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特殊な機能に特化した倉庫建設事業「RiSOKO」のカテゴリーとして注力へ

三和建設、危険物倉庫をブランド化して成長の軸に

2022年8月1日 (月)

話題輸送・保管サービスの多様化・高度化を背景に、国内の物流業界で注目を集めている危険物倉庫。企業におけるコンプライアンス体制の強化策の観点で、さらには新型コロナウイルス感染拡大によるアルコール消毒剤など危険物の保管需要の高まりも契機として、こうした施設の整備に向けた動きが急速に広がっているためだ。

こうした動きを背景に危険物倉庫の建設で存在感を高めているのが、三和建設(大阪市淀川区)だ。法人向け生産・物流施設の建設で定評のある創業75年の歴史を持つ総合建設企業が、危険物倉庫に注力する理由は何か。そこには、顧客が「使える建物」の提供を目指して設計段階から価値を生み出す理念があった。

危険物倉庫事業のブランド化で成長軸に

関西圏と関東圏を中心に企業の生産拠点や物流施設の建設を手がけてきた三和建設。1959年度「日本建築学会賞」に選ばれた寿屋(現サントリー)製麦工場の新築工事は象徴的な存在だ。こうした取り組みのなかで一貫して大切にしている発想、それは「お客様にとって『使える建物』を提供する」との企業ミッションのもと「設計から携わること」だ。現在157人の社員のうち24人が設計を担う人材で占めることからも、こだわりの強さがうかがえる。

▲三和建設の松本孝文・大阪本店次長

こうした設計を重視する企業姿勢が色濃く反映された取り組みに、食品工場の建設事業がある。工場内部の温度や湿度、つまり「空気の流れ」のコントロールが求められる、工場建設のなかでも難易度の高い仕事だ。「こうした食品工場の設計施工実績が、社内における設計技術の向上につながりました。同時に、お客様のニーズに合わせた建築思想を重視する三和建設の認知拡大にも貢献したと考えています」。三和建設の松本孝文・大阪本店次長(設計グループリーダー・リソウコブランドマネジャー)は、食品倉庫の建設事業が三和建設の目指す付加価値創造の素地になったと話す。こうした食品工場事業は「FACTAS」(ファクタス)のブランドで展開している。

一方で、三和建設が創業から手がけてきた法人向け物流施設についてもFACTASと同じくブランド化することにより、さらなる顧客に寄り添った建設ビジネスが可能になると考えた。そこで、特殊な機能に特化した倉庫建設事業ブランドとして2017年に創設したのが「RiSOKO」(リソウコ)だ。

「箱ではなく機能として『理想の倉庫』を追求する」をコンセプトに、危険物倉庫と冷凍・冷蔵倉庫、自動倉庫の3つのカテゴリーで構成する。三和建設が危険物倉庫の建設事業に本格的に注力し始めた契機となったのが、RiSOKOのスタートだった。

危険物倉庫をRiSOKOの一角に据えた、施工事例で得た「自信」

それでは、なぜ三和建設はRiSOKOのカテゴリーの一角に危険物倉庫を位置付けたのか。その動機となったのが、危険物倉庫を巡る2つの案件だった。

1つ目は、危険物倉庫の「マッチングビジネス」の事例だ。日用雑貨を取り扱う物流事業者から、危険物に相当する芳香剤の商品を保管する倉庫の整備について相談を受けた。自社投資は難しいことから、他社の危険物倉庫を賃借したいとの要望だった。

一方で、備蓄米等を手がける倉庫会社からは、稼働率の落ちた古い木造倉庫の有効な活用方法を模索しているとの話が舞い込んでいた。「両社の意向を合致させることで、建て替えによる危険物倉庫賃貸事業というマッチングビジネスが成立したのです。三和建設における危険物倉庫の建設実績として、節目となる取り組みでした」(松本氏)

2つ目は、自社利用の化粧品原料を扱う危険物倉庫の案件だ。「保管に加えて商品の積み替え・小分け作業など一部加工も行う拠点として、危険物倉庫の新設を検討しているお客様でした。999平方メートル(300坪)と倉庫としては大きなものではありませんが、行政との高いレベルでの協議など、これまでさまざまな生産拠点内での難易度の高い計画を経験してきた実績が生かされた、倉庫建設における課題解決ノウハウを蓄積するうえで意義のある案件となりました」(松本氏)

