行政・団体
フリーランスへの業務委託を巡り、物流業界で法違反を巡る行政上の措置が相次いでいる。公正取引委員会は8月26日、家庭用電気製品の運送などを手掛けるジェイトップ(名古屋市中村区)に対し、フリーランス・事業者間取引適正化等法(フリーランス法)に基づく勧告を行った。続く9月2日には、日本郵便に対しても同法違反を認定して勧告し、同日、総務省も早急な改善措置と実施内容の報告を求める行政指導に踏み切った。集配業務などをフリーランスに委託する物流事業者は少なくない。今回相次いだ措置を「対岸の火事」と見過ごすのではなく、自社の契約実務を点検する契機とすべきだ。(編集委員・刈屋大輔)
相次ぐ勧告の実態
ジェイトップは家電量販大手エディオンの完全子会社で、家電配送や設置工事などを手掛ける。業務を委託した特定受託事業者138者に対する報酬から、金融機関へ実際に支払った振込手数料を超える計48万1031円を差し引いていた。2024年11月1日から25年11月30日までの間、事業者側に責任がないにもかかわらず報酬を減額しており、公取委はフリーランス法第5条が定める報酬減額の禁止に違反したと認定した。同社は26年8月5日までに差し引き額の全額を対象事業者へ支払い済みとしている。
日本郵便については、8月27日の時点では公取委の調査を受けている事実を認めるにとどまっていたが、9月2日、公取委は同社の違反を正式に認定し勧告した。24年11月1日から25年6月30日までの間、特定受託事業者167人に業務を委託した際、業務内容や報酬額、支払期日などの全部または一部を書面や電磁的方法で直ちに明示していなかった。このうち140人については支払期日を定めず、法律上の支払期日とみなされる役務提供日などまでに報酬を支払わなかった。167人の内訳は、郵便物などの配達業務の委託先22人と、一定額を下回る取引などで請求書に基づき代金を支払う「請求書払」に関連する145人。配達業務では、車両への荷物の積み込みや持ち戻り荷物の取り卸しなど、業務内容の一部を契約書などで明示していなかった。
日本郵便は違反の原因について、配達業務では契約書ひな形の記載内容の確認不足、請求書払では社内ルールの内容・表現の分かりにくさや研修・周知の不十分さによるものと説明している。公取委は、取引条件の直ちの明示と法定支払期日までの支払いの徹底に加え、24年11月1日から26年9月2日までの同種・類似取引を点検し、不備があれば是正することや、役員・従業員への研修、社内体制の整備を求めた。同日の総務省による行政指導も、これと軌を一にする内容だ。
トラック運送業界が抱えるリスク
フリーランス法は24年11月に施行され、発注事業者に対し、取引条件の書面などによる明示や報酬の支払期日設定、報酬減額の禁止などを義務付けている。今回の2件は、違反の類型が異なる点に注意が要る。ジェイトップは「報酬減額の禁止」、日本郵便は「取引条件の明示義務」と「支払期日の設定・支払義務」への違反だ。
物流業界では、宅配の最終区間(ラストワンマイル)を個人事業主の配送ドライバーに委託する事業者や、繁忙期の輸送力確保のために業務委託契約を活用する事業者が少なくない。契約書や発注書を交わさず、口頭や慣行で取引条件を伝えてきた現場も残っているとみられる。
さらに見過ごせないのが、振込手数料の扱いを巡る運用解釈の厳格化だ。公取委と厚労省が示す「特定受託事業者に係る取引の適正化等に関する法律の考え方」が25年10月1日に改正され、26年1月1日から適用された。改正後は、1か月以上の業務委託について、事業者との合意の有無にかかわらず、振込手数料を報酬から差し引く行為自体が報酬の減額に該当することになった。悪意なく踏襲してきた慣行が、思わぬかたちで法令違反に直結しかねない。
契約実務の再点検を
今回の2件は、業界大手から中堅事業者までフリーランスへの業務委託が広く行われている物流業界に、共通する課題を映し出している。とりわけ日本郵便の事案は、委託先が167人に上り、書面の明示漏れや支払条件の不備が広範囲に及んだ点で示唆に富む。委託先が多いほど、こうした不備は発生しやすい。
本社が法令遵守の通達を発し、社内規定を整備していても、実際に個人事業主と契約を交わすのは配送センターや営業所など現場の担当者であるケースが多いだろう。多忙な現場では書面の作成や条件明示が後回しにされ、慣行的な支払い方法がそのまま踏襲されている可能性もあるのではないか。日本郵便が違反原因として社内ルールの分かりにくさや研修不足を挙げている点は、本社の意識と現場の実務との間に想定以上の距離が生じ得ることを物語っていよう。
各事業者は、委託契約書に支払期日や振込手数料の負担区分が明記されているか、発注書の発行が現場任せになっていないかなど、実務レベルでの点検を今一度行う必要がある。加えて本社は、通達を出すだけでなく、現場が実際にルール通り運用できているかを定期的に確認する仕組みを持つべきだ。フリーランス法への対応は、もはや一部の事業者や現場任せの問題ではないと言えるだろう。
■「より詳しい情報を知りたい」あるいは「続報を知りたい」場合、下の「もっと知りたい」ボタンを押してください。編集局にてボタンが押された数のみをカウントし、件数の多いものについてはさらに深掘り取材を実施したうえで、詳細記事の掲載を積極的に検討します。
※本記事の関連情報などをお持ちの場合、編集局直通の下記メールアドレスまでご一報いただければ幸いです。弊社では取材源の秘匿を徹底しています。
LOGISTICS TODAY編集局
メール:support@logi-today.com
LOGISTICS TODAYでは、メール会員向けに、朝刊(平日7時)・夕刊(16時)のニュースメールを配信しています。業界の最新動向に加え、物流に関わる方に役立つイベントや注目のサービス情報もお届けします。
ご登録は無料です。確かな情報を、日々の業務にぜひお役立てください。

































