話題長年続く赤字運行の解消と適正な運賃の収受に向け、運転手出身の若き起業家2人がAI(人工知能)を駆使して物流業界の変革に直接挑む。
Ai.SoLink(アイソリンク、群馬県伊勢崎市)の澤宏一郎代表と渋澤燈共同創業者は、大型トラックの運転手から起業し、適正な運賃を弾き出す原価計算シミュレーターを開発した。

▲Ai.SoLinkの澤宏一郎代表
澤氏と渋澤氏は共に27歳で、大型トラックの運転手として長時間に及ぶ勤務を経験した。早朝に群馬を出発し、埼玉で積み込みを行い、東京で荷降ろしをして夕方に終わる日々を送った。
そのなかで2人はAIの可能性に衝撃を受けた。「早くAIをキャッチアップしなければならない」という強い焦りが学習の原動力に変わった。
自身の睡眠時間を惜しみ、トラックの車内や深夜のフードコートでパソコンを開き勉強に没頭した。勤務先の経営陣に対して自ら期限を定め、新部署の設立を直談判する明確な目標を掲げた。提案は実らなかったものの、並外れた努力と経験が2024年の起業に直結した。

▲Ai.SoLinkの渋澤燈共同創業者
アイソリンクが提供する事業は「適正運賃シミュレーター」と「運送採算カルテ」の2本柱だ。シミュレーターは初期導入費用14万円、月額利用料2万7000円から利用でき、原価から損益分岐運賃や適正運賃の目安を算出する。荷主説明用の資料出力も可能だ。運送採算カルテは保有台数に応じて1台あたり月額500円から導入でき、コースや車両ごとの営業利益を見える化する。実際に出力した根拠資料を用い、赤字だった経路で1運行あたり6000円の運賃引き上げに成功し、月額収益を13万2000円改善させた実績を持つ。
自社でのシステム構築が難しい車両50台から300台規模の1次請け運送会社を主要な標的に定めた。グーグルマップで車両台数を確認し、自らの足で運送会社を回る地道な飛び込み営業を展開している。元運転手としての実務経験が現場の共感を呼んでいる。
さらに、メディア出演やつながりでの紹介を通じて窓口担当者や経営者の関心を引き、現在では兵庫や埼玉など他県からの問い合わせが半数を占めるまでに拡大した。
会社をけん引する2人は互いの長所を引き出し合う。澤氏は自らを大雑把で勢いよく突っ込む行動力を持つ反面、実務面が荒削りになると分析した。

一方で渋澤氏が的確かつ細やかに実務をこなし、高い精度で事業を支える。渋澤氏は澤氏に対し「不安を見せずに常に力強く前へ引っ張ってくれる」と全幅の信頼を置く。自身も澤氏に追いつこうと前向きに取り組む日々だ。性格や仕事の進め方の違いを補完し合い、周囲からもベストバランスとの評価を集め、連携して事業を推し進める。
今後は倉庫領域への展開も視野に入れる。運送会社から面積や体積、人員などを掛け合わせた倉庫業務の見積もりシミュレーター開発の要望を多く聞くからだ。倉庫領域への参入を有力な市場と捉え、慎重に検討を進める。
渋澤氏は現在の物流業界に対し、運賃を安く請け負う代わりに荷役作業などの付帯業務を組み込んだ結果、継ぎ接ぎだらけの仕組みになったと指摘する。対症療法の連続で変えづらくなったこの仕組みを一度リセットし、正さなければならないと力説した。
澤氏は運転手時代に過酷な労働環境から友人を業界に誘うのをためらった苦い経験を持つ。「友達に紹介したいと心から感じる魅力的な業界に変えたい」という強い思いが起業の最大の原動力だ。経済的なストレスをなくし自由度を高める夢を描く渋澤氏と共に、20代の若手世代として物流業界を力強くけん引する。
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