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「日本製の物流プラットフォーム」第6回コラム連載

2020年6月1日 (月)

話題永田利紀氏のコラム連載「日本製の物流プラットフォーム」の第6回を掲載します。

第5回掲載(5月28日)▶https://www.logi-today.com/378994

第11章- マテハンの共通化

(イメージ画像)

物流のプラットフォームが統一されれば、当然ながらマテハンをはじめとする庫内備品や設備仕様は一定の基準が設けられ、参加各社は一様に準拠するはずだ。

そうなると大手のマテハン販売会社が圧倒的に有利になるのだが、実は今現在もほぼ寡占しているのだから、たいして変化がないかもしれない。

■ 資材関係もおなじ

物流資材についても、マテハンとほぼ同じ理由で「まったく」といっていいほど問題は発生しないはずだ。むしろ歓迎する向きが多いのではないかと思う。

プラットフォーム共通化によって、資材の共通化が同じくして派生する。少品種大量発注はメーカーと利用者双方に利が増えるはずだ。無駄な改廃や名入れの細分化から解放される先には、紙資源の効率的な消費の果実が期待できる。意識しないことが常だが、紙は国策であり、天井裏には数人の元締めしかいないことを思えば、正論と無難の結実しか考えられない。

■ 弱肉強食の激化

統一された物流プラットフォーム運用に際し、川上から川下に至る参加者があまねく予想するのは、全国に多数の拠点を有する総合物流企業や大手の設備メーカー、ロット上限などのキャパシティに難のない大手製紙系もしくは古参の資材販売会社――といった大手・中堅が優位に立ち、中小零細が不利になる可能性が高いことだろう。

しかし、大企業と同じ土俵で戦う中小零細企業には分が悪いと判じるのは拙速に過ぎると反論しておきたい。弱と強は小と大の置き換えではない。少なくとも物流技術に関して、経営規模はたいして影響しないし、プラットフォームが同じなら勝負は現場の運営力だ。

■ 同じ土俵で真っ向勝負

(イメージ画像)

マテハンにしても資材にしても、共通の業務規格に則って現場の各種仕様が指定される。つまりは制約だらけの納品基準に従って、各社は提案見積を作成しなければならない。そうなれば「値段勝負」となるのは、見分けがつかないほど似通った内容を提出した場合のみだろう。

制約の中に欠片のような自由領域を見出し、そこに自社なりの個性を織り込む。額面は同じようにしか見えない設備や機材や資材であっても、使用時を想像してみれば、明らかに違いを感じる。たとえば、便利であったり、軽量であったり、安全であったり、環境や人間にやさしかったり。言わずもがな参加者は心得ているに違いない。

第12章- 規格・規定の共通化

とにもかくにも、商品コード規格と商品マスター制作規定の統一が必要だ。今までも方々で話し、書き、寝言でつぶやくほど主張してきた

■ 物流現場の支配者

(イメージ画像)

物流現場は商品マスターが支配している。目立たないため、皆が気付かないまま扱いを軽んじたりしているが、諸事の根源となることが多い。

商品コードとそのマスターはイロハのイとして、統一規格に準じて設計し、規定通りの運用を鉄の掟としなければならない。そこが不出来だと、億のシステムをもってきても、ただのポンコツになってしまう。これは理論や推測ではない。現場での経験に基づく実態と結論を書いている。

■ 情報の引き算

マスター制作の失敗事例として最も多いのは、至れり尽くせり、過剰な拡張性、全部主義、イレギュラー発生時の対応を標準化――などである。結果的に木を森に隠すことと同様、商品情報を商品データの海に浮かべる様相となる。

「誰が・どこで・どんな目的で」がマスター表示のタイミング考察に欠けているため、いつでも誰でもどの業務でも「同じ情報量」の表示が展開されてしまう。制作者の意図に反し、ほとんどの実務現場で「迷惑だ」「ややこしい」「長い」などの言葉が発せられている。その部署や現場業務には必要ない情報までもが否応なしに押し付けられるし、ソートしてデフォルメしたくても、マスター情報の加工はセキュリティ上できないという運用が常である。

巷でよくある「データをエクセルにコピペして、現場で使いやすいようにしている」は、こうして生まれる。

■ 奇妙な差別化意識

国内規格としてJANがあるのに、なぜ皆で導入しないのだろう。「わが社は一般流通網に関与しないため、独自作成したコードでも支障ない」といった説明は重々承知しているが、JANを拒絶する理由にはならない。

(出所:流通システム開発センター)

「無用なコストをかける必要はない」と正面切って言われる方々は多いが、物流インフラを市場参加者全員で盤石化・合理化・簡素化しようとする大儀のもと、理解と運用参加を励行願いたい。全のために個が犠牲になる、という絵図にはならないと約束できる。

統一マスター準拠と運用の規格化は、まわりまわって必ず各社の利益につながる。製造・仕入・販売・物流での一時停止や食い違いが解消され、ガラス張りの統一システムによる情報共有が利害の明確化を疑いない状態にしてくれる。冗長や閉鎖や複雑などの言葉を嫌う企業なら、準じない理由はないはずだ。

―第7回(6月4日公開予定)に続く

第1回:https://www.logi-today.com/376649
第2回:https://www.logi-today.com/377070
第3回:https://www.logi-today.com/377916
第4回:https://www.logi-today.com/378377
第5回:https://www.logi-today.com/378994

永田利紀氏の寄稿・コラム連載記事
“腕におぼえあり”ならば物流業界へ~正社員不足、求人企業は偏見改めよ
https://www.logi-today.com/356711

コハイのあした(コラム連載・全9回)
https://www.logi-today.com/361316

BCMは地域の方舟(コラム連載・全3回)
https://www.logi-today.com/369319

駅からのみち(コラム連載・全2回)
https://www.logi-today.com/373960

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https://www.logi-today.com/374276

物流業界に衝撃、一石”多鳥”のタクシー配送
https://www.logi-today.com/376129

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https://www.logi-today.com/377837