ロジスティクス関東トラック協会海上コンテナ部会が9月24日に公表した調査によると、2026年3月末時点で在籍する海上コンテナセミトレーラー運転者の平均年齢は52.8歳に達し、全産業平均を8歳以上上回った。50歳以上が全体の7割を超える一方、20代は3%に満たない。海コン輸送は輸出入貨物を港と内陸の間でつなぐ特殊業態であり、その高齢化は一業態の人手不足にとどまらない。50歳以上が支える現場を、誰がどう引き継ぐのかという問いを、この数字は突きつけている。(編集委員・刈屋大輔)
平均52.8歳の実態
同調査による在籍者1246人の内訳を見ると、50歳代が584人で46.9%を占めて最多となり、60歳代が20.2%、70歳以上も3.0%にのぼる。13年度時点の平均年齢は46.8歳、50代の割合は23.9%、40代は43.8%であったことと比べれば、十数年で年齢構成そのものが逆転したことになる。この1年の新規採用者は109人、退職者は91人で数字の上では18人の純増だが、新規採用者の平均年齢は47.4歳、その35.8%が50代である。参入する層自体が高齢化しているため、純増という数字だけを根拠に若返りを語ることはできない。なお24年度は平均年齢がいったん51.8歳へ下がっているが、この年は回答店社数が前年から50社、在籍者数も892人減少しており、調査自体が年ごとに母集団の入れ替わる性質を持つ。単年の上下動を改善や悪化と単純に評価するのは慎重でありたい。
特殊業態が生む二重の壁
海コン運転者になるには大型免許に加えてけん引免許が必須で、一般貨物輸送より資格取得の負担が重い。個人にとっての参入障壁である。一方、けん引トラクターやシャシーは高額で、更新負担が事業者の経営体力を圧迫しているとの指摘もある。個人の資格取得と事業者の設備投資という、性質の異なる二つの壁が同時に存在する業態であり、担い手不足が一般貨物以上に構造化しやすい土壌がある。荷役自体はクレーンに任せられるため身体的負担は軽いとされるが、全長10メートルを超える車両の運転は内輪差や偏荷重への警戒を常に伴い、冷凍・冷蔵コンテナであれば温度管理への気配りも欠かせない。荷役の軽さと運転の重さは別の負担として両立しており、負担そのものが軽減されているわけではない。海コンという狭い業態の高齢化は、トラック業界全体が数年後に直面する姿を先取りしているようにも映る。
政府も対応を進めてはいる。23年10月閣議決定の物流革新緊急パッケージや24年5月施行の改正流通業務総合効率化法のもと、内陸デポを拠点とするコンテナラウンドユースや中継輸送、鉄道モーダルシフトの実証、高速道路でのレベル4自動運転の実用化などが並ぶ。ただし、これらはいずれも限られた人材で輸送力を維持するための代替策であり、担い手そのものを増やす策ではない。対策が動き出したのもここ数年に過ぎず、国自身の試算でも、対策を講じなければ2030年に東日本地域で無視できない規模の輸送力不足が生じるとされ、内陸デポ活用や中継輸送だけでは解消せず、自動運転や鉄道利用まで組み合わせて初めて充足するとされている。十数年かけて進んできた高齢化に対し、規模とスピードが追いついているとは言いがたい。さまざまな対策が並行して検討・実施されてはいるが、人材確保の実効性を左右する一丁目一番地は、結局のところ報酬・賃金の底上げだろう。稼げない職場・職種に労働力が集まらないのは、業種を問わない理屈である。
賃金と適正原価の行方
輸送力そのものが目減りした場合の波及は小さくない。海コン輸送が滞れば、原材料や部品の調達から完成品の輸出まで、サプライチェーンの最終区間で目詰まりが生じる。貿易立国としての物流基盤という意味で、この区間の担い手不足は特定産業の物流コストの話では済まない。歩合制のもとでは、港湾ゲートの混雑による荷待ちの増加がそのまま収入減に直結する。きつい仕事なのに稼げないという現場の声は、この構造から生まれている。
国土交通省の有識者会議で議論が進む「適正原価」の枠組みは、運賃の適正化という入口の議論として語られることが多い。しかし海コンのような特殊業態の担い手を確保する道筋は、突き詰めればドライバー本人の手取りと労働環境の改善に行き着かざるを得ない。自動運転や鉄道モーダルシフトは輸送力の一部を補う選択肢ではあっても、既に現場に立つ運転者の生活水準を底上げする代替策にはならない。適正原価の議論が運賃交渉の入口論にとどまらず、賃金・待遇にどこまで踏み込めるかが、この業態の存続、ひいては日本経済の足腰を左右する分水嶺になるだろう。平均年齢52.8歳という数字は、いずれ現役を退く運転者の後任が用意されているかを問う数字でもある。担い手の処遇改善を先送りしたまま輸送力の維持を語ることは、もはや成り立たないのではないか。
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