話題我が社の主要拠点がある地域に、前線に伴う大雨で警報が発表された。自治体からは、避難を呼びかける情報も出ているようだ。交通もマヒ状態らしい。経営トップからは、従業員の安否確認の指令が出た。現地の担当者は手作業でなんとか情報を収集しようとするが、もはやパニック状態。本社の総務部署も大混乱で、各方面から集まる情報を集約して適切な指示を出す方法がわからない――。
近年、地震や台風、大雨による自然災害が企業の事業継続に深刻な影響を及ぼす事例が増加している。こうした「これまで経験したことのない」災害をはじめとする危機発生時に、的確かつ冷静な対応を進めるにはどうすればよいのか。頭を悩ませるサプライチェーンの担い手たちの強力な味方として2000年に登場したのが、ITサービスで企業の事業継続を支援するレスキューナウ(東京都品川区)だ。
現在では、広域に生産・流通拠点を構える食品メーカーや製薬会社、卸・流通会社、コンビニエンスストアチェーンのほか、こうしたサプライチェーンを支える物流会社や大手宅配会社が同社のサービスを採用し、災害発生時の正確な情報収集と迅速な初動対応に活用している。ある大手食品メーカーでは、全国700か所にのぼる生産・流通拠点の状況がリアルタイムに把握できるようになったほか、災害予測データを用いて事前に配送ドライバーの安全に配慮した運行判断を下せるようになったという。(LOGISTICS TODAY編集部)
物流危機管理のポイントは「初動対応」
災害発生時に、その後の被害を最小限に食い止められるか否かの分かれ目となるのが、初動対応だ。レスキューナウ営業部の渡邊和隆氏は、危機管理サービスを提供する最大の目的を「災害発生時の『初動』支援」と言い切る。
近年の企業や自治体などの災害対応事例では、災害覚知から2時間以内に、いかに情報を収集して的確な判断を出せるかがポイントといわれる。とはいえ、災害発生直後に、断片的な情報を少人数で収集し短時間で分析するのは困難を極める。こうした場合、社内の情報共有など外部に委託できない業務は社員が担うとして、当局の発表情報など社外情報の収集はレスキューナウのサービスを活用することで、「社内や取引先の状況確認を実施している間に並行して、高品質な災害状況の集約情報が確実に届く体制を構築できる」(渡邊氏)という。
例えば、全国に展開する物流拠点の被災状況の把握は、サプライチェーン確保の観点からも極めて重要な経営課題だ。レスキューナウが提供する危機管理サービスには、危機管理情報とユーザー企業の拠点を地図で示せる「レスキューWeb MAP(ウェブマップ)」や安否確認メールを自動配信する「安否確認サービス」、クラウドツールが被災状況を集約しシステム上で一斉送信する「ステータスChecker(チェッカー)」などの機能があり、本社から遠く離れた物流拠点の被災の有無や従業員の安否の確認、現地の被害報告の集約・データ化がスムーズに実現できる。
デジタル地図で災害覚知から情報集約、可視化まで
同社の危機管理サービスのなかで、特に物流会社の関心を集めているのが「レスキューWeb MAP」だ。デジタル地図上に、市区町村レベルで気象庁などが発表した地震の震度や気象に関する各種警報などの情報に加えて、河川の氾濫情報、道路の規制状況などが表示される。レスキューWeb MAPの特徴は、「自社や取引先の全国の拠点を地図上に登録またはプロットして、拠点の災害の程度や交通状況などを視覚化できること」(営業部の近藤俊一氏)だ。危機管理情報サービスの「レスキューWeb」をデジタル地図で可視化し、それを一枚の地図に表現したのがレスキューWeb MAPというわけだ。
近藤氏に、レスキューWeb MAPで自社拠点の被災確認手順を示してもらった。専用画面を開くと市区町村のエリアに合わせて赤や黄に色分けされた地図が表示される。線状に橙色や黄色で映し出されているのは、氾濫発生を示す河川だ。別の黒色の線は高速道路の通行止め区間を示している。確かに一目でどんな災害がどこで起きているかが分かる。
「地図上に丸い点が見えますか。これが自社や取引先の拠点として登録された地点です」。なるほど、プロットされている地域の被害状況を確認すれば、まるで現地にいるかのように状況を把握できる。ほぼリアルタイムでチェックできるというから、まさに現地からの中継と同水準の確度の高い情報というわけだ。
