イベント物流現場のボトルネックとして語られがちな「仕分け工程」をテーマに議論を重ねてきたオンラインイベントシリーズ「SHI・WA・KE25」が17日、第3回の開催をもって一区切りを迎えた。シリーズを通じて浮かび上がったのは、仕分けそのものの是非ではなく、課題設定のあり方や物流工程全体を俯瞰する視点の重要性だった。
本シリーズでは、物流DX(デジタルトランスフォーメーション)や自動化投資の検討が加速するなかで、仕分け工程の効率化に過度な期待が集まりすぎていないか、個別最適にとらわれていないかという問題提起が投げかけられた。設備導入が目的化しやすい現場に対し、まずは工程理解を深める場を設けることが狙いだった。
第1回では、物流現場の悩みが「仕分け」という言葉に集約されやすい構造そのものに着目した。本イベントの発起人であるタクテック(東京都文京区)が、ボトルネックの所在を十分に整理しないまま設備投資の議論が進むケースや、GAS(Gate Assort System、ゲートアソートシステム)など多様な仕分け効率化ツールが存在する中で、企業ごとに最適解は異なると指摘。物流構造全体の可視化と比較検討こそが仕分け改善の前提条件であると整理した。
第2回では、この問題提起を受け、タクテックと仕分け領域で競合関係にあるソリューションベンダー4社が集結。具体的な現場事例をもとに工程間の関係性や運用設計の重要性が議論された。仕分け工程の改善が他工程の制約によって効果を発揮できないケースや、逆に仕分け以外の工程が真の制約条件となっている可能性などが共有され、設備投資の前に全体オペレーションの検証が不可欠との認識が共有された。議論はさらに、経営層の意思決定のあり方や、単一ソリューションに依存しない適材適所のツール連携へと及んだ。
最終回となる今回の第3回では、タクテック社長の山崎整氏と、L2コンサルティング(大阪市北区)社長の吉野宏樹氏が登壇し、本誌LOGISTICS TODAYの赤澤裕介編集長がモデレーターを務めた。視聴者の事前アンケート結果を素材にして、より実践的な論点整理が行われた。100社を超えた事前アンケート回答企業の属性を見ると、物流事業者が5割近く、荷主企業が32%以上を占めた。従業員300人以上の大企業が半数を占めるなど、一定規模以上の現場が課題意識を持って参加している実態、特に荷主企業の意識変容が浮き彫りとなった。
ボトルネック工程として最も多く挙げられたのは「仕分け・アソート」で、次いで「ピッキング」が続いた。一方で、「積み込み・出荷」「入荷・検品」「在庫管理」など複数工程が分散して挙げられ、課題が単一工程に集約されない現場の実態も示された。また、「自社がボトルネックを把握できていない」とする回答も一定数存在し、設備導入以前の課題整理そのものが難しい状況が浮き彫りとなった。
仕分け工程の位置づけについては、「出荷・配送など下流工程への影響が大きい重要工程」との認識が最も多く、物流品質やリードタイムに直結する工程として捉えられていることが分かった。課長層では仕分けや検品工程の課題意識が強い一方、経営層では在庫やネットワーク設計などより広い領域で改善の必要性が認識されている傾向も見られ、サプライチェーン全体を視野に入れた課題認識が進みつつある。
物流改善パートナーに期待する役割については、「現場に入り込み課題の本質を一緒に見つける支援」を求める声が最も多く、業態特性を踏まえた最適提案や事前シミュレーションによるリスク低減など、伴走型支援への期待が強いことも明らかになった。

▲L2コンサルティング吉野宏樹社長
議論のなかで吉野氏は、物流現場のボトルネックは固定されたものではなく、流量が狭まる箇所で、1点を解消すると別工程へ移るものと指摘した。例えば、スーパーマーケットにおける買い物でも「友人の分といっしょに買い物カゴに入れていけば、後工程での個別仕分けが必ず必要になり、“溜め”が生じること」を例示し、流れが滞りやすい構造を理解した上で総合設計が必要と解説した。また、注文構成比や需要波動の変化により、当初想定した通りの施設設計能力が発揮できなかったという吉野氏の体験談からは、「初期設計で全変動を織り込むのは不可能。将来の比率変化に備えた、ボトルネック移動を前提とした段階的最適化」(山崎氏)の重要性も提起された。

▲タクテック山崎整社長
山崎氏は、現場改善の出発点として、“庫内作業工程”を四角、“工程の流れ”を矢印で結んで、物量と処理能力とともに整理したマテリアルフロー図を用いた工程可視化の重要性を挙げ、「課題を見誤ったまま投資だけを進めると、かえって現場が混乱する」と警鐘を鳴らした。吉野氏も、「マテリアルフロー図はとても重要。現場の見直しだけではなく、設計段階でも基盤となる。課題が顕在化するたびに、何度も立ち返るべきもの」として、経営と現場の認識不一致を防ぐ共通言語となるものが不可欠であるとの見解を示した。
また、山崎氏は、現場の課題抽出方法に関しては、現場全体を歩き回るのではなく、定点観測こそが有効と解説。ベンダー選定においては機能面だけではなく、保守体制や部品供給体制も重要と語り、今後の課題把握やパートナー選定のヒントを提供した。
シリーズ全体を通じて共有されたのは、物流のボトルネックが「設備」「設計」「組織」のどこにあるのかを見極めることこそが重要だという認識である。赤澤裕介編集長は、「仕分け工程をボトルネックの原因と決めつけるのではなく、観測点と位置付けるべき」と指摘し、単一工程に捉われては全体最適にはつながらないとの見方を示した。
仕分け工程だけに絞り込んだ異色の議論となった本イベントだったが、さらに多くの論点や課題が提示されることとなった。赤澤編集長は、「議論が一方通行で終わることなく、参加者それぞれの課題を深掘りできるようにしたい。2026年は、オンラインではなく、非公開のリアルな議論とするのはどうか」と、ラウンドテーブル開催で議論を引き継ぐことを提案。それに対し「それならば参加者それぞれがマテリアルフロー図を持参するのはどうか」(吉野氏)、「議論を深めるため、どんなグループごとで話し合うのが有効か検討したい」(山崎氏)などの前向きな賛同を得て、具体化が待たれる状況となった。物流現場課題への対応進ちょく度ごと、関心段階ごとの議論の場を設けることで、問題解決への解像度をさらに高めていく狙いだ。
24年問題を契機に、物流現場の改善は待ったなしの状況にある。SHI・WA・KE25は、仕分けという1つの工程から全体を俯瞰するとともに、課題解決の判断軸を深く問い直す場となり、議論はさらに次の段階へと進む。

▲(左から)本誌LOGISTICS TODAY赤澤編集長と、山崎氏、吉野氏
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