イベントLOGISTICS TODAYは18日、「『トラック運送・生データ革命』-推測値からの脱却と『15万円の原資』で構築する最強エビデンス。運送の“完全武装”が荷主の法規制リスクを救う-」を開催した。

本イベントは、物流関連の法規制強化を背景に、運送業界における「ボトムアップ型のDX」と「生データ(実測データ)の活用」をテーマに実施され、荷主企業を含むおよそ200人から視聴申し込みがあった。推測値ではない正確な現場データがいかにして運賃交渉の武器となり、また荷主の抱える荷待ち・荷役時間の削減やCO2排出量の把握など、荷主が対応を迫られる法規制上の課題への対応策となるかについて、各分野の専門企業が登壇し、最新ソリューションとデータ連携の可能性について議論を交わした。
モデレーターとしてLOGISTICS TODAY編集局の鶴岡昇平副局長と、ロジクロス・コミュニケーション(東京都中央区)の吉村武久代表取締役が登壇。吉村氏は冒頭、「34年間続いた規制緩和から一転して規制強化へと業界ルールが大きく変わるなか、日本全体の課題として生産性の抜本的改善と賃上げが求められている」と指摘した。

▲ロジクロス・コミュニケーション代表取締役の吉村武久氏
吉村氏は、「一人当たりGDPをいかに高めていくかという課題に対し、必要なのは生産性の抜本向上と賃金の引き上げ。そのためには省人化のDXを伴って付加価値をどのように上げていくかが重要だ」と強調。産業構造を変革するためには現場からデータを積み上げていく「ボトムアップ型のDX」が不可欠であると訴えた。また、近年では荷主企業側についても「荷待ち・荷役問題や適正運賃の議論を背景に、単なるコスト部門としてではなく、現場の物流データに対する関心やアンテナ感度を急速に高めている」と実態を語った。
続いて、Will Smart(東京都江東区)の石井康弘社長が登壇し、新たなデータ基盤となるOBD-II型デジタコ「Will-Fleet」を紹介した。

▲Will Smart社長の石井康弘氏
同製品は、おにぎり1個分程度の重さで小型・軽量、配線処理が不要なため設置工数も大幅に削減できる。価格も従来のCAN型デジタコ(30-40万円)の半額以下となる10万円台前半、月額ランニングコストも1000円台後半と導入のハードルを大きく下げている。
石井氏は「データを基軸としながら、どう集めて形にするかがポイント。車から出力されるデータをそのまま取得できる」と語り、カタログ燃費や走行距離からの逆算(推測値)ではなく、車両から直接「実燃費」や「総走行距離(オドメーター値)」といった生データを取得できる最大の特徴を解説。「正しい燃費が取れるからこそCO2排出量も正しく算出でき、荷主企業への強いアピール材料になる」と述べた。液晶画面やボタン入力機能は省かれているものの、API連携を前提としており、今後の多様なシステム連携の起点となる可能性を示した。
データ入力や業務連絡の基盤となる通信端末について、テレニシ(大阪市中央区)の白井拓生課長が法人スマートフォンの導入状況を解説した。

▲テレニシ法人事業本部モバイル営業部二部関東営業2課課長の白井拓生氏
同社では、運送業界向けにおよそ1万5000回線を提供している。提供価格は月額3000-4000円程度で、耐久性やセキュリティに優れた端末を採用。NFC搭載によりマイナンバーや運転免許証の読み取り(IT点呼等)にも対応している。 白井氏は「プライベートでスマホを使う人が増え、業務利用への抵抗感はなくなってきた。休日に個人携帯へ業務連絡が入るストレスを軽減するためにも、オンとオフを分ける法人端末の貸与が増えている」と背景を語った。また、荷主やセンター側からドライバーへの直接連絡が必要な場面においても、ビジネス専用端末の貸与がスムーズなコミュニケーション体制の構築に寄与していると指摘した。
ナビタイムジャパン(東京都港区)のビジネスナビタイム事業部部長・内門智弥氏は、「輸送管理クラウド」による動態管理とステータス把握の有用性を説明した。

