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運行管理システム、関心度ランク1位はセイノー情報

2021年10月26日 (火)

話題LOGISTICS TODAY編集部が10月12日から18日にかけて、物流企業や荷主企業を中心とする読者に対して実施した「運行管理」に関する実態ニーズ調査(有効回答数897件、回答率33.1%)では、運行管理・動態管理の機能を持つITサービスの関心度をランキングでまとめた。法定の運行管理業務の効率化だけではなく、物流サービスにおける付加価値を高める機能も求める傾向のあることが分かった。(編集部特別取材班)

物流DX化の中で次々と生まれている運行管理支援システム

物流業界は今、転機を迎えている。2010年代より国民生活へのEC(電子商取引)サービスの浸透が進み、消費スタイルの多様化が広がりつつあった。その流れが決定的になったのが、新型コロナウイルスの感染拡大だった。外出自粛でいわゆる「巣ごもり需要」が高まり、ECによる宅配サービス市場は急速に拡大。こうした商品を取り扱う物流の現場は、物量だけでなく種類も激増して人手不足が一気に露呈した。

こうした状況下で現場業務の効率化を推進する必要が生まれ、その解決策として叫ばれるようになったのが物流DX(デジタルトランスフォーメーション)化の取り組みだ。その動きは運行管理業務においても決して例外ではなく、さまざまな業界に属する企業が強みを生かしたシステムを提供している。運行管理システムを主機能としながらも、他の業務を効率化する要素も含まれたサービスも多く存在する。運行管理はいわば物流業務の要諦であり、ほかの領域とも密接に関連しているからだ。

付加価値への高い期待明らかに

今回の調査では、運行管理や動態管理の機能を持つITシステムに対する考え方について調査した。具体的なITシステムの関心度について調べる前に、運行管理システムの対象とする業務の幅について聞いた。運行管理システムは、その名のとおり運行管理者の担う法定業務の効率化を目的に開発されたものであるが、そこに物流サービスとしての付加価値を期待するかどうか。その点について質問した。

その結果、「法定業務以外の付加価値を提供するための機能があってもよい」との回答が全体の59.6%を占め、「法定業務の効率化に資するものであるべき」とした24.5%を大きく上回った。

【設問12】(略)企業にとって運行管理システムは、法定業務を効率化するだけではなく、物流サービスの付加価値を高めるために導入するケースが増えていくとの予測もあります。これについてどう思いますか。
(1)システムは法定業務の効率化に資するものであるべきだ
(2)法定業務以外の付加価値を提供するための機能があっても良い
(3)わからない

先にも述べたとおり、トラック輸送に代表されるモノを運ぶ業務そのもののオペレーションを担う運行管理は、物流サービスの基盤を成す業務である。言い換えれば、運行管理の効率化は、物流全体の業務を円滑に動かす第一歩と言えるだろう。その文脈で運行管理システムのあり方を考えるならば、法定業務以外の付加価値を提供する存在であるのがむしろ、当然なのかもしれない。

さらに、「法定業務以外の付加価値を提供するための機能があってもよい」との回答者に、期待する価値の内容を聞いたところ、「稼働率管理・輸送品質管理」が65.9%でトップだったが、「配車管理」が63.4%▽「動態管理」が62.4%▽「労務管理・精算管理」が61.0%▽「車両管理」が56.1%と、ほとんど差がなかった。まさに、運行管理があらゆる物流業務の基盤を成しているとの認識を反映した結果ではないだろうか。

【設問13】ITシステムについて、どんな付加価値の提供を期待しますか。(複数選択可)
(1)動態管理
(2)労務管理・精算管理
(3)車両管理
(4)配車管理
(5)稼働率管理・輸送品質管理

関心度1位はセイノー情報「ASPITS」

ほかの付加価値を高めてくれる機能への期待も高い運行管理システム。それでは、各社が提供しているどんなシステムに関心が集まっているのだろうか。ここでは、運行管理・動態管理の機能を持つITサービスで関心のあるものを聞いた回答結果を分析する。

選択肢に挙げた主要な50種類のサービスのうちで最も関心度が高かったのは、セイノー情報サービス「ASPITS」(アスピッツ)で、全体の20.6%が回答した。次いでHacobu「MOVO Fleet」(ムーボ・フリート)が19.4%、富士通「Logifit TM-NexTR」が17.9%——と続いた。

セイノー情報サービスのアスピッツは、輸配送の進捗状況や車両位置情報などを管理する輸配送管理システムとして、業界での知名度も高い。スマートフォンやGPS(全地球測位システム)付携帯電話の位置情報を活用することで、車両管理や配送予定情報をつきあわせることで配送進捗の予定や実績の管理を行うことができる。顧客サービスレベルの向上や配送ルートの効率化、安全運転の是正に効果がある。

HacobuのMOVO Fleetは、「物流業界に特化した動態管理」をキャッチフレーズに、低価格で豊富な機能を提供するとともに、車両管理を効率化して荷主と運送会社の双方のコスト削減を支援するサービスとして導入が進んでいるシステムだ。ほかのシステムとの連動性のよさも特徴で、GPSが搭載されている日野自動車のコネクティッドトラックならば、端末を装着しなくてもMOVO Fleetの機能を利用できるのが象徴的だ。

富士通のLogifitは、SaaS(必要な機能を必要な分だけサービスとして利用できるようにしたソフトウェア)型運行管理システム。これらのITサービスに共通するのは、まさに「付加価値」が高いシステムであること。運行管理や動態管理の機能に主軸を置きながらも、それ以外の作業の支援や効率化を期待できる仕様となっているのが特徴だ。

上位3位以外のITサービスでは、GPSで車両位置情報を得られるブラウザベースのドコマップジャパン「DoCoMAP」(ドコマップ)(15.6%)、安全運行の管理をトータルで支援する日立物流「SSCV-Safety」(セーフティ)と「SSCV-Smart」(スマート)」(15.2%)に注目が集まった。

無数のアプローチがある運行管理はビジネス機会の「宝庫」

運行管理システムのサービス内容で特筆すべきなのは、法定業務の支援方法にも実に多様なアプローチがあるということだ。例えば、日立物流が提供する「SSCV-Safety」は、ドライバーが気づけない疲労やストレスを可視化することで、安全運行を管理するソリューションだ。ドライバーの運行前後や運行中の生体データと、ドライブレコーダーや車両の挙動などから取得した運転データをAI(人工知能)で分析し、独自に開発した事故リスク予測アルゴリズムとテクノロジーを組み合わせることで、こうした機能の開発にこぎ着けた。

ドライバーの安全運転管理は、運行管理の原点であり、物流インフラを維持するうえで欠かせない要素だ。しかしながら、安全運転を管理するための方策は無限に存在するだろう。そこに、IT企業をはじめとする各社がビジネス機会を見出し、得意分野を活用して運行管理システムの開発に競い合いながら取り組むのだ。

健康に起因したドライバーの事故が、全国的に相次いでいる。国土交通省関東運輸局栃木運輸支局は10月19日、管内におけるドライバーの疾病による事故の多発を受けて、栃木県トラック協会に健康管理の徹底を求める異例の通知を行った。運行管理は、こうしたドライバーの「叫び」を察知して事故防止につなげる、物流の担い手として極めて重要な業務だ。それを支援するITサービスもまた、社会インフラである物流を守る取り組みを担っていることを忘れてはならない。その意味で、運行管理システムの進化は、物流の途絶を回避し社会の成長を維持し続ける「原動力」であると理解しておく必要あるだろう。

■TMS特集 -運行管理システム編-