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年間1億件超の出荷データを基点にフィジカルインターネット実装

ロジザード、共通デジタル荷札を今秋提供

2026年5月20日 (水)

サービス・商品クラウド倉庫管理システム(WMS)大手のロジザードは20日、ブロックチェーンを活用した共通デジタル荷札「Bit Waybill」(ビットウェイビル)を今秋に提供開始する計画を明らかにした。貨物ごとに共通IDを発番し、企業ごとに分断されてきた荷札情報を業界横断で扱えるようにする。WMS、TMS(輸配送管理システム)など外部アプリケーションとのAPI連携を前提に設計しており、共同輸送や幹線輸送、フィジカルインターネット(PI)の実装を支える共通データの仕組みを目指す。(編集長・赤澤裕介)

ロジザードはクラウドWMS「ロジザードZERO」を中心に、倉庫側の在庫・出荷データを扱ってきた。ロジザードZEROは1800を超える物流現場で利用され、同社によると年間1億件を超える出荷オーダーを処理している。ビットウェイビルは、倉庫で生まれる出荷情報を運送側の情報とつなぎ、企業ごとに閉じていた貨物情報を共通IDで扱う仕組みとして位置付けられる。

荷札情報を企業横断で接続

ビットウェイビルでは、貨物ごとに共通IDを発番し、ブロックチェーン上でNFT(非代替性トークン)として管理する。これにより、複数企業間で荷札情報の真正性や唯一性を保ちながら共有できるとしている。運送履歴や更新情報を時系列で保持することで、貨物単位のトレーサビリティーも高める。

物流現場では、WMSやTMS、送り状発行システム、運送会社ごとの基幹システムが個別に運用され、出荷情報と運送情報が分断されやすい。共同輸送や中継輸送を進めるには、どの荷物が、いつ、どこからどこへ、どの条件で動くのかを複数企業が同じ前提で把握する必要がある。ビットウェイビルが狙うのは、この接続点を共通デジタル荷札として整えることだ。

国が進める物流情報標準化でも、出荷、運送、荷受けで共通に使う標準輸送荷札が位置付けられている。物流情報標準ガイドラインでは、標準運送送り状や標準輸送荷札の発行、運送依頼、貨物受け渡しに関わるプロセスが整理されており、共同運送の議論では運送能力情報として車格、荷台スペース、積載量、設備などを明確にする考え方も示されている。ビットウェイビルは、こうした標準化の流れと接続し得る民間発の取り組みとして位置付けられる。

技術には、ぷらっとホーム(千代田区、鈴木友康社長)が開発した「ThingsToken」(シングストークン)が採用された。ロジザードとぷらっとホームは25年2月、物流DX(デジタルトランスフォーメーション)でのブロックチェーン技術活用に関する共同研究の開始を発表しており、研究期間は同年4月から9月までの6か月。今回のビットウェイビルは、ロジザードの物流ノウハウとぷらっとホームの非金融RWA(リアルワールドアセット)技術を組み合わせた共同研究の成果とされる。シングストークンは不動産や有価証券などの金融系資産を対象とせず、モノや設備、部品といった物理資産をブロックチェーン上で扱うために設計された非金融トークン技術である。

普及条件は参加企業とガバナンス設計

業界横断のデータ連携をどう設計するかは、ビットウェイビル普及の中心的な論点になる。荷札IDがどの物流単位を識別するのか、既存の送り状番号や納品番号とどう接続するのか、国の物流情報標準とどこまで整合するのか、他社WMSやTMSが対等に接続できるのか。料金体系、データの閲覧権限、更新権限、秘匿情報の扱いも普及の条件となる。荷主、倉庫会社、運送会社、3PL、システムベンダーが同じ荷札情報を参照できれば、共同輸送や幹線輸送での積み合わせ、積み替え、責任分界、履歴管理を進めやすくなる。

物流共通データの国際的な先行事例は、設計思想の違いを示している。デンマークのAPモラー・マースクと米IBMが18年に立ち上げた国際貿易プラットフォーム「TradeLens」(トレードレンズ)は、300を超えるメンバーを集めながら、22年11月に終了が発表され、23年第1四半期までに廃止された。マースクは公式声明で、実行可能なプラットフォームの開発には成功したが、業界全体での協調が実現せず、商業継続に必要な水準には届かなかったと総括している。

一方、ドイツのフラウンホーファーIMLが主導して21年に設立した非営利財団オープンロジスティクスファウンデーション(OLF)は、競合企業同士が中立財団のもとで電子運送状(eCMR)のオープンソース実装を進める方式を採り、25年6月に28社共同開発の産業実装版を公開した。共通データの取り組みの成否は、技術選択よりも、誰が主導権を持ち、競合関係にある事業者をどう巻き込むかというガバナンス設計に左右される。ビットウェイビルが「参加者共有型」「フラットで公共性」を掲げる背景には、こうした先例の蓄積がある。

国内ではNTTデータや三菱商事ら7社が出資するトレードワルツが貿易書類のデジタル化で先行し、国交省の港湾物流プラットフォーム「サイバーポート」は26年2月時点で利用登録社数が1065社に達した。

経済産業省などが進めるフィジカルインターネットの議論では、共同輸配送に向けたデータ連携や標準化が重視されている。NX総合研究所の試算によると、30年には営業用トラックの輸送能力が34.1%(9.4億トン)不足する可能性が示されており、輸送力を新たに増やすだけでなく、既存の輸送力をどう共有するかが問われるなか、荷物単位の共通IDはその前提になり得る。26年4月には改正物流効率化法が全面施行され、特定荷主に対する物流統括管理者(CLO)の選任と中長期計画の作成が義務化される。3200社規模の特定荷主が10月末の計画提出に向けて効率化策を詰めていく時期に、共通荷札の選択肢が登場する形になる。

金澤茂則社長はビットウェイビルについて「未来の荷主と運送が企業の枠組みを超え、限られた運送能力がシェアされること」をビジョンに掲げる。参加者からのフィードバックを取り込みながら改善を重ね、「様々な物流効率化のアイデアが実現出来るフラットで公共性の高いサービスを目指す」と意義を強調した。今秋の提供開始に向け、同社は参加企業を広く募集する。参加企業の顔ぶれ、API仕様、共同輸送での利用方法、既存システムとの接続範囲、実証で確認する効果は順次明らかになる見通しだ。

◆ この記事をより深く理解するために ◆

「ロジザード、ブロックチェーン技術の物流活用研究」(25年2月):今回のビットウェイビル発表に至る共同研究開始時の既報

「マースクとIBM、貿易PFトレードレンズを廃止へ」(22年12月):ブロックチェーン物流プロジェクトのガバナンス課題を考えるうえでの参照点

「30年度のトラック輸送能力34.1%不足、NX総研推計」:ビットウェイビルが解こうとする市場課題の規模感

「第三回物流DX会議、コンソーシアム発足で実装加速」:PI実装に向けた業界横断の取り組みの最新状況

「ロジザードZERO稼働拠点、1800か所を突破」:ビットウェイビルの初期参加母集団となる事業の現状

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