▲ナビタイムジャパンビジネスナビタイム事業部部長の内門智弥氏
同サービスは、トラック専用ナビと連動し、スマートフォンのGPSを活用してリアルタイムの位置情報やステータスを管理・共有できる。訪問先への接近・離脱を自動検知することで、ドライバーの入力漏れを防ぎ、精緻な荷待ち・荷役時間のデータを蓄積できる。内門氏は「いつ着くのかという問い合わせに対し、画面を見れば一目でわかる状態を作れる。正確な到着予想時刻を通知することで受け入れ側の準備が整い、荷待ち時間の短縮に直結する」と説明した。
セッションの後半では、ナビタイムの動態管理データと、Will Smartが取得する「実燃費データ」の連携について議論が白熱した。GPSによる位置情報だけでは走行距離に誤差が生じ、緻密な運賃交渉には限界がある。しかし、実測された燃料消費量と走行距離を組み合わせることで、「この運行で実際にどれだけの燃料コストがかかったか」という、突っ込みどころのない「最強のエビデンス」が構築できる。
内門氏は「ドライバーがどれだけ効率の良い運転(エコドライブ)をしたかを可視化できれば、現場の評価指標としても活用できる」と述べ、燃費改善に貢献したドライバーへのインセンティブ付与など新たな可能性に言及した。
続くセッションでは、元大型トラックドライバーの経験を持つAi.Solink(アイソリンク、群馬県伊勢崎市)の澤浩一郎代表と渋澤智雄氏が登壇し、運行原価計算サービスを紹介した。

▲(左から)Ai.Solink(アイソリンク)の澤浩一郎代表と渋澤智雄氏
運送業界では従来、どんぶり勘定での運賃決定が課題とされてきた。同サービスは、走行距離や高速料金、燃料代、会社・車両ごとの固定費を入力することで、一運行ごとの正確な原価と採算を即座にシミュレーションできる。案件ごとの黒字・赤字判定や根拠資料のPDF出力が可能で、「これまでは感覚で受けていた仕事が実は赤字だったと判明したケースも多い。正確な明細データを荷主へ提示することで、納得感のある適正運賃交渉の武器になる」と説明した。
続いて、労務改善とコンプライアンス強化の観点から、点呼および日常点検のデジタル化について議論された。

▲テレニシ法人営業部ソリューション営業二部部長の吉田寛之氏
テレニシの吉田寛之部長は、遠隔・自動点呼に対応したクラウド管理システム「IT点呼キーパー」を解説。点呼不実施や記録未保存は行政処分の主因であり、委託先運送会社の処分は荷主の物流停止にも直結する。スマートフォンと連動した点呼のデジタル化により、運行管理者の負担軽減と法令順守体制の構築を両立できると訴えた。

▲タイガー販売促進部部長の井上敦士氏
また、タイガー(東京都千代田区)の井上敦士部長は、日常点検DXアプリを紹介。点検整備不良による事故が増加傾向にある中、同アプリは写真撮影や写真への注釈書き込み機能により点検の形骸化を防ぐ。「故障による1日およそ5万円の休車損害や修理費を未然に防止でき、現場の教育ツールとしても効果的だ」と語った。

▲Nauto Japanカスタマーサクセス部部長の村野太郎氏
最後に、AIやウェアラブル端末を活用した事故防止ソリューションが提示された。
ナウトジャパン(東京都港区)カスタマーサクセス部部長の村野太郎氏は、AI搭載ドラレコによるリアルタイムリスク検知を説明。わき見や眠気の兆候を即座に音声警告するほか、AIが運転行動を加重評価する独自スコア(ベラスコア)により、「事故が起きてから振り返るのではなく、未然に防ぐ予防的アプローチが可能になる。優れたスコアのドライバーを正当に評価するインセンティブ制度にも活用できる」と強調した。

▲enstemの山本寛大社長
enstem(エンステム、東京都中央区)の山本寛大社長は、スマートウォッチを活用した健康起因事故の防止策を提示。乗車前の約45秒のチェックや運転中の心拍変化から体調異変や眠気兆候を検知することで、「主観では気づきにくい疾患や不整脈の早期発見につながった事例もある」と紹介した。
最後に補助金ポータル(東京都渋谷区)の営業部課長の春日竜之介氏により、補助金活用情報も含め、各社のソリューションをAPIやAIを通じて連携させることで、初期コストを抑えつつ現場データを駆使して「安全・高品質・高付加価値」な運行体制を整える、持続可能な物流DXの道筋が示された。
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