ロジスティクスフジトランスポート(奈良県奈良市)は29日、千葉県野田市の野田支店で、Net Time Japan(ネットタイムジャパン、東京都港区)と共同開発したドライバー向け個室型休憩スペース「富士CLUB」のお披露目会を開催した。

▲フジトランスポート 野田支店(千葉県野田市)
「2024年問題」が後押しした発想
物流業界では、ドライバー不足や働き方改革への対応を背景に、人材の確保・定着に向けた職場環境整備が経営課題となっている。特にトラック運送業では2024年から時間外労働の上限規制が適用され、人手不足の深刻化が懸念される、いわゆる「2024年問題」への対応が急務となってきた。
フジトランスポート営業本部 取締役の加藤篤男氏は、超長距離輸送を主体とする自社の特性に触れ、2024年問題以降は10時間ごとにドライバーを休憩させる必要があると説明した上で、「10時間エンジンをかけると15リッターの燃料を消費してしまう」と述べ、拠点での仮眠環境整備が急務だったと説明した。特に東京・大阪・広島・三重など乗り換え拠点では、20時間以上の待機が発生するケースもあるという。
快活CLUBの発想を営業所へ
「富士CLUB」は、こうした課題を受けてフジトランスポートが自社ドライバー向けに整備した個室型休憩スペースだ。開発のきっかけは、同社社長松岡弘晃氏とNet Time Japan社長大場健嗣氏の出会いにある。両氏はビジネススクールで知り合い、松岡氏は、大場氏が快活CLUBのコンテンツや設備を展開していると知ったことから、「各支店に導入したら(ドライバーは)すごく喜ぶだろう」と考えて相談を持ちかけたと経緯を語った。
Net Time Japanは、複合カフェ「快活CLUB」を展開してきた企業だ。今回はドライバーが横になって休めることを重視した「フラット型」の個室デザインを採用し、内装・PC・コンテンツ環境を同社が担う形で、既存の個室(仮眠室)をアップグレードし「富士CLUB」を完成させた。

▲野田支店内にある個室型休憩スペース「富士CLUB」内部
まずは1室、長時間待機者から
野田支店には10室の個室(仮眠室)が整備されているが、Net Time Japanのコンテンツが入る「富士CLUB」仕様は、現時点で野田支店・三重支店ともに1室ずつの運用となっている。予約制で運用されており、対象は主に長時間(20時間程度)の待機が発生するドライバーに限定される。
加藤氏は「外へ出てお酒を飲みに行くわけにもいかない。20時間待機しなければいけない中で、十分な仮眠施設とこうした運営施設があることで、ドライバーが時間を持て余すことなく、有意義に過ごしてもらえる」と、現場での手応えを語った。
全国拠点へ、まず1室ずつ展開
フジトランスポートを含むフジホールディングスグループは全国に拠点を広げており、今回の「富士CLUB」は人材確保・定着戦略の一環に位置づけられる。
Net Time Japanの大場氏は、野田支店・三重支店での導入をモデルケースに「全国に富士CLUBがどんどんできていく」計画があるとした。内覧時には、まず拠点ごとに1室ずつ設置し、ドライバーのニーズを聞きながら増減を検討していく方針であることも説明された。什器を規格化して大量発注することでコストを抑え、全国展開をスムーズに進める考えだ。

▲Net Time Japan社長 大場健嗣氏
松岡氏は「社員を採用できる会社が生き残る」との考えを示しており、「富士CLUB」もSNSでの情報発信と並ぶ採用ブランディング施策の一つと位置づけている。大場氏も「YouTuberを多数抱えていることに驚きと感銘を受けた。休憩所もアップデートするという松岡社長の器量に、ちょっと感動している」と述べ、採用ブランディングとドライバーの休息支援の両面で貢献していく考えを示した。

▲フジトランスポート社長 松岡弘晃氏
独自の配送マニュアルもコンテンツに
「富士CLUB」で提供されるコンテンツは、映画やスポーツ配信、コミック・雑誌読み放題サービスなどで、コンテンツを提供するTOPPANマーケティングDX事業部の田代優子氏は「ドライバーさんの休憩時間の向上と、オン・オフのスイッチを変えていただく上で、大きく寄与できるのではないか」と述べた。また、Net Time Japanは休憩の質も併せて優先し、今後はエンターテインメント性だけでなく休息・疲労回復をより重視したコンテンツへとシフトし、PCの利用時間に制限を設ける方向も検討しているという。
独自の取り組みとして注目されるのが、配送先ごとの入構ルートや高さ制限などをマニュアル化し、地図アプリと連携して事前確認できる社内システム「ロジワーク」だ。ドライバー自身の発案から生まれ、不慣れな配送先に助手が同乗して案内する「横乗り」のコスト削減や作業ミスの防止につながっているという取り組みで、松岡氏は今後、これを「富士CLUB」のコンテンツに組み込む考えを示した。
待機時間の質、業界の焦点に
フジトランスポートは、野田支店での運用状況やドライバーの声を踏まえながら、三重支店に続く拠点展開を検討していく方針だ。長時間労働の是正が求められる物流業界において、待機・休憩時間の質を高める取り組みは、安全運行や人材の定着に直結するテーマでもある。「富士CLUB」を起点とした今回の連携は、物流業界における新たな休憩環境づくりのモデルケースとして、他の運送会社からも注目を集めそうだ。
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