ロジスティクス中小運送会社の資金繰りが限界に近づいている。だが貨物は消えない。運ぶ会社が減っても、運ぶべき荷物の量は変わらない。最終的に誰が運ぶのか。現実的に担えるのは大手運送会社と3PLに限られる。全日本トラック協会の経営分析報告書(令和5年度決算版)によると、101台以上の大手の傭車費は年間1億4116万円、営業収益の8.6%を占める。下請けなしでは回らない。その下請けの半数が危機前から営業赤字だ。傭車先が事業を続けられなくなった時に何が起きるか。そしてその先に、大手にしかできない役割がある。(編集長・赤澤裕介)
本誌は前稿で、20台以下の運送事業者が業界の6割を占め、平均値ベースで軽油180円では赤字圏に入ることを報じた。金融庁が緊急要請に動き、地方銀行は特別融資に走っている。だが融資は時間を買うだけだ。補助金の財源も厚くない。条件次第では半年以内に資金が尽きるケースも出る。
大手にとって、この数字は他人事ではない。全ト協令和5年度データの規模別傭車費を見れば、大手がどれだけ下請けに依存しているかが分かる。

▲規模別にみた傭車費と収益依存度(令和5年度)
101台以上の傭車費1億4116万円は、自社のトラックだけでは運びきれない貨物を外部に委託している金額だ。傭車先の多くは20台以下の中小だ。その中小が事業を畳めば、大手の配送網に穴が開く。
穴が開いた時、選択肢は3つしかない。
(1)代替の傭車先を探す。だが業界全体で中小が縮小する局面では、空いている車両自体が減る。同じ貨物を奪い合う競合も同じ状況にある。代替先の確保は早い者勝ちになる。
(2)自社で吸収する。車両と人員を増やして内製化する。だがドライバー不足は解消していない。帝国データバンクの調査では運輸・倉庫業の正社員不足企業は66.4%だ。急に人を増やせる状況にはない。
(3)経営が立ち行かなくなった中小を取り込む。経営は厳しいが車両、ドライバー、荷主との取引関係は残っている中小を、M&Aや事業承継で吸収する。フジトランスポートはすでに承継公募という形でこれを実行している。
3つ目が最も現実的であり、大手にしかできない選択肢だ。中小の資金繰りが詰まるということは、裏返せば事業資産(車両、ドライバー、荷主ネットワーク)が市場に出るということでもある。資金力のある大手が、経営は立ち行かないが現場は動いている中小を取り込めば、輸送能力の総量を維持しながら業界を再編できる。
再編の主導権は待っていても来ない
ただし、この再編は自然には起きない。中小が倒れてから動いたのでは遅い。ドライバーは散逸し、車両はリース会社に返却され、荷主は別の会社に切り替わる。事業資産が散り始めてからでは、取り込む対象そのものがなくなる。
大手と3PLが今やるべきことは3つある。
(1)傭車先の資金繰り状況を把握する。本誌が前稿で示した「軽油180円で何か月持つか」の計算を、自社の傭車先に当てはめる。月商、手元資金、軽油の調達価格を聞けば、残り時間は推定できる。聞けない関係なら、そこから見直すべきだ。
(2)支払いサイトを短縮する。本誌が荷主向けに報じた通り、サイトを30日縮めるだけで傭車先の資金枯渇を17か月延ばせる。大手が元請として荷主と60日で契約しているなら、下請けへの支払いを30日に前倒しするだけでいい。自社のキャッシュフローに一時的な負荷はかかるが、傭車先を失うコストに比べれば小さい。
(3)事業承継の候補リストを作る。経営者の高齢化、後継者不在、資金繰り悪化。この3つが重なっている傭車先は、声をかければ応じる可能性がある。日本M&Aセンターがトラック運送会社向けの活用ハンドブックを出し、M&Aサクシードがフジトランスポートの承継公募を支援しているのは、この需要が顕在化しているからだ。
全ト協令和5年度データでは、傭車先となる中小の経営状態はすでに厳しい。

▲傭車先となる中小運送会社の黒字比率
50台以下は規模にかかわらず営業黒字が半数程度にとどまる。ホルムズ危機前の数字でこれだ。軽油180円が常態化すれば、この比率はさらに悪化する。20台以下で事業を続けられない経営者が増える。その時に大手が受け皿にならなければ、輸送能力は単純に消える。
2024年問題で「運べなくなる」と言われた。ホルムズ危機で「コストが持たなくなる」と分かった。次に来るのは「運ぶ会社がなくなる」だ。大手と3PLはその最後の防波堤であり、再編の当事者でもある。傭車先の状況を把握し、サイトを縮め、承継の候補を洗い出す。この3つは今週中に着手しなければ間に合わない。
◆ この記事をより深く読むために ◆
本記事の土台となった規模別シミュレーション。20台以下が危機前から赤字だった事実、軽油180円で50台以下が赤字圏に入る計算、手元資金別の残り月数を掲載している。
「軽油180円、50台以下は平均値ベースで赤字圏」(3月23日)
荷主の支払いサイト短縮がなぜ最もコストの低い下請け支援策になるかを、数字で示した記事。サイト30日短縮で10台以下は17か月分の延命資金を得る。大手が元請けとして下請けへの支払いを前倒しする際の根拠にもなる。
「サイト短縮で赤字は止まる、荷主の出番」(3月23日)
金融庁の緊急要請の全体像。「融資が荷主の取引条件を肩代わりする構図」は、大手・元請けが間に立つ場合も同じだ。下請けへの転嫁が止まっている限り、融資は構図を固定するだけだ。
「資金ショートが現実に、金融庁が緊急要請」(3月23日)
トラック運送業の多重下請構造と、全ト協副会長・平島氏が「2次下請けまで」を訴えた記事。大手が再編の主導権を取るなら、委託次数の圧縮と実運送体制の見直しはセットになる。
「多重下請け構造を改革し、物流業界の健全化に挑む」(2025年1月28日)
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