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日本GLP、冷凍冷蔵事業の足どりと、その到達点となる大型マルチテナント型施設

冷凍冷蔵物流施設開発の集大成、GLP川崎II

2024年6月13日 (木)

話題「日本GLPの冷凍冷蔵物流施設開発の取り組みの1つの集大成」

日本GLPの営業開発部シニアマネージャー草原洵也氏は、「GLP川崎II」をこう位置付ける。同社が冷凍冷蔵物流施設事業に参入後、これまで積み上げてきた知見やノウハウの全てを投入した施設としての自信がうかがえる。

特筆すべきは、GLP川崎IIが「常温」「冷凍冷蔵」を合わせた日本最大級のマルチテナント型3温度帯対応の物流施設であること。冷凍冷蔵物流施設の要衝である巨大消費地の港湾エリアでの巨大冷凍冷蔵対応の施設開発だけに、低温物流市場全体に与えるインパクトも大きい。

▲「GLP川崎II」外観イメージ

同施設は、延床面積20万5000平方メートル(17万6000トン)規模の巨大マルチテナント型物流施設として2027年8月末竣工を目指す。開発地は、首都高速線の浜川崎インターチェンジ(IC)まで1.5キロと、東京都心、横浜へのアクセスに優れる倉庫集積地、川崎湾岸の希少な新規用地であり、東京・横浜の巨大商圏を配送エリアとし、直線距離で羽田空港まで6.9キロ、川崎港コンテナターミナルまで4キロという物流戦略の重要地、冷凍冷蔵において関東の要となる川崎に立地。目の前(徒歩1分)にはJR鶴見線・昭和駅があり、鶴見駅や川崎駅からバスでのアクセスにも便利な場所であり、雇用の確保でも有利な立地である。

▲広域図(クリックして拡大)

川崎湾岸に巨大マルチ型冷凍冷蔵物流施設開発の圧倒的インパクト

「民間の供給施設としては日本最大級の賃貸型冷凍冷蔵物流施設となるのではないか。各階アクセス可能なダブルランプウェイと、中央車路を採用して機動性を重視。生産性と保管能力の両立をギリギリまで追求した、垂直搬送が必要ない1フロアでの運用が可能で、拡大する食品EC(電子商取引)ニーズや、周辺の冷凍冷蔵需要に対応する。また、豊富なトラックバースを確保していることで、荷待ち・荷役時間の削減にも貢献できるキャパシティーを備えている」(草原氏)

▲日本GLPの営業開発部シニアマネージャー草原洵也氏

日本GLPはすでに、同社初の全館冷凍冷蔵仕様(全館可変温度帯)のマルチテナント型賃貸施設「GLP神戸住吉浜」(神戸市東灘区)を、延床面積4万5000平方メートル(5万2000トン)の5階建て施設として開発しており、25年2月末の竣工を予定している。マルチテナント型の冷凍冷蔵物流施設供給による市場の活性化を目指す旗艦施設として注目され、すでに完成前から大半の区画が成約済みとなっている状況だ。GLP川崎IIは、この神戸住吉浜の4倍以上の大スケールでのプロジェクトとなり、集大成という呼び方も決して大袈裟ではない。

「GLP神戸住吉浜は、冷凍冷蔵市場の細かい要望を拾い上げ、あらゆる規模の事業者にも流通と保管どちらのニーズにもバランスよく対応できる汎用性を示し、マルチテナント型冷凍冷蔵物流施設を賃貸で利用するメリットを具体化した施設。川崎IIではさらに踏み込み、これまでの開発で未達成だった事項を全て投入し、新たな冷凍冷蔵物流施設を目指す」(草原氏)

▲「GLP神戸住吉浜」外観イメージ

「GLP川崎II」に到達するまでの、冷凍冷蔵物流施設開発の道のり

川崎IIを冷凍冷蔵物流施設の取り組みの集大成と位置付けるにあたり、これまでの同社の開発取り組みを振り返る必要がある。

草原氏は、「冷凍冷蔵庫における業界課題の洗い出しが、冷凍冷蔵物流施設事業化の出発点」と語る。

これまでの冷凍冷蔵物流施設は、食品加工業や冷凍専門の倉庫会社、物流事業者の自社倉庫として開発されたものが主で、特殊仕様のため汎用化が困難であり、マルチテナント型での開発も難しい領域であった。

現在の食品EC(電子商取引)化率は4.16%とまだ低い数字だが、今後の伸長が予想されている市場である。しかしながら、その需要に応える冷凍冷蔵物流施設の供給は少ない。また、既存の冷凍冷蔵倉庫は、30〜40年以上の老朽化したものも多く、建て替えが急務であり、フロン規制への対応、建築用地不足、建築資材の高騰がリスクとなり、新規建設や既存商材の逃げ先さえない状況だ。施設には特殊性や個別性が要求され、汎用化が難しく、初期設備費用投資や原状回復工事費用、設備管理費も、賃貸型供給の参入障壁となり、倉庫不足が顕在化している。

「冷凍冷蔵物流施設市場の課題解決は、日本GLPだからこそ対峙、解決すべき取り組みと認識してきた。まずは絶対数の少ない冷凍冷蔵物流施設を積極的に供給し、既存の冷凍倉庫会社や冷凍冷蔵物流会社、さらに新規参入する事業者にも柔軟性のある施設を提供しながら、ただ保管場所だけでなく、新しい協働の場となる冷凍冷蔵物流施設をマルチ型で供給することを目指した。(草原氏)

