ロジスティクス経済産業省・国土交通省が主導するフィジカルインターネット実現会議の化学品ワーキンググループは29日、危険物有姿品(バルク以外の個包装品)の物流動態を全国規模で可視化したと発表した。荷主15社の1年分の物流実績を同一の定義で集約したところ、対象データ上の着地市区町村の48.0%で5社以上が個別に納品していた。WGは荷主15社と物流事業者13社の計28社で、共同保管や共同集配などの設計・検証に入る。(編集長・赤澤裕介)

▲発表の様子
あわせて、共同物流のためのデータ規格となる化学品物流情報標準ガイドラインを策定した。26年10月から27年1月ごろ、広島を起点、関西地域を着地とする輸送レーンで実証に入る。可視化は共同化の候補地域を抽出するための土台となり、ガイドラインは多社間で輸送情報を扱うための共通言語となる。2つの発表は、共同物流の実装条件を物流構造とデータ連携の面からそれぞれ整えるものだ。
化学品WGは、物流の2024年問題に化学業界としてどう対応するかという問題意識から発足した。三菱ケミカル、三井化学、東ソー、東レの4社が事務局を務める。23年6月に設置が承認され、同7月に第1回全体会議を開いた。座長は流通経済大学の矢野裕児教授が務める。参加は立ち上げ当初の44団体から87団体に広がった。経産省、国交省、厚生労働省や関連協会も参画している。
化学品関連製品は数量ベースで自動車輸送が75%を占める。内航船舶は23%、鉄道は2%で、全品目に比べ船舶比率は高いものの、主力はなおトラックだ。全品目の自動車比率91%より低いものの、危険物輸送では法令や物性に関する専門知識が必要で、一般貨物以上に担い手の代替が難しい。WGはこうした制約を背景に、化学業界内で企業の垣根を越えた共同物流を検討してきた。
可視化の意義は、共同化の候補地を勘ではなくデータで選べるようにした点にある。対象データ上の着地市区町村の48.0%で5社以上が納品しており、共同保管や共同集配を検討する土台ができた。分析は矢野座長と福島大学の石川友保教授が担った。
ただ、危険物の共同化は、物量の重複が見えても、そのまま混載できるとは限らない。共同化の候補地はデータで抽出できるが、運用では消防法上の分類、安全データシート(SDS)、荷姿、温度条件、車両条件を一つずつ照合する必要がある。WGは荷主15社、物流事業者13社の計28社で、東北、九州、関西を優先エリアに設計・検証に入る。
標準化の側では、荷主と物流事業者が1対1で結んでいたデータのやり取りを、業界共通の規格を介してN対Nに広げる。化学メーカー21社が策定プロジェクトに参加した。説明会で矢野座長は「標準化なくしてデジタルなし」と述べ、コード体系やメッセージ、業務プロセスをそろえることをデジタル化の前提に置いた。実証では積載率の向上や輸送距離の削減などを測り、28年度の社会実装を目指す。
WGは可視化や標準化と並行して、商慣行の改善も進めてきた。だが、取引先側への周知は進んだものの、現場を含めた十分な行動変容にはなお至っていない、という認識を示している。各業界とも物流への課題意識はあるが対応が個社任せになり、進捗管理やフォローまで担う団体が少ない。中小企業では設備や人員、体制の制約から実効性に限界が残る。WG側は、狭い荷受け場所やフォークリフト導入余力の不足、人員確保難などを挙げ、補助制度の活用や行政による現場向け周知が必要だと説明した。
26年度は改正物流効率化法が全面施行された。25年度からすべての荷主と物流事業者に積載効率の向上や荷待ち時間の短縮などの努力義務がかかり、26年度からは年間取扱貨物が9万トン以上の特定荷主に、中長期計画の作成や定期報告、物流統括管理者の選任が義務づけられた。説明会に出席した経産省物流企画室の担当者は、9万トン超の荷主を積み上げると国内の貨物輸送量の半分ほどをカバーする趣旨だと説明した。ただ、9万トン未満の荷主は特定荷主義務の対象外で、対応は努力義務にとどまる。さらに、狭い荷受け場所や人員不足など物理的制約を抱える中小拠点では、制度だけで改善を進めるには限界がある。物流特殊指定については、改正後の運用を注視するとの発言があった。
危険物物流は、可視化で共同化の候補を見つけられる段階に入った。実際に輸送力を生み出せるかは、荷主側がリードタイムや納入条件をどこまで見直し、物流事業者が安全条件を満たす運用をどこまで標準化できるかにかかる。
◆ この記事をより深く理解するために ◆
「危険物物流を全国で初可視化」──本記で触れた可視化の詳報。偏在の数値と荷主・物流事業者の計28社による検討体制を詳述。
「化学品物流に業界初のデータ連携基盤」──本記で触れたガイドラインの詳報。N対N連携の仕組みと28年度社会実装までの時間軸を詳述。
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