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SBSリコーロジスティクスの課題検証を通して誕生した先進システム

幹線輸送を可視化で効率化、モノフル「積載ナビ」

2021年10月19日 (火)

話題ある輸送拠点に大量の荷物を集めて、さまざまな輸送手段で別の拠点に一気に運ぶ幹線輸送。大都市から地方まで、津々浦々にあらゆるモノが行き渡っているのは、このシステムがあるおかげだ。深夜の高速道路をひた走る大型トラックは、まさにその主役と言えるだろう。

しかし、そんな物流の花形とも言うべき幹線輸送を支える企業には、長年の構造的な課題があるのをご存知だろうか。私たちの毎日の生活を支える、社会に不可欠なインフラを守りたい。これは、ある先進的物流関連ソリューション開発企業が幹線輸送業者とタッグを組んで誕生させた、幹線輸送の課題を解決に導くサービス「積載ナビ」の開発をめぐる物語である。

積載ナビは、幹線輸送事業における積載率や実車率などの情報を可視化することで、運行の適正化を図るだけでなく、空車区画の収益化にもつなげるサービスだ。ここでは、拠点や部署をまたいだ情報連携の難しさに起因したまざまな課題を抱える、幹線輸送における業務効率化を実現するとともに、さらなる収益体制の構築にも貢献する積載ナビを紹介する。(LOGISTICS TODAY編集部)

幹線輸送業界にはびこる「サイロ化」

2020年8月下旬、東京都大田区の沿岸部・京浜島にある倉庫街の一角。SBSリコーロジスティクス(東京都墨田区)の物流センターの会議室で、ある相談が始まっていた。「幹線輸送を変えたい」「事業環境の変化に対応できる仕組みを作るべきだ」「まずは仕事の『見える化』ですよ」。悩みの相談に応じているのは、物流施設開発を手がける日本GLPグループのモノフル(東京都港区)の担当者だ。

▲幹線輸送業界の課題について語る菊地さん

SBSリコーロジスティクスは、事務機器メーカーの物流子会社から、2018年8月に総合物流企業のSBSグループの一員になった。3PL事業を柱に幹線輸送を担っているが、同業他社と共通の悩みを抱えていた。

「いわゆる『サイロ化』です」。SBSリコーロジスティクスの国内営業本部首都圏運送事業部・東京輸配送支店の菊地明・輸配送二課長は、自社を含めた幹線輸送業界が抱える共通の課題について、こう語る。「管轄地域や部署をまたいだ情報連携が難しい体制。このままでは事業環境の変化に対応できないという危機感が業界全体にあったのです」

「遠い最適化」「新事業参入」へ募る危機感

例えばトラックの運行コース。拠点間を結ぶルートや荷物の種類、積載率などの詳細なデータが共有されないことから、採算性など業務の最適化が困難な状態になっていた。そのため、積載率をはじめとする業務改善を考えるうえで必要な情報をなかなか把握できない環境になっていた。

「一方で、SBSグループはラストワンマイルに事業を広げる方針を掲げており、その対応も迫られていました。我々からすれば新事業への参入です。このままではどうしようもないと、解決に向けて動き出したのです」(菊地さん)。実は以前から、社内にプロジェクトチームを作って改善策を考える機運もあったという。しかし、各エリアや組織単位では課題を抽出して最適化を図っても、全社レベルでの課題の明示や最適化が出来ていなかったのだ。

「見える化」で連携、目指すは「汎用性」のあるプラットフォーム

京浜島の会議室。SBSリコーロジスティクスの経営企画本部ロジスティクステクノロジーセンターの角川誠・LT推進二課長は、かつてバース管理システム導入検討の際に取引をして以来、交流を続けてきたモノフルの武田優人・セールスマーケティングゼネラルマネージャーを招き、幹線輸送の「見える化」について相談していた。ラストワンマイルへの参入も意識しながら、事業部採算の改善と拠点最適を進めるにあたって、システムを改善する必要がある。原価や利益配分のあり方など、新たな課題が次々と噴出してくる。

▲「システム改善で幹線輸送の課題を変える」と意気込む角川さん

「課題解決について相談するのであれば、スピード感があって、『変えていこうぜ』というベンチャー気質のある相手とやりたい」「輸配送の最適化から一歩踏み出して、幹線輸送に関わるビジネスを生み出せるチャンスになる」。角川さんと武田さんの意向は、互いに「幹線輸送の見える化による改善」という点で一致。「やってみましょう」。モノフルとSBSリコーロジスティクスが”連携”して新サービス創出に動き出した瞬間だった。

