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新任CLOが描く、モビリティーを止めない供給網改革

SPK上田CLO、改革の第一歩を踏み出す

2026年9月9日 (水)

話題物流改革の第一歩は、新しい拠点やシステムを導入することではない。自社の商品がどこにあり、誰が、どの契約に基づいて、いくらで運んでいるのか。それを会社として説明できる状態にすることである。

自動車補修部品や産業車輌部品を扱う商社、SPKで2026年4月にCLO(物流統括管理者)に就任した上田耕司取締役常務執行役員は、改革の出発点を「現場の動きを知ること」に置いた。

「現状があまりにもばらばらで、把握すること自体が非常に大変だということを再認識することからスタートした」

各事業部や営業所が顧客の要望に応じて築いてきた在庫、配送、物流会社との契約。それぞれには合理性がある一方、全社で見れば、同じ地域を複数の車両が走り、倉庫や配送ルートが重複している可能性もある。

完成した物流改革の成功例ではない。CLOに就いたばかりの企業が、見えていなかった物流の全体像をどう捉え、部門やグループ会社をつなぎ、社外との連携へ踏み出そうとしているのか。SPKの取り組みは、多くの新任CLOが直面する初動の難しさを映し出している。まずは目標を立て、そこに向かって始動する「CLOの覚悟」を聞いた。(大津鉄也)

物流は営業以上に重要な供給機能

SPKは、国内外のメーカーから自動車補修部品を仕入れ、全国の部品商や整備工場へ供給する。仕入先は500社以上、取引先の部品商は700社以上に及ぶ。

国内営業本部に関しては大阪、岐阜、福岡の3か所に物流センターを構え、札幌から沖縄まで全国19拠点の営業所にも在庫を配置する。物流センターから営業所、地域の部品商を経て整備工場へ届けている。

補修部品は、一般の商品とは異なる供給責任を持つ。故障する車両や必要になる部品を、事前に完全に予測することはできない。それでも、必要になった時に部品がなければ、自動車や産業車輌の稼働が止まる。その影響は整備工場や車両の所有者だけでなく、輸送、建設、農業、物流施設など、その車両を使う現場へ連鎖する。

上田氏は、SPKの役割を「メーカーと部品商、整備工場、エンドユーザーをつなぐ供給インフラ」と表現する。

「商社の使命は、お客様に商品を届けること。その手段は時代に合わせて変えなければならない。物流は営業活動以上に重要な役割であり、物流への注力は会社の活動方針そのものになる」

単に安く運ぶことが目的ではない。必要な部品を「速く、正確に、止めることなく」届け続ける供給力を、持続可能な形に組み直すことがCLOの任務となる。

上田氏は1986年、SPKの前身である大同自動車興業に入社した。国内営業本部で部品販売を担当した後、調達・仕入れ部門へ移り、海外調達を担うグローバルアフターマーケットセンターを立ち上げた。物流を専門に歩んだ経歴ではないが、営業所の在庫販売や、倉庫会社への業務委託を通じて、物流との接点を持ち続けてきた。

現在は事業会社の統括とCLOを兼務する。調達から物流までを一体で捉えれば、CLOに関する業務の比重は85%になるという。CEO直轄で、国内外の調達から在庫、輸配送、販売先への供給まで、サプライチェーン全体を管轄する。

「販売物流だけを見ていては足りない。私の場合は調達からすべてを見る。SPKでは物流統括管理者の任務を全うすること、それこそがCLOのスタートラインだと考えている」

まず、会社の物流を説明できるようにする

CLO就任後、上田氏が最優先で着手したのが現状把握だった。SPKでは国内営業本部、海外営業本部、工機営業本部、CUSPA(カスタマイズドパーツ)営業本部など、事業ごとに物流の運用や契約が構築されてきた。全国の営業所も、地域の顧客に応えるため、それぞれ在庫と売り上げに責任を持つ。

現場に裁量を委ねる体制は顧客対応力を生んできた。一方で、本社が物流契約、請求内容、輸送ルート、倉庫費、在庫配置を横断的に把握し、全体最適を判断することは難しかった。

そこで各部署から担当者を選出し、社内横断のプロジェクトチームを立ち上げた。物流会社との契約書や請求書を集め、物流費や保管費を整理するとともに、各部署、営業所で商品がどのように動いているのかを確認している。

現状把握を進めるほど、事業部や拠点による違いが表面化した。異なる事業部が別々の物流会社を使い、同じ方面へ商品を運んでいる可能性もある。倉庫の集約や配送ルートの統合によって、効率化できる余地も見え始めた。

ただし、上田氏は本社主導で一律に統合すればよいとは考えていない。

各営業所の運用は、顧客が求める納期や配送頻度に応えるなかで形成されてきた。競争環境上、維持しなければならないサービスもある。現場の前提を無視して効率だけを押し付ければ、SPKの供給力そのものを損ねかねない。

