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データを集めるだけで終わらない、CLO体制で検証する物流改革の実行論

CLOの「丸投げ」を、現場の武器に変える

2026年9月16日 (水)

イベント本誌LOGISTICS TODAYは16日、オンラインイベント「CLOからの“丸投げ”対策会議〜中長期計画を空論で終わらせない、現場発・実効性あるオペレーション構築〜」を開催した。

改正物流効率化法に基づく中長期計画の提出期限が10月末に迫るなか、「荷待ち・荷役時間を可視化してほしい」「積載率を上げる方法を考えてほしい」といった課題が、CLO(物流統括管理者)や経営層から物流部門、3PL、運送会社などへ、そのまま降りてくるケースがある。

イベントでは、こうした状況を単純な「丸投げ批判」で終わらせず、現場が実態をデータとして捉え、それをCLOが社内外との交渉に使える「武器」に変えるには何が必要なのかを議論した。中長期計画の提出後、実際のオペレーションへどう落とし込み、来年7月の定期報告につなげるかが大きなテーマとなった。

登壇したのは、ブレインパッド流通・小売事業部物流戦略Gグループリーダーの池田大介氏、カミナシからプロダクト本部の田辺誠也氏、トラボックス社長の皆川拓也氏、ハコベル執行役員・CPO・TMSソリューション事業部長の宮武晋也氏と同社物流DXシステム本部営業部マネージャーの高橋脩人氏。シェアフルからEP本部物流・ロジスティクス部ゼネラルマネジャーの豊田繁紀氏がVTRで出演した。

CLOは「報告する人」ではなく「交渉する人」

ロジスティクス経営士、物流技術管理士でもあり、大手荷主や卸物流など幅広い知見を持つ池田氏が基調対談で強調したのは、CLOを物流現場のすべてを把握する「スーパーマン」と捉えないことだ。

現場にはWMS(倉庫管理システム)やTMS(輸配送管理システム)、BIなどから多くの数字が集まる。一方、それらが物流センター内部の改善指標にとどまり、販売チャネルや納品条件、生産・調達、顧客との交渉に使える情報になっていないケースも多い。現状を把握しないまま将来像だけを描いても、実行されない計画になりかねない。

池田氏はCLOについて、単に数字を上へ報告する役割ではなく、物流データを材料に社内他部門や顧客、協力会社と「交渉する役職」と位置づけた。現場側にも、数字だけを提出するのではなく、「どの条件を変えれば改善するのか」「誰と交渉してほしいのか」まで示す役割が求められるという。

▲池田氏

「2時間ルール」は仕組みをつないで守る

荷待ち・荷役時間の削減では、1つのシステムを導入するだけでは問題は解決しないことが示された。

ハコベルはトラックバース予約受付システムによって入退場、荷待ち、荷役時間を記録し、予約によって来場の波を平準化する仕組みを説明。いきなり全機能を導入するのではなく、まず受付機能から始めるなど、現場に定着させながら段階的に運用する考え方を示した。

カミナシの田辺氏は、拠点や商材ごとに異なる帳票をデジタル化し、現場の記録を継続的に蓄積する仕組みを紹介。シェアフルの豊田氏は、物量が直前に増えた際のスキマ人材活用について説明した。ただし、突発的に人を集めるだけでは十分ではなく、誰でも対応できる作業への切り分けや事前教育も必要になる。

さらにイベントに協力したMatrixFlowのAI出荷物量予測も紹介された。物量を事前に把握できれば、人員、車両、バースの準備を先回りできる。重要なのは予測精度そのものではなく、その結果を実際の人員配置や配車、荷役計画にどうつなげるかだとの認識が共有された。

予測する、予約する、人をそろえる、記録する。それぞれを個別のDXで終わらせず、一連のオペレーションとしてつなぐことが「1運行2時間以内」を実現する土台となる。

▲(左から)皆川氏、田辺氏、髙橋氏

積載率向上、一社最適の先をどうつくるか

積載効率の議論では、そもそも「積載率」「実車率」といった指標の定義が社内で曖昧なケースがあることも指摘された。重量と容積のどちらが制約になるか、荷姿や車種、軒先条件によっても評価は変わる。まず「何を測るのか」を共通言語にする必要がある。

ハコベルの宮武氏は、商品マスターの重量・容積と車両情報を組み合わせ、配車計画によって輸送モードや車両サイズ、配送ルートを最適化する手法を説明。まず自社物流を組み替え、必要台数や積載率がどこまで改善できるのかをシミュレーションする。

しかし、配送頻度の見直しや往復便活用など、自社内でできる改善を進めても限界は来る。その先に必要になるのが社外との連携だ。

トラボックスの皆川氏は、荷物情報と車両情報をつなぐ求荷求車ネットワークを紹介し、建設業界では鹿島建設と利用者を限定したプラットフォームのPoCにも取り組んでいると説明した。同業他社だけでなく異業種も含めて荷物や輸送力を融通し、混載や共同配送へつなげる考え方だ。

一社だけでは交渉しにくい共同配送も、第三者のプラットフォームが間に入ることで進めやすくなる。自社内の「垂直統合」だけでなく、企業をまたぐ「水平連携」まで踏み込めるかが、次の論点となる。

▲宮武氏(右)

データを出した後こそ、CLOの出番

総括では、「可視化そのものを目的にしない」ことが改めて確認された。

現場に「すべてのデータを出せ」と求めれば、かえって入力や集計の負荷が増し、改革のためのDXが現場を疲弊させることにもなりかねない。経営への影響が大きい指標を絞り、「何を変えるために取るデータなのか」を明確にする必要がある。

池田氏は、現場からCLOに上げるべきものについて、数字の一覧ではなく、「どの拠点・条件を変えるべきか」「誰と交渉してほしいか」「どの投資で、どの程度の効果を見込めるか」まで含めるべきだとした。さらに、来年度に取り組むもの、3年以内に実施するものと優先順位を付け、経営会議で判断できる形にすることが重要だとした。

中長期計画を提出して終わるのではなく、現場が実態を記録し、改善できる範囲と、現場だけでは動かせない条件を切り分ける。そのうえでCLOが営業、生産、顧客、他社との交渉に動く。

「丸投げ」への対策とは、現場がすべてを背負うことではない。CLOにしか動かせない課題を明らかにし、その交渉に必要なデータと具体策を現場から渡すこと。今回の議論は、中長期計画を実行段階へ移すための、現場とCLOの新たな役割分担を浮き彫りにした。

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