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自動車業界、フィジカルインターネット実装体制に参画

PI実現会議、自工会が業界横断のCLO連携を提案

2026年7月1日 (水)

行政・団体経済産業省と国土交通省は7月1日、今年度2回目となるフィジカルインターネット実現会議を開き、日本自動車工業会(自工会)が求めた自動車ワーキンググループ(WG)の設置を了承した。あわせて自工会は、業界の枠を越えてCLO同士が連携する活動軸を国の会議のなかに設けるよう提案した。会議では、自工会の共同物流推進タスクフォースを代表してトヨタ自動車CLO(TPS本部長)である饗庭龍次氏が説明した。物流の担い手不足を受けた国の取り組みは、参加する業界の幅と、改革を担う顔ぶれの両面で新しい局面に入った。(編集長・赤澤裕介)

饗庭氏(トヨタ)

自動車WGの設置は、参加業界が1つ増えたという以上の意味を持つ。自動車産業は、部品調達、輸出入、用品・補修品、完成車物流まで広範な物流網を持ち、深いティア構造や専用機材、帰り便の空車といった固有の課題を抱える。トヨタ生産方式に代表されるように、物流を生産・調達・販売と一体で設計してきた産業でもある。その自動車業界が国のフィジカルインターネット実装体制に加わることで、会議の議論はより実物流に近い領域へ広がる。自工会自身も、メーカー協調領域の一つに「サプライチェーン全体での競争力向上」を掲げ、物流を協調深化テーマに位置づけている。

自工会の提案には、自動車WGの設置だけでなく、実現会議の推進体制に関わる要素が含まれる。荷主企業の物流責任者を社内にとどめず、業界横断で結びつける仕組みを、実現会議の枠組みに組み込む内容だ。この日の議論の重心は、WG設置そのものよりも、この提案に置かれた。

自工会提案の四要素

自工会の提案には四つの要素がある。1つ目は、共同物流推進タスクフォースを実現会議に組み込むこと。自工会は加盟14社が参加するタスクフォースを設け、業界内の物流ネットワークの効率化を進めてきた。この枠組みを国の会議のもとに接続する。2つ目は、自動車WGを通じて各業界WGと連携すること。既存の業界別WGと自動車WGを接続し、業界間連携の具体化を図る。3つ目は、WG活動と実現会議の間に「業界間連携の活動軸」を設けること。4つ目は、その活動軸にCLO間のコミュニケーションを含めることだ。

自工会はこれをCLO間コミュニケーションを含む「業界間連携の活動軸」と位置づけた。饗庭氏は会議で、業界をまたいだ共同物流を進めるにはCLO同士の横のつながりが必要だとの認識を示した。物流の制約を経営判断に組み込む責任者同士が、業界の外で向き合う必要があるという趣旨だ。

自動車WGのミッションは、他業界を巻き込み、業界間データプラットフォームを通じて「循環型経済を支える物流」と「止まらない物流」を構築することに置かれている。

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CLO横断連携の意味

CLO(物流統括管理者)は、26年度に全面施行された改正物流効率化法により、一定規模以上の荷主企業に選任が義務づけられた役職だ。物流の実務管理者とは異なり、事業運営上の重要な決定に参画する管理的地位、すなわち役員クラスのポストと位置づけられる。今回のロードマップ改訂でも、CLOには経営視点での物流最適化が求められる。CLO制度は、荷主企業に物流を経営課題として扱わせるための制度設計でもある。

荷主企業のCLOを束ねる場としては、フィジカルインターネットセンター(JPIC)が運営するCLO協議会がすでにある。荷主と運送、倉庫事業者らのマッチングやネットワーク構築の場として、これまで9回開かれ、延べ1800人ほどが参加した。自工会の提案は、こうしたマッチングの場とは性格が異なり、国のロードマップと直結した政策の枠組みのなかに業界横断のCLO連携を組み込むよう求めている。

