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IHI、海上物流効率化へ船舶位置の衛星受信実証

2022年2月28日 (月)

(出所:IHI)

調査・データIHIとSpace BD(スペースビーディー、東京都中央区)は28日、超小型衛星「IHI-SAT」が、ISS(国際宇宙ステーション)に向けた打ち上げに成功したと発表した。IHIが開発しSpace BDが打ち上げに関する全てのサポートを提供。船舶位置情報の受信システムの機能をIHI-SATで実証することで、海上における船舶の衝突回避による安全で効率的な海運ビジネスの実現に一役買う取り組みとして、注目を集めそうだ。

このたび打ち上げられたIHI-SATは、2月20日2時40分(日本時間)にアメリカ航空宇宙局(NASA)ワロップス飛行施設・中部大西洋地域宇宙基地(米国バージニア州ワロップス島)から、アンタレスロケットにより打ち上げられたNorthrop Grumman(ノースロップ・グラマン)のシグナス補給船に搭載された。IHI-SATはシグナス補給船でISSに輸送後、日本実験棟「きぼう」から超小型衛星放出機構「J-SSOD」によって、宇宙空間へ放出され、1年間の運用を予定している。

▲IHI-SAT外観(出所:IHI)

国際物流の90%以上を占める海上輸送では、衝突防止のため現在位置や速度情報などの信号を周辺の船舶や陸上局に送信するAIS(自動船舶識別装置)の搭載が、一定の基準を満たす船舶に義務付けられている。IHIグループは海上物流の効率化などのニーズに応えるため、AIS衛星による船舶位置情報データのプロバイダーと提携した船舶位置情報サービスを提供してきた。

このたびIHIが開発したIHI-SATは、3U(10センチ×10センチ×34センチ)サイズで船舶の発信するAIS信号を宇宙空間で受信するシステムを搭載しており、その機能実証が主なミッションだ。AIS受信システムは多数の船舶が発信する信号を高精度にデジタル化し、個別の船舶信号に分離・識別することが可能で、混雑した海域でも船舶の動きを把握できるのが特徴だ。宇宙空間で衛星機器の不具合が発生した際に、自己診断など複数の復旧手段でミッションを継続できる。

IHIとSpace BDは今回のIHI-SAT打ち上げ成功を契機として、宇宙ビジネスの民間事業者としての技術力と知見を結集させるとともに、さらに多くの企業の宇宙産業への参加を促すことで、社会の課題解決につなげていく。