国際巨大な人口を抱え、世界の消費市場へと急速に成長するインド。多国籍企業が続々と進出し、物流インフラの高度化が急務となるなか、多言語国家特有の課題や激しい人材流動を、日本の製造業が培った技術と品質が裏から支えている。デジタルピッキング技術で現地化を進め、世界の物流課題に挑むアイオイ・システム(東京都品川区)の取り組みから、日印共創の現在地をひも解く。
サプライチェーンの心臓部へ進化
かつてのインド物流は、自動車産業を中心とした製造拠点の供給網構築が主眼であった。同社は2008年に同市場へ参入し、自動車の組み立て工場などで実績を積んできた。インドを代表する自動車メーカーは、インド全土の工場に同社のデジタルピッキングシステムを導入しており、1つの生産ラインで7種類の車種を混流生産している。扱う部品が増えるほど、正確な部品供給を支える技術への要求は高まる。
吉野豊社長は、現地の成長を肌で感じている。「現地の工場長が日本の自動車メーカー出身のインド人になるなど、品質に対する意識は急速に変化している」と指摘する。

▲アイオイ・システムの吉野豊社長
ECからQCへ、物流負荷を克服
新型コロナウイルス禍以降、現地の物流市場は大きな転換点を迎えた。EC(電子商取引)市場が爆発的に成長し、現在は注文から10−15分で届く超高速配送「QC」(クイックコマース)へと移行している。Blinkit(ブリンキット)をはじめ、Zepto(ゼプト)などのサービスが急成長しているなか、数万の品目を抱える巨大な物流センターをフル稼働させなければならない。圧倒的なスピードと正確性が求められる超高頻度小口配送時代に突入し、物流センター内の作業のデジタル化とインフラ整備は待ったなしの状況だ。
多言語の壁を越える直感操作
インドでは100以上の言語が飛び交い、地域が変われば言葉が全く通じないことも珍しくない。さらに若年層の離職率が高く、物流センター内の作業員の入れ替わりも激しい。こうした環境下で、同社が提供する「光と数字のみで作業を指示する」システムが威力を発揮する。 ハズラ・トゥサル(HAZRA Tushar)海外営業部シニアマネージャー兼、インド法人社長は、現地の課題について「言葉を覚えてから作業するまでの教育時間を、光と数字という世界共通の基準が解決する」と語る。今日入ったばかりの作業員でも、迷わずすぐに正確な作業に取り組める直感的な操作性が高く評価されている。

▲ハズラ・トゥサル氏(出所:アイオイ・システム)
日本基準の品質と手厚い保守
物流センターのシステム停止は、致命的なペナルティに直結する。安価な海外製デバイスが数年で故障し現場を止めるケースがある一方で、日本のハードウエアは10年以上の長期間にわたり安定して稼働する品質を持つ。ハズラ氏は「マイナス30度の過酷な冷凍環境でも安定稼働する当社の技術は他にない」と胸を張る。
日本の自動車メーカーには、1000台以上の無線表示器を導入する予定だ。 現地のトップ企業は、初期の導入費用だけでなく、トータルの投資対効果や「無停止稼働の価値」を重視する。同社は製品の売り切りにとどまらず、現地の代理店を教育・格付けし、24時間体制の保守サービス網も構築した。さらに、インド国内に組立工場を近く新設する計画も進めている。

▲アイオイのグローバル展開(出所:アイオイ・システム)
メイド・イン・インドを逆輸入
完全自動化は投資対効果に見合う企業が限られるため、人と機械が協調する「セミオートメーション」こそが、世界の多くの物流センターにおける最適な解決策となる。同社はこの方針に基づき、インドの代理店NIDO(ニド)が開発した低コストな仕分け機に着目。日本の品質管理ノウハウを注入して改良を重ねた。
中国製に比べ価格競争力のあるインド製機器を日本へ輸入し、国内の深刻な人手不足を救う解決策として展開する構えだ。 ハズラ氏は「日本向けに80項目を改善した機器を11月に輸入し、新たな柱に育てる」と逆輸入の狙いを明かす。吉野社長も「インドの成長を日本の課題解決に還流させる」と意気込む。
日本の技術でインドの物流インフラを底上げし、インドの製品で日本の課題を解決する。この日印の共創が、次世代のグローバルサプライチェーン構築のモデルケースとなろうとしている。(菊地 靖)

▲アイオイ・インドオフィスのスタッフ(出所・アイオイ・スタッフ)
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