同社の冷凍冷蔵物流施設事業の道のりは、必要な面積を可変温度帯で、常温施設と同等の契約期間で用意し、カスタマー側での冷凍冷蔵設備の初期導入、原状回復費用の負担や設備管理費を必要としない施設作りの道のりであり、その到達点としたのがマルチテナント型施設の供給であった。

▲日本GLPが開発する冷凍冷蔵倉庫の特長(クリックで拡大)

「冷凍冷蔵物流施設の開発には、後付け型、BTS型、最後にマルチ型と、3つのバリエーションを段階を追って開発し、標準的な冷凍冷蔵物流施設の知見を蓄えてきた。まずは既存のマルチ物件施設内の一部区画を改築して冷凍冷蔵対応設備を設置する後付け型の開発、さらにカスタマーのニーズに対応したボックス型のBTS開発を展開し、冷凍冷蔵の多様なニーズなどの知見を深めながら、開発力、課題対応力も強化してきた」(草原氏)

▲GLP ALFALINK相模原の外観

後付け型としての施設提供では、GLP ALFALINK(アルファリンク)相模原やGLP ALFALINK流山に代表されるマルチテナント型物流施設の一部において冷凍冷蔵設備を設置することで3温度帯に対応した流通型の物流施設という選択肢を形にした。一方、冷凍冷蔵においてより保管効率を重視する要望など個別の需要に対応するため、冷凍冷蔵専用BTS型施設となるGLP常総IIを22年に竣工し、後付け型では対応しきれない個別スペックの開発力も磨き上げられた。

さらに、冷凍冷蔵市場の参入機会を拡大できる最終段階として開発されたのがGLP神戸住吉浜であり、「冷凍冷蔵物流施設開発の最終ステップとなるマルチテナント型による施設開発として、後付け型、BTS型で積み上げたノウハウを集約した施設」(草原氏)と語る。

成約率の高さからも明らかなGLP神戸住吉浜の反響の大きさが、これまでの同社の戦略、方向性に間違いがなかったことの証明ともなっているが、川崎IIで目指したのは、さらにその一歩先だ。

GLPの冷凍冷蔵物流施設開発の道のりは、さらに一歩前へ進む

「各階にアクセス可能なダブルランプウェイは、神戸住吉浜でも採用できなかったもので、広大な1フロアでの機動性の高いオペレーションを実現可能。また、中央車路の採用で豊富なトラックバースと、柔軟な温度帯設定に対応できる多様な区画分割の実現も、これまでの経験から冷凍冷蔵物流施設で新しく取り組んだもの」だと草原氏は言う。

また、神戸住吉浜では採用しなかった、冷凍冷蔵と常温倉庫を併用したいという小売事業者などのニーズも川崎IIには反映し、一部区画を常温の区画とするなど、冷凍冷蔵物流施設開発で積み重ねられてきた要望や、経験をすべて開発に盛り込んだ仕様となっている。これまでに得た知見を基に、天井高や床荷重などの多様なニーズを最大公約として集約し、「マルチテナント型冷凍冷蔵設備としての標準」を提示して、今後の市場活性化を促す施設とも言える。

これほどの大型冷凍冷蔵物流施設を市場に投入することには、同社がアルファリンクで育んだ、テナント同士での共創や協働の場となることも想定されている。「冷凍冷蔵では、食品など類似の商品を扱ったり、入荷先や納品先も似ているなど、共創や協働を育みやすい場と考えている。川崎IIでは、常温倉庫以上に、共同配送などテナント同士の連携も、積極的に進められることも期待したい」(草原氏)

GLPは「冷凍冷蔵領域の総合窓口」を目指す

大手デベロッパーとして賃貸型冷凍冷蔵物流施設の市場をけん引する同社は、ドライにおいてはGLPコンシェルジュという物流に関わるあらゆる事業者の協力体制を構築してきたが、冷凍冷蔵においてもありとあらゆる困り事や悩み事に応える体制作りまでを整える予定。保管場所の確保、車両手配や配送など、冷凍冷蔵ならではの特殊な要件をGLPがハブとなって、協力企業同士をつなぐことができる体制が構築できることも、同社の冷凍冷蔵物流施設ならではの大きなメリットと言える。冷凍冷蔵の領域では、どこに問い合わせをすれば良いかもわからないといった状況。「この領域のことならGLPに聞けば大丈夫、そんな存在として冷凍冷蔵物流の窓口となり市場を活性化することが目標」(草原氏)と語る。

拠点運営をサポートする「GLPコンシェルジュ」のサービス概要(クリックで拡大)

17年の冷凍冷蔵事業化以降の年平均成長率で24%という急ピッチで冷凍冷蔵倉庫を供給してきた同社。その集大成となるGLP川崎IIは、マルチテナント型冷凍冷蔵物流施設の概念も大きく変える施設の誕生として、冷凍冷蔵物流にとっての大きなエポックとして記憶されるだろう。

「GLP川崎II」概要
所在地:神奈川県川崎市川崎区扇町
敷地⾯積:8万2000平方メートル
延床面積:20万5000平方メートル
構造:地上5階建て、PC造、免震構造
アクセス:首都高速横羽線・浜川崎ICから1.8キロ、JR京浜東北線・川崎駅からバスで17分
着工:2025年3月(予定)
竣工:2027年8月末(予定)

▲周辺図(クリックで拡大)