
記事のなかから多くの読者が「もっと知りたい」とした話題を掘り下げる「インサイト」。今回は「安川電機、フィジカルAIで柔軟物搬送実証」(7月13日掲載)をピックアップしました。LOGISTICS TODAY編集部では今後も読者参加型の編集体制を強化・拡充してまいります。引き続き、読者の皆さまのご協力をお願いします。(編集部)
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話題安川電機とソフトバンクは13日、ソフトバンクが開発を進める「AIデータセンター GPUクラウド」をフィジカルAIの開発基盤として活用し、安川電機のAIロボット「MOTOMAN NEXT」による「柔軟物体ハンドリングシステム」を実証したと発表した。ひもや布、ワイヤーハーネスなどの柔軟物は、従来のロボット制御では安定した取り扱いが難しい領域の一つとされてきた。今回は従来制御とAI(人工知能)の役割を分けた構成とし、AIの学習・評価から実機への反映までをクラウド上で効率化できることも併せて確認した。
柔軟物把持と開発工程の効率化を同時に検証
実証では、形状や配置が作業ごとに変化するワイヤーハーネスを箱に収納するタスクにシステムを適用した。カメラなどから得られる視覚情報と作業指示をもとに、VLA(Vision-Language-Action)を用いて対象物の状態を認識し、ロボットが適切な把持・操作を安定して行えることを確認したという。
システム構成では、従来のロボット制御で安定対応できる動作と、柔軟物の状態認識や把持位置判断などフィジカルAIが有効な動作の役割を分け、フィジカルAIを一つの機能モジュールとして既存のロボットシステムに組み込んだ。
もう一つの実証対象が、開発工程の効率化だ。フィジカルAIを実際のロボットシステムへ適用するには、動作データの収集、AIモデルの学習、シミュレーション評価、実機への適用という一連の工程を効率的に進める環境が必要になる。両社は、ソフトバンクが2026年10月に提供開始を予定する「AIデータセンター GPUクラウド」上の開発支援ツールを活用することで、この工程を格段に効率化し、フィジカルAIの導入を迅速かつ容易に行えることを実証したとしている。
物流応用には速度とコストの検証が必要
今回の実証はワイヤーハーネスを対象としたものだが、柔軟物のハンドリングという課題は物流現場にも共通する。ポリ袋入りの衣料品や軟包装食品、緩衝材、ケーブル類など、置き方によって形状が変化する柔軟物は、物流の庫内作業でも安定した把持が難しく、取り扱いに人手が残りやすい。今回の手法にはこうした工程への応用可能性があるが、袋物や軟包装は中身・摩擦・重心の条件がワイヤーハーネスとは異なるため、横展開には対象物ごとの検証が前提となる。
開発基盤の実証も物流には示唆的だ。荷主や季節によって取扱商品や荷姿が変わる物流センターでは、AIの再学習・再調整の負荷が導入障壁になりやすい。クラウド上で学習・評価を行い、ロボットの動作へ反映する環境を利用できれば、この立ち上げ負荷を下げられる可能性がある。もっとも、開発支援ツールの提供対象や料金体系は明らかになっておらず、どのような商流で利用可能になるかは現時点では判断できない。
処理速度や成功率、コストに加え、未学習の荷姿や配置にも対応できるかといった定量データも示されていない。今回実証した技術を、対象物や荷姿の変化が大きい物流工程へどこまで適用できるかが今後の論点となる。
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