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違法残業が突出する物流現場は外国人材も敬遠する

2026年9月18日 (金)

ロジスティクス厚生労働省が9月15日に公表した2025年度の監督指導結果で、運輸交通業の違法な時間外労働の発生率が主要な業種の中で最も高い水準にあることが改めて示された。同じ日に公表された技能実習生・特定技能外国人向けの監督結果でも、違反率は7割を超える。物流の現場ではドライバーに続き倉庫作業でも特定技能人材の受け入れ準備が進むが、労働時間管理の甘さが解消されないままでは、外国人材からも選ばれる現場にはなれないだろう。(編集委員・刈屋大輔)

厚労省が公表した資料によると、2025年度(25年4月−26年3月)に長時間労働が疑われる事業場として監督指導の対象となったのは全国で2万9150事業場。このうち1万1228事業場、38.5%で違法な時間外労働が確認された。前年度の2万6512事業場、42.4%と比べると、対象事業場は増えた一方で違反率は下がっている。

業種別にみると、運輸交通業は2423事業場が対象となり、2072事業場で法令違反が確認された。このうち違法な時間外労働があったのは1326事業場で、対象事業場の54.7%にのぼる。全業種平均の38.5%を大きく上回り、商業や製造業、建設業といったほかの主要業種と比べても最も高い水準にある。

(クリックで拡大、厚生労働省「長時間労働が疑われる事業場に対する監督指導結果」を基に作成)

賃金不払残業は163事業場、過重労働による健康障害防止措置の未実施は400事業場で、こちらは全業種平均との差はさほど大きくない。違法残業だけが際立って高いという、いびつな数字になっている。

厚労省が用いる「運輸交通業」はトラック運送に限らずバスやタクシー、鉄道も含む区分で、54.7%のうちトラック運送業由来がどれほどかは今回の資料からは判然としない。それでも、荷待ちや道路混雑で稼働時間が読みにくいトラック運送の現場特性が背景にあるとの見方は根強く、2024年4月に適用が始まった自動車運転業務の時間外労働規制も、荷主都合に追われる現場には十分に効いていないようだ。

外国人材にも高止まる違反

同じ15日、厚労省は技能実習生と特定技能外国人を使用する事業場に対する25年(1月−12月)の監督指導結果も公表した。技能実習生を使用する1万3148事業場のうち9619事業場、73.2%、特定技能外国人を使用する8082事業場のうち6179事業場、76.5%で労働基準関係法令違反が確認されている。いずれも違反の疑いがある事業場を対象にした調査であり、外国人を雇用する事業場全体の違反率を示すものではないが、主な違反事項に機械の安全基準(技能実習22.8%、特定技能20.7%)や健康診断結果に関する医師の意見聴取が並んでおり、安全管理や健康管理の体制が手薄な職場が一定数あることをうかがわせる。重大・悪質な事案として送検されたのは技能実習生関係で26件、特定技能関係で9件にのぼる。

▲技能実習生を使用する事業場に対する監督指導の状況(クリックで拡大、出所:厚生労働省)

物流に関係する事例では、金属製品製造業の工場でフォークリフト運転技能講習を修了していない特定技能外国人が運転していた実態が是正勧告の対象となったほか、食料品製造業の工場では最大荷重1トン以上のフォークリフトを無資格で運転させていたとして法人と代表者が送検された。いずれも物流そのものの現場ではないが、荷役作業に伴う安全教育の不備という点で、物流倉庫の現場にも通じる。

環境整備は追いついているか

物流業界では、外国人材の受け入れ拡大がすでに動き出している。トラックドライバー不足を背景に、24年3月の閣議決定で特定技能の対象に自動車運送業分野が加わり、25年3月にはトラック分野で初の特定技能ドライバーが乗務を開始した。ヤマト運輸は25年11月、27年からの5年間で年100人ペース・最大500人程度のベトナム人運転手の採用を発表しており、拠点間の幹線輸送に限られるとはいえ大手の動きも本格化してきた。

倉庫業務についても、26年1月の閣議決定で物流倉庫分野が特定技能の対象に加わり、27年4月の制度開始に向けて準備が進む。受け入れ見込み数は26年度からの3年間で1号特定技能が1万1400人とされ、労働者派遣を前提とした雇用契約は認めず直接雇用を基本とすることや、倉庫管理システム(WMS)の活用を求めることなど、独自のルールも設けられる見通しだ。これまで整備が追いついていなかった物流倉庫の現場に、安全管理と生産性向上の水準を課そうとするもので、受け入れ枠だけを広げて済ませようとしているわけではない。

技能実習生や特定技能外国人向けの監督結果は、外国人を雇用する事業場全体の姿を表すものではないが、運輸交通業で違法残業の発生率が突出している構造と無縁ではないだろう。取材を通じて感じるのは、こうした事情を現場側もある程度自覚しているという点だ。今のままの労働環境では特定技能人材も定着しないだろう、と話す事業者の声は一つや二つではない。

受け入れ枠の拡大や上乗せ基準の強化は歓迎すべき動きだとしても、日々の荷待ちや長時間労働をどう減らすかという現場レベルの課題は、それだけでは解決しない。運賃や取引条件を通じて荷主側の負担のあり方を見直すのか、労基署による監督をさらに強めるのか。受け入れ制度の外側にあるこの部分に手をつけない限り、特定技能拡大は人材確保の切り札にはならず、かえって人が定着しない現場という評判だけが広がりかねない。

運輸交通業、監督2423事業場の半数超で違法残業

特定技能雇用先、監督対象の76.5%で法令違反

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