ピックアップテーマ
 
テーマ一覧
 
スペシャルコンテンツ一覧

エイターリンク、暑熱リスクを可視化し熱中症を防ぐ

2026年6月30日 (火)

話題物流施設における熱中症対策が待ったなしの経営課題となるなか、AETERLINK(エイターリンク、東京都千代田区)は、ワイヤレス給電技術を活用した暑さ指数の可視化と空調制御ソリューションを展開する。配線不要のセンサーで倉庫内の温度ムラを正確に把握し、感覚や経験に頼らない環境管理を実現する新技術だ。

労働安全衛生規則の改正と熱中症対策

物流業界において、暑さ指数(WBGT)の管理は経営直結の極めて重要な課題となっている。2025年6月、厚生労働省の労働安全衛生規則の省令改正により、事業者側は従業員に対する熱中症対策を適切に行うことが強く求められるようになった。

▲WBGTと気温、湿度との関係(クリックで拡大、出所:日本生気象学会)

物流現場における暑さ対策は、一般的なオフィス環境と比べてはるかに深刻であり、労働者の健康に関わる重大な問題である。暑さ指数が危険とされる環境で作業を行う場合、規定により長時間の休憩を挟む必要が生じる。

しかし、人手不足のなかで頻繁に休憩を入れると、倉庫のオペレーションそのものが回らなくなってしまう。経営側としては、暑さ指数が危険な水準に達する前に適切に空調を稼働させ、追加の休憩なしに安定したオペレーションを維持できる環境を整備することが何よりも望ましい。エイターリンクのシステムは、この暑さ指数をマッピングして可視化できるため、現場の安全衛生管理と経営効率の維持という両面を強力に支援する。

▲暑さ指数の可視化画面デモ(クリックで拡大、出所:エイターリンク)

都市部と地方における労働環境と熱中症対策の違い

この熱中症対策について、エイターリンク社長室の壽松木健太氏は、都市部と地方における物流倉庫の人材供給の違いに着目した固有の課題を指摘する。都市部の倉庫であれば、周辺の人口規模から人材に一定の流動性があり、仮に離職者が出たとしても新たな人員を補充できる可能性が残されている。

▲エイターリンク社長室の壽松木健太氏

一方で、地方の倉庫はそもそも労働人口が極めて限られている。そのため、1人でも従業員が辞めると現場の運営が立ち行かなくなるという、地方特有の切実な課題を抱えている。労働環境を改善して離職を防ぐための熱中症対策は、地方の現場において最優先事項となる。

暑さ指数を適切に管理することは、従業員の健康を守るだけでなく、地方の貴重な労働力をつなぎとめるための重要な経営防衛策である。

熱中症のリスクは、単なる気温や湿度だけで決まるわけではない。直射日光や、屋根や壁からの照り返しといった輻射熱が、人間の体温上昇に大きな影響を与える。この熱環境を正確に捉えるために用いられるのが黒球温度計であり、暑さ指数を算出する際には極めて大きなウェイトを占める重要な指標である。

スタンフォード大発のワイヤレス給電がもたらす技術的優位性

しかし、広大な地方の倉庫で環境データを網羅的に測定しようとすると、配線工事や電池交換の手間、そして機材コストが導入の大きな障壁となる。特に黒球温度計は高価なため、施設内のあちこちに何十台も設置することは現実的ではない。

そこでエイターリンクは、スタンフォード大学での医療用体内埋め込みデバイスの研究から生まれたワイヤレス給電技術を応用する。ベースにあるのは、米粒ほどの大きさに極小化された心臓ペースメーカーの開発技術だ。遠隔から電気を送る技術を取り入れてバッテリーをなくすことで、デバイスの極小化を可能にした。

この技術を産業用途に応用し、天井に設置した送電器から微弱な電波を出力し、受信機となるセンサーがその電波を電気に変換して駆動する仕組みを構築した。これにより配線なしでセンサーを自由に配置でき、細密な環境データの取得を可能にした。

技術的な最大の強みは、空間を飛ぶ電波のエネルギーロスを最小限に抑える変換効率の高さにある。壽松木氏は「受け取った電波をいかにロスなく、無駄なく効率よく、電気に変換するかが当社のコア技術だ」と自信を見せる。受信器自身が消費する電力も極めて低く抑えられており、センサーの安定的な駆動を可能にしている。送電機が消費する電力も現行の法規制では1W以下に抑えられており、システム全体でエネルギーを無駄遣いしない省エネ設計を実現した。欧米の先行企業に対しても、多数の特許で技術を強固に保護することで大きな優位性を保っている。

大規模施設での実践: ハイブリッド測定が実現する3次元の可視化

関西の大規模物流倉庫では、150メートル×300メートルの広大な空間に対し、300台の送電器と600個のセンサーを配置する計画が進む。ここでエイターリンクの高精度なハイブリッドアプローチが真価を発揮する。

システムでは、倉庫内の代表的な基準点にのみ黒球温度計を配置する。そして、配線不要で高密度に配置された多数の小型温湿度センサー群のデータと、その基準点のデータをシステム上で掛け合わせる。独自の解析アルゴリズムを適用することで、黒球温度計が設置されていない場所であっても、倉庫内全体の暑さ指数を実用上十分な精度ではじき出し、3次元のマップとして可視化することを実現している。取得したデータは既存の通信網でクラウドへ送られ、空調の自動制御へとダイレクトにつながる。

▲システム構成イメージ(クリックで拡大、出所:エイターリンク)

過剰な冷房を防いで省エネを達成しつつ、最もリスクの高いエリアを狙って快適な労働空間を保つことが可能になる。オフィスの温湿度可視化とは異なり、倉庫空間での熱中症予防は経営に直結する指標だ。

フィジカルAIで物流現場の未来を切り拓く

同社は今後のテクノロジーの進化を見据え、フィジカルAI(人工知能)の領域に照準を合わせる。現在の主流である言語モデルのAIに対し、物理空間で起きる事象のデータを取得し解析する新技術だ。空間データをセンサーの末端側で処理するエッジAIを取り入れ、倉庫内のカメラ映像とも連動させる構想を描く。

作業員の動線分析や効率化に向けた新たな価値を生み出すと意気込む。現場で働く人たちの健康をいかに守るかは、社会全体で取り組むべき課題だ。

熱中症対策をデータに基づく高精度な管理へ移行させ、過酷な物流現場で働く人々を守るエイターリンクの取り組みは、社会インフラを支える物流網の持続可能性に大きく貢献する。ロボット化しきれない現場の安全を担保する技術として、その存在感は今後さらに高まっていく。

エイターリンクのワイヤレス給電ソリューションをもっと詳しく知るには

エイターリンク
ホームページ:
https://aeterlink.com/

製品・ソリューション紹介:
https://aeterlink.com/service/

お問い合わせ:
https://aeterlink.com/contact/

>>特集「酷暑の物流生存戦略2026」トップページへ