CLO制度が各社内の管理体制整備にとどまれば、業界を越えた共同物流の推進力にはなりにくい。フィジカルインターネットは企業間、業界間の接続を軸とする構想で、データやトラックが企業や業界の境を越えるだけでなく、物流を経営課題として担う意思決定者が境を越えられるかどうかが実装を左右する。自工会の提案は、CLO同士を横につなぐ活動軸を国の枠組みに置き、CLOを社内の管理者から産業横断の調整役へ位置づけ直す内容だ。

自動車物流は単一の輸送ではない。部品を仕入れる調達物流は、多段のティアを持つ多数の仕入先から部品を集める。完成車物流はキャリアカーという専用機材を要し、目的地で車を降ろせば帰り便に積み荷がない非効率を抱える。このほか用品、補修品の物流、輸出入に伴う物流があり、それぞれ性格が異なる。部品調達は日々の波動が比較的小さい計画的な物流で、完成車や補修品は顧客の需要に近く波動の幅がある。性格の異なる複数の物流を同じ産業のなかで回してきた点に、自動車物流の特徴がある。

これまで実現会議の業界別WGは、加工食品や日用雑貨を扱う「スーパーマーケット等」WGに始まり、百貨店、建材・住宅設備、化学品、医薬品、家電の順で設けられてきた。いずれも物流費を商品価格に含め、輸送を運送会社に委ねてきた分野が中心だった。経産省は従来、日本企業に物流を単なるコストとみなし経営戦略の中心に据えない傾向があると指摘してきた。トヨタ生産方式に代表されるように、ロジスティクスを経営に組み込んできた自動車業界は、こうした荷主とは立つ位置が異なる。自動車業界の参加により、実現会議の議論は業種別の商慣行是正や標準化に加え、複雑な実物流の設計論にも及ぶ。

完成車物流の帰り便から着手

自工会が当面の対象とするのは、工場から販売店へ新車を運ぶ完成車物流だ。工場から販売店へ向かうキャリアカーは新車を積んで走るが、車両を降ろした後の帰り道は空車になりやすい。自工会はこの帰り便の活用に着手する。別メーカーの車両や補給部品の積載、地域内での中古車や輸入車の組み込みなどを検討し、積載率を高める。すでにいすゞの帰り便でトヨタの補給品を運ぶ取り組みが、25メートル級の連結トレーラーを使って進んでいる。専用機材を使う完成車物流から始め、汎用機材を使う用品、補修品の物流など他業界と近い領域で事例を積み重ね、業界間連携へ広げる考えだ。準備の整ったメーカーから順に帰り便の活用を始める。

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工程も示した。6月に始動した共同物流推進タスクフォースを軸に、8月末を目標に成立性の検証を終え、9月末までにアクションプランを固める。28年からは完成車物流を起点に業界内の共同物流を順次立ち上げる方針だ。タスクフォースには、トヨタ、日産自動車、本田技研工業、いすゞ自動車、スズキ、SUBARU、マツダ、三菱自動車工業、ダイハツ工業、日野自動車、三菱ふそうトラック・バス、UDトラックスに、二輪のヤマハ発動機、カワサキモータースを加えた14社が参加する。

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質疑では目標設定のあり方が論点となった。委員から、外せない到達点を成果指標として定めるべきだとの指摘が出たのに対し、トヨタ側は帰り便の7割前後が空いている現状を挙げ、9月末を区切りに「ありたい姿」を固めると応じた。

業界横断連携を支える共同配送・データ基盤

この日の各発表も、自工会の提案と重なる論点を含んでいた。共同配送、データ標準化、費用配分、CO2可視化、住所情報の共通キー化など、業界横断の物流を実装するための部品が並んだ。

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JPICは、フィジカルインターネットの成熟度を評価するモデル「PIMM」の構築を報告した。取り組みが到達度のどの段階にあるかを客観的に測る指標を整え、企業や業界が自らの位置を確かめられるようにする。

奥住氏(JPIC)

花王と三菱食品が幹事を務める支線共同配送コンソーシアム「CODE」について、花王の田坂氏が発足を紹介した。物流拠点から店舗への近中距離の配送は、配送条件のばらつきが多く、幹線輸送に比べて共同化の検討が進みにくい領域だった。CODEには食品、日用品、医薬品、出版の9社が参画し、データを突き合わせて共同配送の相手を見つける仕組みを構築する。CODEは、自工会が求める業界間連携の先行事例として位置づけられる。

