話題食品企業のサプライチェーンを物理的な制約から解放する、「在庫設計の自由化」が動き出した。souco(ソウコ、東京都港区)の中原久根人社長は、保管機能を工場や店舗から切り離す新たなアプローチを提唱する。同社は全国3000拠点以上の倉庫情報を活用し、必要な時に必要な分だけ保管できる仕組みを構築した。

▲soucoの中原久根人社長
企業側も需要のピークを予測する手法を捨て、平時から作り溜めをして備える仕組みを導入する。2024年問題に直面する物流業界の業務平準化を後押しし、企業の経営基盤を強固にする。
固定的な配置が企業を縛る
物流の危機を、単なるトラック不足や輸送効率の問題として片付けてはならない。現状の食品物流は、工場や店舗に在庫を置く固定的な配置が前提だ。この制約が、企業の生産プロセスや販売機会を強く縛り付ける。
中原社長は現地取材に対し、ジャストインタイムの生産方式が進化するなかで、物流も共に進化し、寄り添う必要があると指摘する。製造業のジャストインタイムは、工場に在庫を持たず、必要な部品を必要な時に届ける方式で発展した。物流の担い手が不足する現代で、毎日遠方から少量の納品を続ける手法は非現実的だ。
soucoが掲げる在庫設計の自由化は、調達と生産、物流、そして販売を、在庫によって切り離す手法だ。日々動く回転在庫は、工場や出荷拠点に配置する。将来のための備蓄在庫は、低コストな外部の保管拠点へ移す。坪単価の高い店舗や厨房を単なる保管場所として使うことで生じる、機会損失を防ぐ。

▲外部倉庫を活用するメリット(出所:souco)
需要のピークを正確に予測して、直前に体制を整える従来の手法から脱却する。平時から少しずつ在庫を積み上げ、需要がいつ来ても対応できる体制を構築する。この発想の転換が、繁忙期と閑散期の差を埋め、業務の平準化を可能にする。
データベース構築の経験が原点
同社が提供するサービスの原点には、中原社長の不動産業界での経験がある。創業前、不動産のポータルサイトやデータベース構築に携わるなかで、倉庫を探す企業が多い一方、物件情報を網羅したデータベースが存在しないことに着目。全国の倉庫会社を回り、ネットワークを築いてきた。
一方、物流業界では見積もり項目や料金体系が各社で異なり、利用者が比較しにくいという課題もあった。そこで同社は業務を標準化し、段ボール、パレット、カゴ台車、スペース単位の「ちょい置き」など、荷姿やサイズに応じた全国一律の料金体系を構築した。

