ロジスティクス各国の安全基準や環境規制が複雑化する車載用電池市場において、日本企業が生き残る道は「データ管理基盤の提供」と「技術によるリサイクル市場の支援」にある。KPMGコンサルティング(東京都千代田区)は27日、車載用蓄電池の現状と課題に関するセミナーを開催した。同社プリンシパルの轟木光氏は、電気自動車(EV)への一極集中から用途に応じた電池の使い分けが進む現状を指摘し、規制対応を逆手にとった新たな勝ち筋を提示した。
電池の素材精錬の8割を中国が占め、EVの絶対的な生産量で日本が後れをとる現状では、大量生産で争う路線は現実的ではない。轟木氏は日本の勝ち筋として、市場アクセスとライフサイクル価値を実現するビジネスへの転換を挙げた。複雑な欧州規則や中国の安全基準をクリアするためのデータ管理システムの提供や、高品質な材料技術を生かしたリサイクルの収益化などが鍵となる。国内でのリサイクル量で勝負するのではなく、他国で立ち上がるリサイクル市場を技術でサポートし、付加価値領域で独自の路線を追求する戦略が不可欠だと強調した。
こうした戦略が求められる背景には、各国で異なる規制の壁がある。中国は発火事故を防ぐための物理的安全基準において、世界で最も厳しい水準を敷いている。一方、欧州は電池のライフサイクルをデータで管理する「バッテリーパスポート」を2027年2月から導入する予定だ。CO2排出量やリサイクル率、原材料の出所まで追跡するため、厳格なデータ連携が求められる。
轟木氏が提示したシミュレーションによると、欧州規制への初期対応費用や年間制度運用費用は、三元系の方がLFP(リン酸鉄リチウムイオン)電池より高くなる。しかし、将来のリサイクル時に三元系の回収価値が費用を相殺するため、一定期間以降は総費用面で三元系が有利になる可能性も示された。質疑応答において同氏は、こうした厳格な欧州規則への対応費用が企業負担となり、価格転嫁によって将来的に電池価格が上昇する可能性もあると指摘した。
市場では現在、コストと安全性に優れるLFP電池が技術革新により急速にシェアを拡大している。中国の新エネルギー車(NEV)市場では車齢1年から3年の車両が全体の90%を占めており、導入期の普及が電池の低価格化を後押ししている。物流業界の商用EVを含め、今後はコストや充電要件に合わせて最適な電池を使い分けながら、激変する国際ルールにいかに適応するかが問われている。(菊地靖)
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