ロジスティクス「令和8年熊本地震」の発災を受け、熊本県の災害時物流拠点に指定されている「グランメッセ熊本」(熊本県益城町)で、被災地向け支援物資の受け入れが本格化している。熊本県は29日に集積場を開設し、翌30日から全国各地からの支援物資が順次到着している。

▲グランメッセ熊本に続々と到着するトラック

▲グランメッセ熊本
グランメッセ熊本は、見本市やイベントなどの会場として建設された多目的展示場で、熊本県との協定に基づき、災害発生時には催事を中止して物流拠点として使用することになっている。
施設を構成するA、B、C、Dの4ホールのうち、現在使用できるのはAホールxのみ。B、C、Dホールは地震による屋根の損傷で立ち入りができない状態となっている。

▲輸配送のほか、荷役や仕分けなどを日本通運が担当
稼働しているAホール内でも、地震の影響でスプリンクラー設備から漏れたとみられる水が天井部分にたまるトラブルが発生している。
現場の担当者は「スプリンクラーが作動して上部に水がたまり、中央部分に集まってきている。重みで落下する危険があるため、作業員が立ち入ったり荷物を置いたりしないよう、空のパレットで区画しながら運用している」と語る。支援物資を搬入する車両の受付時間は、毎日8時から18時に設定されている。

▲集積場の事務局。奥では日本通運の担当者が荷役や輸配送の調整に当たる
現地の物流オペレーションを支えるのは、行政と民間事業者の連携だ。熊本県の要請を受けた熊本県トラック協会が車両の確保や輸送体制を調整し、日本通運熊本支店が荷役や仕分けなどの場内業務を担っている。現地で使用するフォークリフトは、陸上貨物運送事業労働災害防止協会(陸災防)が提供した。

▲フォークリフトは陸災防が提供
場内では、搬入トラックからの荷下ろし、配送指示に基づく物資の仕分け、配送指示書の手配、出荷先に応じたトラックへの積み込みを一連の流れとして行っている。
配送には日本通運の自社車両だけでなく、熊本県トラック協会に所属する協力会社の車両も動員されている。車両の手配や管理は電話、紙、Excel(エクセル)を併用して行われており、配送指示の確定状況に応じて、必要な車種や台数を柔軟に調整する必要がある。
同拠点に搬入されているのは、避難者の生活を直接支える日用品や資材が中心。取材当日も朝から10台前後のトラックが到着し、簡易ベッド、飲料水、ブルーシート、土のう袋、下着類、冷感パッドなどの寝具や生活物資が荷下ろしされた。

▲輸配送のほか、荷役や仕分けなどを日本通運が担当
一方、パンやアルファ米などの食料品は、別ルートで避難所や各地域へ直接配送されており、同拠点への搬入は原則として行われていない。現段階では、建物や道路の補修に使用する建設資材なども受け入れ対象外となっている。
現場担当者によると、物資は関東、関西方面から搬入されるケースが多い一方、高速道路の通行止めなどの影響もあり、距離的には近い鹿児島方面など九州南部からの搬入は少ないという。
集積された物資は、各市町村から寄せられるニーズに基づき、主に避難所へ配送されている。今後は避難所に加え、介護施設や医療機関への直接配送も順次拡大していく見込みだ。
物資は主に国のプッシュ型支援として送り届けられており、自衛隊が輸送を受け持つスポットクーラーも同拠点に保管されている。

▲物資はメーカーを問わずカテゴリーごとに仕分けられる
10年前の熊本地震や、その後の球磨川流域の豪雨災害での経験を踏まえ、受け入れや誘導の改善は進んでいるものの、課題は残る。
現場の担当者は「毎回、事前に入ってくる物量の見通しが立てにくい」と明かす。10年前の熊本地震では「うまくさばけない拠点があり、満載のトラックが集中して荷下ろしできず、パンク状態になった」という。
その際、日本通運が物流機能の支援に加わった経緯から、今回も同社が拠点運営に携わることになった。今回は受付や車両誘導の整理が進められているものの、事前に物量を把握する難しさは変わっていない。
道路インフラの寸断に伴う配送遅延も深刻だ。八代市や氷川町方面などの被災地域では道路の隆起や損壊が確認され、大型車が進入できない地域もある。
現場担当者は「朝に通れた道が夕方には通行できなくなることもある。地盤の隆起も激しく、大型車で運べれば早いが、なかなか進入が難しい」と厳しい実情を語る。
大型トラックでの輸送が難しい地域では、小型車への積み替えや迂回ルートの選択を余儀なくされている。また、球磨川沿いにある熊本県管理の防災倉庫も地盤隆起の影響を受けており、物資の積み出しには平常時の2倍以上の時間を要しているという。

▲同施設では国のプッシュ型支援物資を受け入れている。自衛隊が輸送を担うスポットクーラーも保管しているが、荷役や輸配送は自衛隊が行うため、集積場側では輸送を担わない
県の調整ルートとは別に、県外の企業や民間ボランティア団体が直接物資を持ち込むケースも発生している。
現場担当者は「個人や企業単位で直接持ち込まれるケースがあり、どの車両を優先して荷下ろしするか調整が必要になる」と打ち明ける。また、「前日までに配送指示が分かっていれば、必要な車両をピンポイントで手配しやすい」との声もあり、自治体によるニーズ集約と配送指示の早期共有が課題となっている。
被災地の復旧と避難者の生活維持に向け、集積拠点では関係機関が手探りで物資輸送の調整を続けている。
グランメッセ熊本は、熊本空港や九州自動車道の益城熊本空港インターチェンジに近く、物流拠点として交通利便性の高い立地にある。しかしながら、益城町は10年前の熊本地震でも被害を多く受け、道路の寸断が各所に発生した場所でもある。今回も地震の被害を受け、震災で4つあるホールのうち、使用できるのは限られているという状態だ。自然災害は地震だけではないが、こと地震災害時の物流拠点の立地としては今後再検討が必要ではないだろうか。
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