「全社として物流の考え方を整理し、それを現場の実情に合わせて具体的な仕組みにしていく必要がある。CLOは管理や統制をするだけではなく、各部門やグループ会社と課題を共有し、一緒に解決策を考えるハブでありたい」

CLOとしての最終決裁権や社内ルールも、現時点では構築の途上にある。まず事実を集め、課題を共有し、何を全社で統一し、何を現場に残すのかを決める。SPKの初動は、権限を先に掲げるのではなく、判断できる土台を整えることから始まった。

中長期計画についても、取引のある物流会社にSPK全体の物流を見直す提案を求め、社内方針の策定を進めている。初回の計画を固定的な完成形とはせず、市場環境やM&A、グループ会社の増加などに応じて更新していく方針だ。

月2000個の商品も、月1個の商品も欠かせない

SPKが扱うアイテムは2万点を超える。月に2000個出荷する高回転商品がある一方、月に1個しか動かない商品もある。それでも補修部品である以上、単純に販売数量だけを見て在庫を削ることはできない。

「月に2000個出るものも、月に1個しか出ないものも、必要な時に供給するためには持っておかなければならない」

車両を分解して初めて必要な部品が判明することも多い。部品がなければ修理は完了せず、車両や機械を動かせない。欠品防止と在庫削減は、簡単には両立しない課題だ。

さらに、車両の使用年数が長期化するなか、旧年式車向け部品の需要も変化している。かつてはデッドストックとみなされた古い部品が、長期使用車やクラシック、ネオクラシック車向けに必要とされる場面も増えた。

こうした多品種、低頻度の商品を、どの拠点に、どの程度配置するか。即納性を維持しながら、サプライチェーン全体で過剰在庫を抑えるには、経験や勘だけでは限界がある。

上田氏が物流改革の基盤に据えるのがデータだ。

商品番号、車種適合、互換性、代替品、受注、出荷、拠点別在庫などの精度を高めれば、欠品を減らせる。需要の実態を把握し、過剰在庫の抑制や在庫回転率の向上につなげることも可能になる。

将来的には、需要予測、在庫最適化、適合検索、配送計画へのAI活用も視野に入れる。ただし、データの粒度や形式が事業部、グループ会社ごとに異なる現状では、AI導入を急ぐだけでは成果につながらない。

「AIの可能性は非常に大きいと感じている。ただ、その前提となる商品データや在庫データ、適合情報の精度と一貫性が不可欠です。まずは基盤となるデータを着実に整えなければならない」

物流改革をシステム導入から始めるのではなく、現場、契約、コスト、商品、在庫のデータをそろえる。SPKの目指す「速く、正確に、止まらない供給体制」は、その地道な整備の先にある。

コスト削減より、供給を維持できる仕組みへ

トラック輸送費や倉庫保管費、人件費は上昇を続けている。ドライバーの労働環境改善も含めれば、物流会社に一方的な値下げを求めることはできない。上田氏は、工夫によってコストを下げるというより、供給を維持しながら上昇を抑えることが現実的だと見る。

「さまざまな工夫をしても、コストダウンではなく、現状を維持するところまでかもしれない」

そのなかで検討するのが、仕入先との輸送合理化だ。SPKへの納品車両や、営業所、物流センター間を走る車両の帰り便、空きスペースを活用し、積載率を高める。事業部ごとに重なっているルートを可視化できれば、幹線輸送やエリア配送をまとめられる可能性もある。

同業他社も同じ課題を抱えるが、競合関係にある以上、商品や顧客に関する情報をただちに共有することは難しい。まずは仕入先、メーカー、物流会社、地域部品商との垂直的な連携から着手し、配送など比較的協調しやすい領域で成果を積み上げる。

海外調達では、複数企業の貨物を集約することによる輸送効率化も検討する。為替、品質、規制、地政学リスクなど条件は複雑になるが、調達先の選択肢を広げ、安定供給を高める可能性がある。

また、M&Aによって加わったグループ会社との連携も重要になる。企業ごとに商流、価格体系、物流拠点、在庫方針、基幹システム、データ構造、現場の業務文化が異なるため、単純に仕組みを統一することはできない。

SPKは、フォークリフト向け部品を扱う丸安商会や、輸入車および商用車向けトランスミッションのリビルトを強みとするデルオートなどとの連携を深め、車両や荷役機器の稼働を支える体制をグループ全体で強化する考えだ。

「まずはCLO機能を、自社の物流の中心として確立することが先決です。そのうえで、将来は社外連携でも中心的な役割を果たし、業界全体の課題解決に貢献できる存在へ発展させたい」

制度開始と同時にCLOという肩書を置いても、会社の物流が一つになるわけではない。各現場が積み重ねてきた個別最適を可視化し、供給力を損なわずに全体最適へ組み替えるには時間を要する。

SPKのCLO改革は、まだ始まったばかりだ。だからこそ、その初動には意味がある。「何を変えるか」を急ぐ前に、「今どうなっているか」を会社として共有する。ばらばらな物流を一つの経営課題として捉え直すところから、モビリティーを止めない供給網の再設計が始まる。

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