▲荷姿やサイズに応じた料金プラン(出所:souco)
初期費用は0円で、最短翌日から利用できる。段ボール100箱を保管するプランは、1年契約で月額3万円だ。15パレットを保管するプランは、1年契約で月額5万円に設定する。食品物流を支える冷凍・冷蔵・定温プランも、段ボール15箱や5パレットから対応する。利用者は、複雑な見積もり比較の作業を省ける。
NIPPON EXPRESSホールディングスやセイノーホールディングスなどの大手物流会社も出資し、同社のビジネスモデルを支持する。
システム化で属人化を排除
電話連絡を完全に廃止し、ウェブチャットや専用のシステム上でデータのやり取りを完結させた。各社のWMS(倉庫管理システム)に依存せず、入出庫から配送依頼までを自社システムで統一する。倉庫管理の属人化を防ぎ、全国どこでもミスなく運用できる仕組みを実現した。中原社長は「事故が起きなさすぎて保険料がずっと下がっている」と笑顔を見せる。
東京海上日動火災保険の受託者賠償責任保険に加入し、事故発生時はsoucoがサポートする。利用者と倉庫会社が直接やり取りする不安を解消するため、同社が受託者となり各倉庫会社と個別に契約を結ぶ。利用者はsoucoと1本の契約を結ぶだけで、全国の倉庫を円滑に利用できる。
調達と販売の機会を最大化
標準化を実現した倉庫と在庫設計の掛け合わせは、食品企業のビジネスに絶大なインパクトをもたらす。ある食品メーカーは弁当用の冷凍ブロッコリーを、収穫時期の安いタイミングで1年分まとめて買い付けた。自社工場には保管スペースがないため、同社のネットワークを活用して外部の定温倉庫にバルク保管する。必要な分だけ毎週段ボール1箱ずつ工場に補充する仕組みを構築し、年間を通じて安い原価での製造を実現した。仕入れるタイミングと使用するタイミングを、在庫によって完全に切り離した成功例だ。
販売機会の最大化にも直結する。大手小売から自社の生産能力をはるかに超える大口発注が届いた際、平時から外部倉庫に作り溜めをして備蓄した企業がある。工場ラインをパンクさせずに100ロットの納品を実現し、売り上げを10倍に拡大させた。同社の年契約の仕組みを利用すれば、月契約12か月と比較して最大42%安価になる。これが長期間の備蓄を経済的に後押しする。在庫は単なるコストではなく、経営の柔軟性を生み出す強力な資源だ。
ECや店舗の返品対応にも応用
EC(電子商取引)物流でも同様の課題が生じる。EC対応倉庫は商品の保管だけでなく、ピッキングや梱包、配送会社との接続など高度な出荷機能を持つ。高速回転する完成品を置くには最適だ。しかしその高機能な拠点に、半年間動かない原材料やバルク在庫まで置く必要はない。将来に備える備蓄在庫は、低コストで長期保管に適した場所に置く。日々動く回転在庫は、需要や出荷に近い場所へ配置する。必要な分だけ、備蓄在庫から回転在庫へ補充する。高機能な拠点は高機能な仕事に集中する。その間を、適切に配置した在庫がつなぐ。
小売や店舗の返品対応でも外部倉庫は力を発揮する。全国展開する小売店がシーズン終わりの返品を受け付ける際、店舗のバックヤードは作業に追われる。中原社長は、返品だけを一時的に取りまとめる拠点を作り、処理のピークをずらす仕組みを提案する。閑散期に落ち着いてから処理を進める対応で、現場の負担を大幅に減らす。溜め置きの機能を持つからこそ、繁忙期をピークにさせない体制が整うと、中原社長は語気を強める。
製造業における拠点配置の工夫も、食品物流の参考になる。大阪市に本社を置く部品メーカーが、千葉市の納品先に毎日少量を届ける際、千葉市近郊の空き倉庫を借りてまとめて輸送する。そこから納品先へ、毎日少しずつ運ぶ手法をとる。大阪市から毎日トラックを手配する手間と費用を省き、効率的なジャストインタイムを実現する。倉庫の費用は配送費用に対して3分の1から2分の1で収まるため、配送コストが下がるなら倉庫代を払う価値は十分にある。こうした手法はさまざまな業界で応用できる。
物流のバス停で全体最適へ
物流業界の標準化は待ったなしだ。中原社長は5年前から標準化の波が来ると読んでいた。国も助成金を出し始め、ついに時代が追いついた。値上げが浸透し手配が難しくなるなかで、荷主企業も新しい手段を考えざるを得ない状況に直面する。同社は一番標準的なサービスを提供できるポジションを狙い、準備を進めてきた。
同社が見据えるのは、個別企業の最適化にとどまらない。中原社長は「今の物流は、チャーター便という終電後のタクシーに乗っている状態だ」と語る。倉庫は物流のバス停の機能を持つ。小ロットでも同じ方面に向かう荷物を一つの拠点に集約し、共同配送の基盤を作る構想だ。物流リソースの最適配分を社会に実装し、日本全体の物流を最適化する。
柔軟な倉庫活用は、現場の負担軽減にとどまらず、売上機会の創出や調達戦略の強化に直結する重要な経営課題だ。中原社長はこのインパクトを経営層にまで広く啓蒙し、物流の物理的な制約から企業を解放すると力を込める。作る場所は製造に、売る場所は販売に集中し、保管は外部の適切な場所に任せる。同社の挑戦が、食品業界のサプライチェーンに新しい可能性をもたらす。
全国3000拠点以上の倉庫ネットワークを活用し、必要な時に必要な分だけ倉庫を利用できるサービスを展開しています。
>>特集「一社では解けない食品物流―3PLは『運ぶだけ』から変われるか」トップページへ
LOGISTICS TODAYでは、メール会員向けに、朝刊(平日7時)・夕刊(16時)のニュースメールを配信しています。業界の最新動向に加え、物流に関わる方に役立つイベントや注目のサービス情報もお届けします。
ご登録は無料です。確かな情報を、日々の業務にぜひお役立てください。



