「これまでは、エクセルシートなどで自社や取引先の所在地と気象庁の発表する警報などの自治体名を照合して、被災状況を確認する必要があった。こうした作業は、災害発生時の混乱した状況では煩雑になるもの。こうした作業が、レスキューWeb MAPでは瞬時に済ませることができる」(近藤氏)。ごくわずかな時間で、発生エリアと自社関係先を突き合わせ、対応が必要な場所を抽出する。危機管理担当者の頼もしい味方というわけだ。
レスキューナウがレスキューWeb MAPを展開する目的は、被害の覚知や自社関係先の状況把握だけではない。「サプライチェーンマネジメントのBCP(事業継続計画)対策ツールとして役立ててほしいという思いがある」(営業部の後藤義裕氏)。レスキューWeb MAPの優れた可視化機能と速報性を、顧客である企業の物流途絶回避策としてフル活用してほしい――。そこに、レスキューナウの使命感がある。
緊迫した現地からの状況報告を負担なく実現「ステータスChecker」
レスキューWeb MAPは災害に関する情報が自社や取引先に影響があるのかないのか、初動対応において非常に有効なシステムであることが分かった。一方で、現地の拠点における状況を適時に把握するには、やはり直接現地からの報告を受ける必要がある。とはいえ、現地対応者も拠点が危険にさらされる可能性があるうえ、自らの身の安全も確保する必要があるという極度に緊迫した状況で、現地への適切なヒアリングは事実上、困難なのが実情だろう。
こうした理由から、現地情報の集約に専用のシステムを検討する企業が増えている。レスキューナウはこうしたニーズに対応して、現地の被害状況を集約するシステムとして提供するのが、「ステータスChecker(チェッカー)」だ。地図上で災害による影響が生じる可能性のある拠点を抽出したうえで、ステータスCheckerから被害状況を報告するよう指示を出すというものだ。
災害時における現場の被害報告は、どうしても情報の粒度や報告形式がバラバラになりがちで、受け手の側は集計するのに時間がかかるだけでなく何度も緊迫した現場とのやりとりが必要になってしまう。双方で大きな負担となってしまうのだ。
ステータスCheckerを導入することで、現地の担当者はスマートフォンやパソコンからアンケート形式で被害状況を回答すれば、本社などの受け手は被害の大きい拠点と小さな拠点を迅速に判断することができる。ともに負担が軽減され、業務の再開・継続に必要な復旧対応に専念できるというわけだ。
さらに、レスキューWeb MAPとステータスCheckerを連携させれば、被害の大きい報告をした拠点は「赤」、被害のない拠点は「緑」と、地図上で拠点の状況を一目で把握できるようになる。社外と社内の状況を俯瞰して確認することができることから、状況の把握と共有をより円滑に進められることで、迅速かつ正確な意思決定ができ、結果的に災害対応の最適化が可能となる。
実行的な危機管理策定は企業価値そのものだ
災害時の迅速な初期対応と事業の復旧・継続を支援するレスキューナウの取り組み。物流業界をはじめとする産業界の課題は、災害時における事業の継続をいかに実行できるかだ。近い将来に発生が予想されている南海トラフ地震をはじめ、今後も気候変動の影響による台風や大雨による事業継続への影響は避けられないだろう。いかに被害を最小限にして事業継続を図れるか。それぞれの企業が果たすべき実効的な対策を講じているか否かが、企業価値そのものを左右するとの認識を、経営者だけでなく従業員も認識すべきだ。レスキューナウの展開するサービスは、こうした意識の大切さを示していると言えるだろう。
https://www.rescuenow.co.jp/riskmanagement/rescuewebmap
「ステータスChecker」のサービスページ
https://www.rescuenow.co.jp/riskmanagement/stsck
会場:オンライン
テーマ:「防災テクノロジーの未来」
参加費:無料
■レスキューナウの講演
日時:10月6日(水)16時35分~17時
テーマ:「防災の世界でテクノロジーを活かしたい、そのためにレスキューナウが行うこと」
登壇者:レスキューナウ 代表取締役社長 朝倉一昌氏
詳細・申込:https://resilience-tech.net/