話題人手不足や輸送コストの上昇、温度管理の高度化など、食品物流を取り巻く環境は厳しさを増している。個社の効率化だけでは解決できない課題が広がるなか、荷主、3PL事業者、物流機器、IT、不動産、人材などを横断した連携が問われている。
日本3PL協会は、こうした変化に「協創と実践」を掲げて対応する。設立21年を迎え、会員数は360社に拡大。「2030年には500社」を目標に、会員企業同士の価値創造、高度物流人材の育成、物流業界の地位向上を進める。

(出所:日本3PL協会)
加藤進一郎専務理事は、協会の目指す姿について、「日本の3PLをもっと強くし、社会と企業のサステナビリティーを支えることだ」と説明する。
協会の特長は、荷主や物流事業者だけでなく、物流機器、ロボット、IT、物流不動産、人材、金融など、サプライチェーンを構成する幅広い企業が参加している点にある。協会理事を務めるのは、いずれも物流の最前線に立つ現役選手ばかりだ。
「物流は1社で完結できる産業ではない。異なる知見を持つ企業が集まり、新しい仕組みやビジネスを生み出す場をつくりたい」
会員数の拡大自体を目的とするのではなく、企業間の連携によって協会と会員企業の価値を高める「価値創造サイクル」を目指す。協会は現在、基盤整備から成長段階へ移行し、理事体制の強化や西日本支部の開設を進めている。
その成長を象徴する取り組みが、9月30日から10月2日まで東京ビッグサイトで開催する、初の主催展示会「食品物流&3PL総合展」だ。
コンビニの配送便数見直しは、物流の構造改革の象徴
食品物流は、一般貨物以上に複雑な条件を抱える。冷凍、冷蔵、定温といった温度帯管理に加え、衛生、鮮度、消費期限への対応が欠かせない。小口多頻度配送やECの拡大も、現場への要求水準を高めている。
加藤氏が食品物流の大きな変化の一例として挙げるのが、コンビニエンスストアにおける配送便数の見直しだ。一部では、従来の1日3便から2便へ移行する取り組みが進む。
配送回数を減らせば、車両稼働やドライバーの拘束時間、人件費、燃料費、二酸化炭素排出量の削減が期待できる。だが、加藤氏は「これは配送回数を減らすだけの話ではない」と評価する。
店舗に商品が届く間隔が延びれば、弁当やおにぎり、総菜などの保存性を高めなければならない。原材料や配合、殺菌技術、包装方法を見直し、味や安全性を保ちながら消費期限を延ばす必要がある。
製造工場では、より厳格な衛生管理が求められ、配送では温度変化を抑える車両運用とコールドチェーンの精度向上が必要になる。店舗側でも、1回当たりの納品量増加に対応するバックヤードの確保、陳列作業の効率化、需要予測と発注精度の向上が欠かせない。
「配送頻度を変えるには、製造、包装、配送、店舗まで、サプライチェーン全体を変えなければならない。そこに大きなイノベーションが生まれる、それこそが重要」
配送便数の削減は、過剰運行の抑制や事故リスクの低減、労働環境の改善につながる一方、納品と陳列作業の集中、店舗在庫の増加、細かな再発注の難しさといった新たな課題も生む。コスト削減だけでなく、食品サプライチェーン全体を持続可能な構造へ変える取り組みとして捉える必要がある。
加藤氏は、こうした動きを「荷主が物流改革を主導し始めた」と見る。物流2024年問題への対応を起点としながら、商品開発や製造、店舗運営を巻き込む構造改革へ発展しているためだ。

▲加藤進一郎氏
「業者」から対等なパートナーへ
食品物流改革を進めるには、荷主と3PL事業者の関係も変えなければならない。
加藤氏は、3PL事業者が長く「業者」や下請けとして扱われ、荷主の要望に従って運賃や物流費を下げる役割を求められてきたと指摘する。
「荷主と3PLは、本来イコールパートナーでなければならない。『業者』という関係のままでは、大きな物流改革はできない」
短期契約のもとでは、自動化設備やロボット、情報システムへの投資も難しい。その結果、3PL事業者の収益力が高まらず、人材や設備への再投資が進まない構造が続いてきた。
物流統括管理者の選任義務化を契機に、荷主の経営層が物流を捉え直す動きは始まっている。ただ、「株主総会資料では取締役に求める知見や経験を示すスキルマトリックスが開示されている。各事業者が物流やSCMを経営の中でどう位置付けているかは、そのスキルマトリックス表を見れば明らかだ。企業経営、事業戦略などの項目はあっても、物流やSCMの項目を明記せず、担当する役員がわからないケースもまだまだ多い。それこそが、日本企業における物流部門の現状だ」
その現状こそが、「日本では、物流部門出身者が経営トップになる例が非常に少ないことにつながる。経営の中に物流の視点を入れることが、CLOに期待される大きな役割だ」
一方、3PL事業者にも変革が求められる。荷主から示された条件の中でコストを削減するだけでなく、納品条件や製造、販売、在庫のあり方まで踏み込み、改革を逆提案する必要がある。
「対等なパートナーになるためには、3PL側にも荷主へ改革を提案できる実力が必要だ」
求められるのは、現場運営力だけではない。ITやデータ分析、自動化設備の知識、食品物流に関する専門性に加え、荷主の経営課題を聞き出し、複数の技術や企業を組み合わせて実行するプロジェクトマネジメント力が重要になる。
「これから一番必要になるのはプロジェクトマネジャーだ。個別の技術を知るだけではなく、目的、スケジュール、品質を管理し、全体をまとめる人材が必要になる」
協会が管理士講座や委員会活動を通じて高度物流人材の育成に力を入れるのも、この問題意識からだ。加藤氏は「人材をコストではなく投資と捉える経営が必要だ」と訴える。ブランディングや人的資本など無形資産による企業価値向上やイノベーションこそが、企業の成長力の源泉となっていくと強調する。
食品物流の「分水嶺」となる総合展へ

「食品物流&3PL総合展」は、日本3PL協会にとって初の主催展示会となる。食品業界向け展示会「FOOD STYLE JAPAN」との同時開催により、物流関係者だけでなく、食品メーカー、小売、外食など、商品開発や流通販売を担う来場者との接点をつくる。
「協会にとって、今回の展示会は成長フェーズに入ったことを示すエポックメイキングな取り組みだ。食品物流が大きく変わるなかで、一つの分水嶺になると考えている」
会場には3PL事業者に加え、ロボット、物流IT、物流不動産、冷凍・冷蔵設備など、食品サプライチェーンを支える企業が集まる。コールドチェーンの構築や現場改善、冷凍・チルド物流の最新技術を一体的に確認できる場とする。
加藤氏は、物流が倉庫や輸送という個別機能からロジスティクスへ、サプライチェーンへと領域を広げ、「今や1社では把握しきれないシステム産業になった」と話す。
展示会の目的も、製品やサービスを個別に見比べることだけではない。
「自社に足りない機能は何か、どの企業と組めば課題を解決できるのかを見つけてほしい。座学では得られない、現場の最新情報に触れられるのが展示会の価値だ」
食品の製造方法、物流拠点、配送頻度、温度管理、店舗運営を別々に考える時代は終わりつつある。荷主にとっては物流を経営課題として捉え直す場に、3PL事業者にとっては新たな協業相手を見つけ、自社の提案力を高める場になる。
「食品物流の課題は1社では解けない。展示会でパートナーを見つけ、そこから新しい協創を始めてもらいたい」
それが、協会が初の主催展示会に込めるメッセージだ。
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