こうした事例は、三和建設にとって危険物倉庫建設ビジネスのブランド化に向けた「自信」となった。さらには、設計から携わり付加価値の高い建築物を作り上げる、創業からの企業姿勢にも合致するものだった。

危険物倉庫の建設事業者としての「絶妙な立ち位置」を確立

こうして始まった、三和建設におけるRiSOKOブランドでの危険物倉庫事業。施工実績が順調に蓄積されていく過程で、三和建設が危険物倉庫の建設に携わる「絶妙な立ち位置」にあることがわかってきた。

「まず、危険物倉庫の規模に係る特性があります。危険物倉庫は1棟で300坪(999平方メートル)が限界であり、1棟あたり2億円程度の事業になります。そのため、全国展開しているような大手建設会社は収益効果の観点から積極的には参入してこないのです」(松本氏)。さらに、設計事務所でも危険物倉庫でノウハウを持つところはなかなか存在しないのが実情だ。

続けて松本氏が指摘するのは、危険物倉庫開発の経験が少ない事業主にとっては、「きっちりと主導して安全で効率的な建物を提供してもらいたい」とのニーズがあるという。「法的な背景などクリアすべき手続きが多い危険物倉庫事業では、やはり信頼を置いていただけるポイントは『実績』です。さらに付け加えるならば、三和建設の強みであるお客様への提案力なのでしょう」(松本氏)

ある顧客の危険物倉庫案件では、こんなシーンがあったという。危険物倉庫の見積もり依頼に係る打ち合わせの席上で、三和建設の担当者が先方に倉庫で取り扱う危険物の量や種類、その荷姿や保管方法などの詳細な聞き取りをしたところ、意外な答えが返ってきた。「地場を含めて複数の建設会社に同様に見積もりをお願いしているが、そんなに細かくヒアリングをしていただけるのは初めてです」。さらに聞くと、他社の見積もりは建設地と予算規模などを確認したのち、すぐに坪単価を提示していた。施主が抱く信頼感の差は歴然だろう。

さらに2021年秋に完成した危険物倉庫にことし、温度管理機能を追加。食品工場の施工実績で培ったノウハウを活用することで、危険物倉庫のカテゴリーのなかで新たな付加価値の創出にも成功した事例として、注目を集めた。まさに、三和建設の異なるブランド同士が連携して生んだ「価値」だ。

あらゆる「危険物」建設案件を担うビジネス構想も

RiSOKOがスタートして5年。三和建設は危険物倉庫の建設事業者として、もはや物流業界で抜きん出た知名度を誇る存在となった。RiSOKOの枠組みによる危険物倉庫案件は関西圏を中心に12棟が完工、さらにこの先1年で10棟の完工予定案件が進行している。三和建設は大阪の本社のほかに大阪と東京に本店機能をそれぞれ設置。RiSOKOをはじめとする法人向け物件を中心に多様な建設案件を手がける企業への飛躍を目指している。

三和建設がこうした取り組みのなかで、成長エンジンの一翼を担う事業として注力するのが、危険物倉庫だ。物流業界における危険物倉庫へのニーズは、今後さらに多様化・高度化していくとみられる。三和建設はこうした動きに対応してどんな事業戦略を描くのか。

「一つは、倉庫だけにとどまらない『危険物』の枠組みでの事業展開。貯蔵所(倉庫)のほかに取扱所や製造所など、危険物に係るあらゆる建設案件を引き受けるビジネスができないかと考えています」(松本氏)。さらに、BTS型(入居者の要望に応じてオーダーメイドで建設して賃貸するタイプ)危険物倉庫の不動産賃貸業を展開する構想も温めているという。

社会に不可欠なインフラとして認知されている物流サービス。EC(電子商取引)の普及やコロナ禍による消費生活スタイルの多様化は、物流に求められる機能を一気に拡大させている。危険物をめぐる物流も、決して例外ではない。三和建設はこうした物流ビジネスの変革を好機と捉えて、危険物倉庫の観点で強みを発揮することによる新たな価値の創造に挑んでいる。

三和建設は8月24日15時から16時まで、オンラインセミナー「危険物温度管理倉庫の計画留意点」を開催する。松本氏が登壇し、三和建設で計画・設計・施工を行った温度管理倉庫改修工事を事例に、危険物倉庫特有の留意点について解説する。8月24日15時から16時。Zoomで行う。定員は30人で参加は無料

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