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Every WiLLが「再配達削減PR月間」に訴える、ラストワンマイルの受取行動変容

配送の選択肢広げる非対面受取の新標準、トリイク

2026年4月30日 (木)

ロジスティクス今年度から2030年度までの5年間を対象とする新たな「総合物流施策大綱」が策定された。非対面配送の倍増が目標に掲げられ、置き配やコンビニエンスストアでの受け取り、宅配ボックスなどによる受け取りを、30年までに現状の25%程度から50%まで引き上げる計画である。置き配の標準化に加え、駅や公共施設、コンビニなど「自宅以外への配送」も標準サービスとして位置付けられる方向にある。

こうした流れのなかで、Every WiLL(エブリウィル、東京都新宿区)が展開する無人受取拠点「トリイク」も、新たな非対面受取の選択肢として注目を集める。同社のCOO石戸智美氏が目指すのは、「荷物を自宅まで“届け切る”従来型の宅配から、生活者が自分の都合に合わせて受け取り方を選ぶ仕組みへの転換」だ。店舗や駅、商業施設などの空きスペースを活用し、荷物を集約して受け取れる無人拠点を整備することで、再配達を減らし、ドライバー負荷を抑えながら、利用者の利便性も高める。同社はこれを「荷物を届けない運送サービス」と位置付けている。

▲「トリイク」イメージ(クリックで拡大、出所:Every WiLL)

持続可能なラストワンマイル配送に、「取りに行く」発想を導入

もっとも、非対面受取の手段はすでに存在する。ではなぜ、同社は新たにトリイク事業で踏み込むのか。それは、既存サービスがいずれも万能策ではないからだ。

まず置き配には、水濡れや盗難の懸念がある。荷物が玄関前に置かれることで、在宅・不在の状況や居住情報が周囲に察知されやすく、生活実態、購入内容にひもづくプライバシー面の不安も残る。オートロック付き集合住宅で戸別玄関前に届けるには、スマート置き配のような仕組みも必要になり、管理規約変更など導入のハードルもある。

▲石戸智美氏

宅配ボックスも有力な手段だが、設置には一定の初期投資が必要だ。宅配需要が増えるなか、満杯なら再配達となる。マンションでは既設宅配ボックスの更新時期を迎え、修繕積立金の高騰とともに設備更新が重荷になりつつあるケースも少なくない。街中の共通ロッカーやコンビニ受取も、保管容量の限界や、特定事業者の荷物しか受け取れないといった課題を抱える。

これらに対しトリイクは、「屋内スペースを用いることで風雨による汚損リスクを避けられる。登録利用者のQRコード認証と許可を受けた配送者しか入室できず、荷物は監視カメラや入退室ログで管理されるため、セキュリティーも担保しやすい」(石戸氏)。設置費用も宅配ボックスの5分の1程度とされ、2坪程度のスペースがあれば屋内外を問わず設置しやすく、棚管理で「満杯問題が実質ない」という。利用者にとっては、自分の好きなタイミングで“安心・完全非対面”で受け取れること自体が価値になる。

加えて、トリイクは利用者に対してインセンティブが付与される点も魅力だ。実証では楽天ポイントやAmazonギフト券による還元を実施し、“受け取りに来れば得になる”体験を設計した。これは単なる販促策ではなく、生活者の受取行動を変えていくための導線でもある。特定の配送事業者を指定しないオープンな配送拠点とした点にも、日常の生活インフラとしての設計思想が見える。

配送事業者やドライバーにとっての利点はより明快だ。トリイクスポットに配達する限り、再配達は一切発生しない。複数の荷物を一度に、複数の届け先を1か所にまとめて配送できることは、ドライバーの負担軽減に大きな意味を持ち、配送事業者にとっても燃料費や人件費の効率化につながる。CO2削減による社会的な貢献も大きい。

利用者、ドライバー、設置施設、発送者、社会全体への貢献を実証

▲「トリイク」梅田・小倉での実証事業アンケート結果より(クリックで拡大、出所:Every WiLL)

昨年は、東京の九段下駅にスポットを設置するなど、こうした利点が本当に成立するのか検証が続けられてきた。昨年10月から12月にかけては、大阪梅田、北九州小倉の2拠点での実証を実施。結果として、トリイクスポットへの配達では「再配達率は0」を確認。事故や盗難などのイレギュラーも確認されず、ドライバーの労働時間削減・再配達数削減を設定した主要KPIも目標を上振れして達成したという。配送効率化に向けて運用可能な仕組みとして一定以上の成果を示した格好だ。

▲「トリイク」利用イメージ(出所:Every WiLL)

利用者像を見ても、想定していた層に受け入れられていることがうかがえる。梅田と小倉でのアンケートでは、性別では女性(57.2%)、年齢層では30-40代の利用が全体の6割ほどを占めた。家族構成では「夫婦と子ども」が最多、次いで一人暮らしの利用も多く、共働き世帯や日中に自宅で荷物を受け取りにくい働き盛り世代にとって、動線上で安全に受け取れる拠点型サービスが現実の選択肢として評価されたとみられる。