「双方で一致したのが、『汎用性のあるシステムにしよう』ということでした。社内はもちろん、社外にも共有できるプラットフォームにして、他のシステムも盛り込めるようにしなければ、幹線輸送業界をよくする仕組みは作れないよ、と」。菊地さんと角川さんは、あくまで可視化による汎用性の高いプラットフォームで、物流業界全体のサイロ化を打破しようとしていた。そこに武田さんはビジネス機会を見出す。「もはやオーダーメードの提案では広がらない。作るべきなのはインフラ。オープンなシステムなんだ」

「バケツ」プロジェクトが生んだ「積載ナビ」

武田さんは、抽出した課題やテーマを「バケツ」に入れてかき混ぜて、それを拠点や本社、営業担当などさまざまな視点から確認し分析することで、プラットフォームの全体像を浮き上がらせたいと考えていた。特定の属性の担当者だけで作り上げた仕組みは、異なる立場の人間にとっては課題解決につながらない可能性もあるからだ。「我々のプロジェクト名も『バケツ』にしました。それを実現したかったからです」(武田さん)

それからおよそ1年。ほぼ毎週のように会議を繰り返して議論を深めた末に、一つのプラットフォームが誕生した。

運行一覧サービス「積載ナビ」。モノフルは、SBSリコーロジスティクスの幹線ネットワーク再構築という課題について、両社で知恵を出し合いながら解決に取り組むスタンスで、「積載ナビ」のコンセプトの構築とその実証を進めることとした。モノフルは、積載ナビを幹線輸送便の可視化と手配状況の共有を行うサービスと位置づけるとともに、「日々手配している輸配送について、積載率・実車率を『見える化』することで、運行の『適正化』だけでなく空車区画の『収益化』を支援する」とのコンセプトを掲げた。

▲「積載ナビ」のメイン画面。拠点や運行計画などの情報を可視化して一覧できる(クリックで拡大)

モノフルは、積載ナビの導入メリットを、「課題の可視化」「既存インフラを活用した営業活動や収益化」「計画出荷に基づく空き区画の有効活用」の3点にまとめた。現在の運行便数や積載率データの収集と定量分析により本質的な課題を導き出すとともに、経営者へのレポート作成時間の短縮につなげる。また、既に走っている幹線輸送便の積載率を把握し営業担当に共有することで、効率的な外販営業を推進するほか、他拠点やグループ間で閲覧権限を付与することで双方のインフラを有効活用することが可能になる。さらに、出荷量を予測できる工場出荷においては、計画値を積載ナビを使って取り込むことで、当日の積載率を予測でき、空きスペースへ自社の別の荷物や同じ納品先への荷物のマッチングも可能になる。

▲「積載ナビ」の地図表示画面。ルート物量を可視化できる(クリックで拡大)

あくまで企業の「収益」のために

▲幹線輸送企業のメリットを追求した「積載ナビ」の機能を説明する武田さん

「積載ナビの構築でこだわったポイントは、あくまで幹線輸送を担う企業のKPI(重要業績評価指標)や売上、利益を伸ばすことを目的としていることです」。武田さんは、現場業務の改善につながるサービスを提供することで、会社の収益の創出に直結する結果を生み出したいと考えている。結果として、企業の持続的成長を果たし、幹線輸送の品質はさらに向上して社会インフラとしての機能をより高める「好循環」を生み出す装置になることを目指しているからだ。

SBSリコーロジスティクスの菊地さんも「幹線輸送を含めた物流業界全体の省人化・省力化が加速する今後、積載ナビというプラットフォームの誕生は大きな意義がある取り組みだ」と評価する。現実に、SBSリコーロジスティクスはモノフルと協議を重ねたこの1年で、営業や現場、管理の各部門の視点で、コストや積載率の可視化により、輸送コースの組み替えなどの効率化を実現。具体的な課題解決に結びついたことで、自身の課題認識は間違っていなかったと感じている。今後は、可視化された課題をさらに深く掘り下げることで、共同配送や自動配車など新たな構想を練っている。

モノフルが今後、本格展開を進めていく「積載ナビ」。それは、SBSリコーロジスティクスの幹線輸送現場の「声」を反映して生まれた、極めて実効性の高い課題解決型プラットフォームとして、物流の未来を切り拓く存在になるに違いない。

▲「積載ナビ」では、運行便のルートとともに積載率や実車率を表示する機能を設けた(クリックで拡大)

積載ナビ専用問い合わせフォーム/株式会社モノフル

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