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話題WMSの開発事業者が必ずしも、物流倉庫の現場課題に精通しているかと言えば、決してそうではない。まずはその現場の事情を理解しておかなければならないが、現場で生じている問題にいくら明るくてもソフトウェアの開発力がなければ、その解決に導く具体的な方策を提示できないことになってしまう。
こうした「矛盾」を解消できる事業者が存在するなら、WMS業界で存在感を高めていくのは間違いない。それが、関西を拠点に倉庫を含めて幅広く物流事業を展開する関通（兵庫県尼崎市）だ。
▲関西主管センター外観
現場改善の成果を具体的に「数値化」できる強み
同社がWMS「クラウドトーマス」の提供を開始したのは、2019年のこと。新型コロナウイルスの感染拡大を背景にECサービスが本格的な拡大基調に入り、全国で先進的な物流倉庫が林立し始めたころだ。いわば、コロナ禍によって物流に異次元の変革の波が押し寄せようとしていたタイミングと一致する。
▲専務取締役 松岡正剛氏
「物流現場の生産性を高めることこそが、クラウドトーマスを提供する最大の目的」と強調するのは、松岡正剛･専務取締役だ。松岡氏からの説明を受け、記者は「1800超のアカウント契約実績を武器に、いわば物流業界で具体的な成果を上げているプロフェッショナルが”成果の出る物流改善策”を、説得力のある形で提示したもの」という印象を受けた。
クラウドトーマスを導入した通信販売や卸などの物流事業者が関通に寄せたフィードバックには「在庫を1億円から4000万円に6割削減できました」「現場の生産性を全体で10％上げることができました」といった、具体的な成果が現場の声として寄せられ、EC・卸を問わず、また商品・業種を問わずに広く支持されていることに驚かされる。
「在庫差異や生産性、納期遅れや出荷ミスによる顧客からのクレームなど倉庫現場が抱える悩みに対して、具体的な成果を示しながらクラウドトーマスを提案する。それが導入時における納得感の高さにつながり、結果として現場改善にも貢献すると考えています」（松岡氏）。現場における業務改善の数値化は、そもそもシステムの提供側が実経験に基づく「肌感覚」を備えていない限りは、絶対に提示できない。それこそが物流事業者の手によるWMSだからこそ実現できる強みであろう。
いま必要な物流を知る関通が作り、現場で使い込まれているWMSを訴求
同社の急成長は目覚ましいものがある。2021年2月期の売上高64億円から直近の23年2月期には105億円と、「コロナ禍のど真ん中」に当たる4年間で実に64%もの増収を達成した。原動力となったのは、EC事業者に対する物流サービスの提供だ。彼らは「今の日本社会でどのような物流サービスが求められているか」を知っている。
その関通が、自ら武器として作り上げたのが、クラウドトーマスである。「急成長する物流企業（関通）が作り、現場で使い込まれているWMS」。同社はクラウドトーマスの訴求ポイントをこう表現する。ECをはじめとする「BtoC」（企業と消費者間の商取引）から卸や店舗といった「BtoB」（企業間の商取引）まで幅広い業種・業態での導入実績が、それを裏付けている。
こうした訴求力の高さは、クラウドトーマスのラインアップにも表れている。同社はクラウドトーマスを中小規模案件向けと位置付けるとともに、大規模案件向けとして「クラウドトーマスPro（プロ）」を新設。現場スタッフ15人を境目に、中小規模案件と大規模案件に分ける。
「倉庫現場におけるロボットやマテリアルハンドリング機器との連携や、ハンディ―ターミナルの活用など、より複雑な現場改善策を講じるためのカスタマイズ機能を含めたのが『プロ』です」（松岡氏）。物流機能の改善だけでなく、さらなる高度化を推進する顧客ニーズにも対応する。
▲倉庫内の物流ロボティクスとの連携
さらに、関通はほかの物流ロボティクス機器やシステムと、互いに情報をやりとりするのに使用するインタフェースの仕様であるAPI連携も積極的に展開。クラウドトーマスプロについては独自APIを公開するなど、外部リソースとの連携を容易にすることで現場改善の精度やスピードをさらに高める取り組みだ。
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WMSを単体で提供するのではなく、多彩な物流サービスの一環として訴求する関通。物流事業者として倉庫現場の問題認識とその改善効果を具体的に評価できるノウハウが蓄積されているからこそ、独自の思想を持ったWMSの提供サービスが実現できるのだ。WMSがさらに進化を遂げる将来、ITシステムベンダーとは一味違った発想に基づくシステムの構築の可能性を、関通は強く印象付けている。