利用理由の内訳も興味深い。最多はポイントやギフト券などの還元だったが、それに続いて「再配達が発生しない」「職場や学校の近くにスポットがあった」「物流の人手不足問題の解決に貢献できると考えた」といった意見も見られた。利便性やインセンティブだけでなく、物流課題への共感や、日常の移動動線に組み込める点も利用を後押ししている。

また、トリイクが単なる「置き配できない人向けの代替策」ではないこともわかる。アンケートでは、代替手段として最も多かったのは自宅での手渡し配送、次いで自宅への置き配、自宅マンションや敷地内の宅配ボックスだった。つまり、トリイクはこうした非対面配送サービスの中から、主体的に選ばれているということだ。単なる設備制約の補完ではなく、安心感や能動的に受取方法を選べる利便性そのものに価値があることが示唆されたといえる。

さらに注目すべきは、設置施設オーナーにとってのメリットも、実証で数字として現れた点だ。商業施設に設置した大阪梅田の実証では、受取来訪者の28%が近隣店舗で「ついで買い」をしたという。石戸氏は、「無人受取拠点が単なる荷物保管スペースではなく、来訪機会を生み出し、施設内消費を促す装置としても機能し得ることを示している」という。集客や売上貢献、空きスペース活用、新規顧客接点の創出といった設置施設側の利点について、今回の結果はその仮説を一定程度裏付けたといえる。また、ポイント付きの利用体験が次のEC(電子商取引)利用を促していることも明らかになった。

(クリックで拡大、出所:Every WiLL)

「2万6000拠点目標」で、生活インフラとしての新・物流サービス構築

一方で、事業の妥当性が見えてきたからといって、普及のハードルが消えたわけではない。トリイクの現状課題は明確で、受取スポットの数がまだ圧倒的に足りないことにある。サービスの利便性は、生活動線の近くに拠点があってこそ初めて成立する。利用者に評価され、配送効率化の成果が確認されたとしても、スポット網が十分に広がらなければ、受け取り方の新たな標準にはなり得ない。

その意味で、今後しばらくは“我慢の時間”が続くと石戸氏は表現する。拠点数が限られるうちは認知も理解も一気には広がりにくい。こうした初期普及の壁を越えるには、単独企業の努力だけでは足りない。志を同じくする行政との連携を起点にしながら、駅や商業施設といった人流結節点、さらには物流関係事業者を含め、受取インフラを支える各所との協力を地道に広げていくことが不可欠となる。

トリイクスポット入り口設置例(出所:Every WiLL)

まず今年度は、5-6月から東京都の23区外エリアで新規開設を進める計画で、沖縄での展開も計画している。今年度は35拠点設置を目標に、KPIと効果をさらに可視化していく方針だ。ただし、同社が視野に入れているのは単年の拠点開設にとどまらない。中長期では、行政連携を入口に、鉄道事業者や大型チェーン本部との包括連携を通じて設置を一気に広げ、“8年以内に2万6000拠点”という大きな構想を掲げる。これは大手コンビニ網に匹敵、あるいはそれを上回る規模感を意識したもので、社会的な受取インフラとしての定着を目指す意思の表れといえる。

ここで改めて重要になるのが、前段で確認された設置施設側のメリットである。大阪梅田の実証では、受取拠点が送客や売上貢献の導線になり得ることが見え始めている。未利用スペースの有効活用、来訪機会の創出、地域住民や通勤客との新たな接点形成という意味でも、駅、商業施設、スーパーマーケット、ドラッグストア、ホームセンター、巨大集合住宅などにとって導入余地は小さくない。今後は「どこに置くか」だけでなく、「誰がこの仕組みづくりに参加するか」が問われる局面に入り、今年度の実証事業ではそのファクトとなるデータが集められるはずだ。

意識と行動の変容で、多様な選択肢から最適解を

もちろん、トリイクだけですべての受取課題が解決するわけではない。大きさ・重さなどの荷物特性、地域・近隣との関係性やライフスタイルによっても、最適な配送手段は違って当然だ。置き配、宅配ボックス、共通ロッカー、コンビニ受取など、それぞれに強みがある。だからこそ、トリイクの意義は、それらに置き換わるのではなく、「多様な受け取り方の一つとして、適材適所で賢く活用される選択肢を増やすこと」(石戸氏)にある。ラストマイルの持続可能性は、単一の正解ではなく、複数の受取手段をどう組み合わせるか、どう選べるかで決まる。

その先にあるのは、受取行動そのものの変化である。石戸氏は、「日本の物流サービスは過剰であることに、みんなが気づき、変革する契機」と捉える。再配達の有料化に加え、将来的には時間指定を含めた対面受取そのものが“プレミアムなサービス”として位置付けられていく可能性は高い。「1配送に1個の宅配ボックス割当てを期待すること自体が過剰」(石戸氏)との意見も、なるほどもっともではないか。

同社も参画した4月の「再配達率削減PR月間」は間もなく終了するが、ラストワンマイルの最終工程で「取りに行く」意識を高めていく取り組みは、今後も粘り強く続けていかなければならない。Every WiLLが訴えるのは、単なる1サービスの普及ではない。対面で受け取るのが当たり前だった時代から、生活者自身が状況に応じて最適な受取方法を選ぶ時代へ移ること。その行動変容を後押しする選択肢の1つとして、トリイクの社会的な意味は、これから本格的に問われていくことになる。(大津鉄也)

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