ロジスティクス物流DX開発のアセンド(東京都新宿区)は17日、「原価計算 まるわかり連続講座」の第6回を、特別編としオフライン開催した。同社はこれまでオンラインで原価計算に関する同様の講座を5回開催しており、今回はオフラインでの開催。運送会社の実態である「どんぶり勘定」からの脱却と、適正な原価時代の運賃の値決めをテーマに行われた。
最初のセッションでは、草水運送(宮崎県都城市)の専務取締役である草水裕也氏が登壇した。同社は5年ほど前まで原価計算の概念がなく、運賃決定の際も「口頭での即決」や「社内決裁なしの提示」が横行しており、燃料費・高速代・人件費のみを差し引いて判断し、車両費や減価償却費が原価に含まれていなかったという。

▲草水運送専務取締役の草水裕也氏
銀行出身の草水氏は決算書項目を分解し、長距離輸送における「一往復」を最小管理単位とし、最終的にいくら利益が出るかを可視化する原価計算シートを導入した。さらに2024年問題への対応として、フェリー利用や福岡でのドライバー・車両のスイッチングを実施したことで増えたフェリー代や深夜割引適用外による高速代の影響も原価計算で正確に把握した。運賃交渉においては、値上げ率ではなく具体的な金額を示し、作成した原価計算シートの数値をそのまま顧客に伝えることで、相手先担当者が社内の資料として使える水準のデータを提供するよう営業担当に求めていると語った。
「交渉の相手は民間企業に勤める会社員。持ち帰ってそのまま上長に見せられる体裁の資料を用意しておけば、担当者が先方の社内稟議にかけやすくなり、決裁までの時間短縮になる」(草水氏)
続いて登壇したスワローロジスティクス(東京都江戸川区)の専務取締役である菊澤翔氏は、高校卒業後にドライバーとして入社し、配車係や営業所長を経て業績不振のグループ法人の立て直しを成功させた経験をもとに、運送事業における原価計算の社内浸透や営業所運営での活用について説明した。同社では、用途や利用者に応じて3種類のシートを使い分けている。

▲スワローロジスティクス専務取締役の菊澤翔氏
具体的には、営業所長が荷主との初期交渉時に拘束時間や距離などの最小限の情報で迅速に受注可否や最低必要運賃を判断するための簡易シート、営業所長自身が前年同月・前月対比で収支悪化要因を分析・報告し月次収支を把握するためのシート、そして過去5年間の最賃や燃料単価の上昇実績を踏まえ、デジタコデータなどから荷主別の実績原価を把握して運賃交渉に使う役員クラス向けのシートである。菊澤氏は、管理者の業務負荷が大きいことを前提に、計算は簡単でやりやすい仕組みにすることを重視しつつ、所長が提出した計算結果の前提条件まで掘り下げて会話することを強調した。
「特に若手配車担当者には、原価に興味を持ってもらって、原価意識を持ってもらうことが重要。新しい案件を受注してよいかどうか若手が聞いて来たら、『その仕事は儲かるの?』と問いかけると、1運行に対してどのくらい原価がかかり、どのくらいの利益が生まれるのかを自分の頭で考えてくれるようになることが多いようだ」(菊澤氏)

▲アセンド社長の日下瑞貴氏
最後のセッションでは、アセンド代表取締役社長の日下瑞貴氏は、「物流業界が直面する最大の課題は、営業利益率の低さだ」と強調。営業利益改善のためには原価計算が必要不可欠であるとした。
また、原価計算を阻む最大の壁は業務の分断であるとし、「業務からデータを統合管理するDXは原価計算の大前提となる」と説明した。
さらに、DX(デジタルトランスフォーメーション)によってデータを蓄積し、この基盤の上に自社独自のAI(人工知能)を構築するというDXとAXを組み合わせた物流・運送業のあり方を提案した。
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