で相対的に高い調達を受け入れて供給をつないだことがうかがえる。調達先の分散は、単価に加え、品質差やタンクの回し繰り、納期といった負担も伴う。

貿易統計は通関(輸入許可)ベースで、5月の輸入数量は5月に国内で実際に消費された量と同じではない。船積み、航行、入港、通関にはずれがあり、調達したナフサが製油所やナフサ分解炉にどれだけ投入されたか、品質差や入着後の配分までは、この統計からはわからない。国内の精製量や在庫の取り崩し、製品出荷を確かめるには、経済産業省の石油統計と石油化学工業協会(JPCA)の生産・在庫実績を突き合わせる必要がある。代替調達で供給不安が解消したと書けるだけの材料は、貿易統計だけからは得られない。

政府はこの間、供給確保の見通しを示してきた。経済産業省は4月15日、国家備蓄石油20日分ほどを放出する方針を示し、民間備蓄義務の15日分引き下げを維持するとした。3月24日の第1弾(当面1か月分、850万キロリットルほど)に続く措置で、石油備蓄法に基づく放出は制度創設以来2回目だった。代替調達の見通しも、5月に前年実績比で過半、6月に7割以上へと引き上げ、6月11日の関係閣僚会議で高市早苗首相は、保守的に見積もっても備蓄の活用で28年3月末まで石油の安定供給が可能だと説明した。供給の停止という最悪の事態が避けられてきたのは事実で、政府の対応がそれを支えた面はある。

政府のいう「供給確保」は、通関ベースの輸入量が平常通りに戻るという意味ではない。輸入が減っても備蓄放出、民間備蓄義務の引き下げ、代替調達、国内精製、在庫の活用を組み合わせて供給をつなぐという考え方で、貿易統計の輸入減と政府の供給確保は、測っている対象が違うため、そのまま食い違うわけではない。一方で政府自身、5月下旬には流通過程で物資が滞っていることを認めている。接着剤やシンナーなどで過剰な発注や買いだめが起き、経済産業省は関係企業・団体に対し、過剰な出荷抑制を是正するよう要請した。通常より細った調達のもとで、中間在庫と配分の調整に頼りながら供給を続けているのが実情で、供給の停止を避けた代償として、コストと在庫の余力、現場の運用に負担がかかっている。

石油化学原料のナフサは、原油との備蓄のあり方が違う。原油には備蓄法に基づく国家備蓄があるが、ナフサには制度上の備蓄がない。ナフサ単体の在庫が限られるなかで、政府や業界は川中・川下の在庫を組み合わせて供給を続けている。JPCAも、国内石油精製からのナフサ調達の継続、中東以外からの調達拡大、製品在庫の活用を供給継続の柱に挙げ、備蓄原油の放出による国産ナフサの確保が影響の緩和に役立つとの見方を示した。

在庫をめぐる数字は、対象を分けて読む必要がある。政府は川中製品の中間在庫が1.8か月分相当あることを踏まえ、ナフサ由来の製品も年を越えて供給を続けられると説明する。一方JPCAは、ポリエチレンやポリプロピレンなどについて国内需要の3か月以上にあたる在庫水準を保っているとする。ただし品目差があり、同じ資料ではポリスチレンの在庫率は1.5か月にとどまる。いずれもナフサ単体のタンク在庫を指すものではない。ブタジエンやトルエンといった川中の基礎化学品から樹脂製品までを含むサプライチェーン全体の在庫を合わせた見方だ。薄いナフサの在庫を、川中・川下の在庫で補っている。

生産現場では、稼働の落ち込みが続く。JPCAの4月実績メモによると、エチレン生産は28万3500トンで前年同月比37.1%減、実質稼働率は67.3%と前年同月の78.6%を下回った。減産の要因は定修要因などが22.6ポイント、稼働率変動が14.5ポイントとされる。中東情勢による原料制約に加え、ナフサ分解炉の定期修理(定修)の集中も効いている。装置産業であるエチレン製造は高い稼働を前提に採算を組むため、67%台の稼働は収益の重荷になる。供給を続けるために、稼働と単価の両面で負担を受け入れている。

6月中旬には、米国とイランのホルムズ海峡再開をめぐる覚書(MOU)の報道を受け、市場は緊張の緩和を織り込み始めた。ブレント原油は80ドル台前半まで下げ、一部では一時80ドル割れも伝えられた。ただ合意や価格の下げが、供給網の正常化を意味するわけではない。米エネルギー情報局(EIA)は6月9日時点の見通しで、ホルムズ海峡が当面は事実上閉鎖された状態が続くことを前提に置き、ブレント価格の6-7月平均を105ドル、26年通年平均を95ドルと見込んでいた。そのうえで、海峡を通る石油の流れが戻り始めるのは7-9月から、危機前の生産・貿易の状態に近づくのは27年初めになるとの想定を示している。通航の再開が伝えられても、保険や設備、物流を含めた正常化には時間がかかる。

供給の断絶は避けられた。5月の数字が示したのは、危機時に原油では中東依存が8割を超え、ナフサでは制度備蓄の薄さを、備蓄原油からの国内精製、中東以外からの輸入、川中・川下の在庫で補ったという調達の実態だ。供給は止めなかったが、通常時と同じコスト、在庫の余力、物流の条件で回っていたわけではない。原油の代替調達は6月に前年平月比8割程度、7月に10割程度の回復が見込まれ、ナフサ単体の国別数量・金額は6月26日の輸入9桁速報でHSベースで確認できる。

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