話題プロロジス(東京都千代田区)は29日、東京オフィスのイベントスペースで物流スタートアップによるピッチイベント「第3回 inno-base Pitch」を開催した。同社が運営するインキュベーション施設「inno-base」(イノベース)の入居企業3社が登壇し、荷主や物流企業に対して現場課題を直接解決する最新テクノロジーを提案した。

▲プロロジス上席執行役員の中村明夫開発本部長
冒頭、主催者を代表してプロロジス上席執行役員の中村明夫開発本部長が登壇。「単にスペースを提供するだけでなく、入居企業とともに新しいソリューションや付加価値を創造することを目指している。本日の出会いが新たな付加価値や物流の発見につながる場となれば」と挨拶した。
プロロジスでは、米国本社がこれまでに50社・450億円を超えるスタートアップ投資を行っているほか、日本国内でもスタートアップへの投資や業務資本提携を推進。inno-baseの入居企業とプロロジス施設を利用するカスタマー企業との間では、実証実験(PoC)や製品導入、内覧会での共同展示といった協創・コラボレーションの取り組みがすでに広がっている。
こうしたスタートアップとの協創を通じて、プロロジスが解決を目指すのが物流業界の構造課題だ。物流業界では「2024年問題」に伴う人手不足やコスト高騰への対応が急務となっている。第3回となる今回は「自動化」と「データ・AI(人工知能)」の活用を軸に、現場への社会実装を見据えた実務的なソリューションが紹介された。
専門知識不要・省スペースで「すぐ動く」自動化
筑波大学発のAIロボティクススタートアップであるCloser(クローサー)は、専門知識や大規模な工事を不要とするパレタイズロボットを提案した。
従来の産業用ロボット導入では専門エンジニアによる設定やティーチングが課題となり、多品種を扱うラインや中規模現場での自動化を阻んでいた。同社のロボットは、段ボールやパレットのサイズを入力するだけでソフトウエアが仮想環境でシミュレーションを行い、最適な積み付けレイアウトを自動計算する。
実際の導入事例として紹介された半生菓子メーカーの天栄製菓では、小型協働パレタイズロボットを2台導入。既存の狭いラインにもレイアウト変更なしで設置でき、高さ2メートルまでの高密度な積み付けを実現して確実な省人化を果たした。

▲Closerの樋口翔太代表取締役
同社代表取締役の樋口翔太氏は「土日で立ち上げ、月曜から本稼働させることが可能だ。省スペースで元々人が作業していたエリアにそのまま入り込めるのが最大の強みだ」と語り、現場の作業員が即座に運用を開始できる仕組みを提示した。
サブスクで実現する一気通貫の物流リスク管理
コールドチェーンなどの環境管理を手がけるwillog(ウィログ)は、輸送中の環境変化をリアルタイムで分析・把握するソリューションを発表した。
同社のIoTセンサーデバイスは、位置情報だけでなく温度、湿度、傾き、衝撃、照度といった複合的なデータを収集する。荷主やメーカーの実質売上の3-7%が輸送時の破損や返品などの損失として計上されている現状に対し、トラブルの発生地点や原因を特定・予防することで損失削減に貢献する。韓国では医薬品輸送を皮切りに、自動車の車体輸送や半導体、大手ECの倉庫環境モニタリングまで幅広く活用されている。

▲willogの成 治国(Chiguk Sung)日本法人CEO
同社日本法人CEOの成治国氏は「デバイスと可視化ソフトウエアを一括し、サブスクリプション形式で提供している。海外輸送では使い捨て運用も含めて提案するなど、顧客の追加開発負担がないユーザーフレンドリーなサービスを意識している」と説明した。収集データを活用した保険事業など、金融領域への展開も見据えている。
熟練者の「暗黙知」をデジタル化する現場適応型自動配車
東京大学発のAIスタートアップであるコーピーは、配車計画の最適化における「現場適応型自動配車」を披露した。
多くの現場で既存のTMS(輸配送管理システム)が導入されているものの、車格制限や荷主ごとの例外ルール、当日の急な変更対応など、ベテラン担当者の「経験と感覚」に依存する業務が残されている。同社は既存システムを置き換えるのではなく、個社固有の複雑な判断ルールを「判断レイヤー」として追加する手法をとる。

▲コーピーの小林和男 事業開発マネジャー
大手食品共同配送会社の事例では、毎日2-3時間かかっていた手作業での配車修正を60分に短縮し、作業工数を50%削減した。また介護福祉用具のレンタル大手では、注文を受けた時点で配送可能かを数秒で即時回答できる体制を構築した。
同社の事業開発マネージャーの小林和男氏は「担当者の頭の中にある暗黙知を制約条件としてモデル化する。単なる配車表作成ではなく、当日の変更に強い動的配車や、熟練者の判断背景を組織の教育資産に変えることを目指す」と強調した。
質疑応答と活発なネットワーキングで深まる協創

▲CAPESの西尾浩紀代表取締役
ピッチの進行と質疑応答をコメンテーターを務めた、プロロジスのコンサルティングパートナーであるCAPES(ケープス、東京都目黒区)代表取締役の西尾浩紀氏は、現場経験に基づく実践的な視点から質疑を展開。各社の「既存ラインへの適用性」「デバイスの回収運用」「軒先条件のデータ化」など、実務で直面する疑問を掘り下げた。
ピッチ終了後に設けられたネットワーキングの時間では、登壇企業と荷主・物流事業者の担当者が熱心に情報交換を行う姿が見られ、実証実験や現場導入に向けた具体的な議論が交わされた。プロロジスが提供するinno-baseという場を介し、業界の垣根を越えた物流テックの社会実装と協創の輪が広がっている。

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