田坂氏(花王)

日本郵便は、住所を7桁の英数字に変換するデジタルアドレスを説明した。住所を起点に物流、行政、金融、小売などの情報をつなぐ共通キーとして位置づけ、産業・行政・学術が共創するコンソーシアム型で普及を進める。

西郷氏(日本郵便)

伊藤忠テクノソリューションズは、公平性とデータセキュリティを担保した共同配送支援オペレーションを報告した。複数の荷主の商流、物流のメッセージを標準化してつなぎ、最適な共同配送の相手を見つけ、日々の輸送を回し、費用とCO2を公平に按分する仕組みだ。費用の按分方法を問われ、同社は「タクシーの割り勘の考え方」と説明した。走行距離や積載率、利用区間に応じて公平に分ける進め方だ。費用・CO2の按分は、自工会が今後直面するゲインシェアの論点とも重なる。

長谷川氏(伊藤忠テクノソリューションズ)

味の素は、データプラットフォーム構築を進めるDPC協議会の取り組みと、GS1標準を活用したScope3のCO2算定を紹介した。倉庫や着荷主を含めたサプライチェーン全体で、CO2排出量や積載効率、在庫を可視化し、改善につなげる。燃料使用量の算定根拠を問われ、事業者から提供されたデータに基づくと答えた。

長浜氏(味の素)

佐川急便は、サッポロドラッグストアー、PALTACとの3社協働による店舗納品の効率化を報告した。北海道で、佐川急便の拠点をデポとして使い、長距離の直送を中継輸送へ切り替え、ドライバーの運行時間を2割以上削減した。荷主、着荷主、運送会社の三者調整は、自動車WGでも避けられない実装課題となる。

西氏(佐川急便)

会議の後半では、経済産業省の平林孝之課長がフィジカルインターネット・ロードマップの7月1日改訂案の変更点を説明した。改訂では、CLOの役割や物流・商流データプラットフォーム間の連携、費用・利益のシェアリングルールが今後の論点として並ぶ。自工会の提案は、これらの課題に対し、CLOを実行主体として位置づけるものでもある。質疑では、CLOの記述に、物流統括管理者にサプライチェーン全体の最適化の推進を求める文言を明記すべきだとの指摘や、輸送機器の自動化について30年時点で自動運転トラック1000台を成果指標に加えるべきだとの意見が出た。全日本トラック協会の委員は、労働環境の改善に猶予はないとして、ロードマップが36年を目標とする項目の前倒しを求めた。改訂案は、この日の会議で承認された。

平林氏(経産省)

実装には公正競争と利益配分が課題

自工会の提案が実装に至るには、複数の課題が残る。まず問われるのは、公正競争の確保だ。完成車メーカー同士が物流データを共有する場合、どこまでが協調領域で、どこからが競争上の機微情報にあたるかの線引きが要る。自工会も、公正取引委員会の確認を経てから検証に入り、機微データの取り扱いに対応する段取りを描く。

次に、調整主体の設定が残る。CLO同士が横につながる際、事務局を経済産業省、国土交通省、JPIC、自工会、各業界WGのいずれが担うかは、今後の論点だ。費用と利益の分配も避けられない。帰り便の活用で生じた効率化の効果を、メーカー、輸送会社、販売店、部品会社、着荷主の間でどう分けるか。自工会も、効率化で生まれた利益の配分(ゲインシェア)の考え方を整理する必要があるとみている。改訂後のロードマップでも、プラットフォームの公平性や開放性、費用と利益の配分ルールの形成が論点として挙がっている。さらに、業界特性の違いがある。自動車の物流手法を、商品特性や商慣行の異なる食品、日用品、医薬品などにそのまま横展開できるわけではない。

公正競争、機微情報の扱い、利益配分、調整主体の設定は、いずれもこれから議論される。自工会の提案は、CLOを社内の物流管理にとどめず、業界を越えて物流資源を融通する実行主体へ広げられるかを問うものといえる。次回の第3回会議は7月17日に開かれる。