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「営業している非営業倉庫」番外編コラム第2回

2020年10月16日 (金)

話題営業倉庫は登録制である。当たり前のことだが、当事者はその例外が数多く存在していることを知っている。営業倉庫制度の歪みに切り込む永田利紀(LogisticsToday企画編集委員)の番外編コラム3回シリーズの第2回。

第2章- 要件の再検証

前章で述べたとおり、営業倉庫という法規の存在理由から検証する必要があると思うのだが、大前提として、まずは「誰のために」という点を確認しなければならない。誰もが即答するのは「荷主保護のため」だろうし、事実、法にはそうある。

■ 今さらの要件

(イメージ画像)

では「荷主のため」というのは具体的に何を指すのか。

例えば、建屋の対候性や耐震性などは、それが有償の物品保管に供する建屋でなくても、現在の建築基準法や消防法の要件を満たす中身であれば、それなりの及第評価は得られる。

今さら「火災保険などの荷主保護要件」を太字表記するまでもなく、誰もが「加入は当然のこと」と断じるだろう。一般建築物に対してでさえそんな意識なのだから、倉庫建屋については言わずもがなだ。

むしろ未加入こそ、稀で欠陥甚だしいことを看過している不届き者の保管管理者であり、法律以前に商道徳や社会性を疑われること自明である。その他の営業倉庫届出に必要な建築及び管理要件にしても、特殊で特別な内容は、現在の建築事情からしてほぼ皆無だ。

■ 要件の確認

では実務的な視点から見た「営業倉庫」とはどういうもので、その現状はどうなっているのかを列挙してみたい。いわゆる教科書風の体裁よい表現や記述は望むなかれとお断りしておく。ただし、筆者は実際に営業倉庫の届出と登録を自分で行った経験があるので、書いている内容はすべて「本当にあったこと」や「市井の実情」であるという前提で読み進んでいただきたい。

筆者が把握している営業倉庫の現実は以下のとおりである。

(1)あくまで「届出」登録であり「許認可」ではない。経営の優劣や規模などは無関係。零細経営でも、顧客からのクレーム山積でも、ミス多発会社でも全く支障ない(2002年3月以前は許可制だったが、現行要件と大きな差はない)。

(2)とはいえ、届け出にあたり、必要書類や図面に欠落や不備があれば登録できない。しかし役所で丁寧に修正点を指摘してくれるので、素直に正確に従えば必ず書類は揃う(国土交通省運輸局の管掌である)。

(3)届出は事業者単位ではなく、その事業者の運営する倉庫建物ごとに必要となる。よくある「わが社は営業倉庫を営む正規業者です」という言葉は、「営業倉庫登録している建屋で倉庫業務をしている会社です」というのが正確な表現である。

(4)多くの倉庫会社は、届出登録済み営業倉庫とそうでない倉庫を混在運営している。「この運営倉庫では正規業者ですが、他の運営倉庫ではモグリなんですよ」みたいな告白を倉庫会社はまずしないが、実態としてはとても多い。

(5)現状は一棟として使用しているが、実際には継床による建て増し部分があっても、増築部分だけで届け出できる。逆にいえば、一棟でありながら営業倉庫部分と非登録部分があってもよい。営業倉庫内を見学していると、いつの間にか「モグリの倉庫」の中を歩いていた――なんていうことも起こるし、現制度では特段珍しくはない。したがって、倉庫会社によっては、同一荷主の保管区画が営業倉庫と非営業倉庫にまたがっていることも起こりえる(悪意や恣意性はないと思う。それぐらい実務には無縁なのだ)。

(6)届け出の内容で最重要条件は、当該届出倉庫に「建物検査済証(以下、済証)が発行されているか否か」である。建築確認済証だけでは不十分。

(7)現実には、届出登録なしで倉庫屋を営んでいる会社や個人事業主が大多数を占める。それらは法に定める倉庫業ではないし、無届営業には罰則もあるが、筆者の周辺や情報入手先、同業者から摘発や業務停止、罰金などの実例を耳にしたことはない(あくまで筆者の周囲の話であるから、国内の全事例を調査したうえで述べているのではない)。

(8)現実問題として、既存の倉庫建物は済証なしの物件が大多数を占める。公式統計としては2000年時点で済証を取得している倉庫建物は40%未満であり、古くなればなるほど取得率は下がる。築年数の古い倉庫は60%余りが「モグリの倉庫」である。さらに書けば、この統計自体が胡散臭い。しかも古い。現実問題として、倉庫業と銘打って営んでいる実数を調査することは困難極まりないはずだ。なぜなら、運送業の兼業倉庫まで検索する必要があり、届出登録済みトランクルームに類する非登録のサービス業に至っては、誰も把握すらできていない。実態は倉庫業と表記している会社とその使用建屋の80%以上は登録と無縁と思われる。補足だが、かつては公庫以外から建築資金を調達するのであれば、役所的に違法でも確認申請だけでなんとかなった(現在は融資条件に建物検査と済証取得が含まれている)。

(9)倉庫業の技術品質や顧客対応力とは全く無関係である。

(10)損害保険会社の「倉庫保険」の契約や物流関連の業界団体や協会加入に、必ずしも営業倉庫登録の有無は影響しない。必須としている団体もあるが、「全ての運営倉庫が届出登録済み」を入会要件に規定していないようなので、業界内部のこだわりは緩いと評されてもいたしかたないだろう。もちろん公式に発表しているわけではないが、会員名簿を見れば明らかだ。ちなみに倉庫保険は営業倉庫登録済み建屋なら加入義務がある(倉庫業法)。

(11)国内上位の物流会社は、営業倉庫登録できない物件の処分を進めている。とりわけコンプライアンス意識の高い上場企業にとっては喫緊の課題となっている。

(12)自社物件でも、今から新築するのであれば要件取得を意識しておいて損はない。自社使用の限りは届出不要だが、売却や賃貸の必要が生じた際に多少有利に働く。建築場所の用途地域と建材が要点となる(詳細は運輸局のガイダンス参照)。

まだあるが、概要の把握ならこれぐらいで充分かと思う。

例えば、タクシーのような業態なら、白ナンバーでの営業は完全に「モグリで違法」扱いされるのだが、倉庫業はなぜか”白タク営業”のほうが多い。車両のナンバープレートにあたる識別票を倉庫建屋外部に大きく掲示することが公的義務とされないことや、委託元(荷主)が営業倉庫自体の仕組みや規則を知らない、あるいは興味がないからである。

(イメージ画像)

事実、倉庫と名がついても、貸倉庫は不動産業であり倉庫業ではない。従って倉庫業法云々は無関係である。しかし、床に何らかの単位や計算方法で値段をつけてモノを預かり、あれこれ作業したとたんに倉庫業になってしまう。その辺の線引きや基準があいまいだから、非常に緩い区分が存在し続けている。

厳密に線引きされないというのは、現状で支障がないからという解釈も成り立つが、ここで自身の見解を述べておく。

今さら魔女狩り風の罪人探しを始めるよりも、今後の法運用を改変する努力とその中身を「世の中の現実に即した内容」とする方向に向けてほしいと願う。

次章でその具体案の概要を記す。

―第3回に続く

永田利紀氏の寄稿・コラム連載記事
■連載
コハイのあした(連載9回)
https://www.logi-today.com/361316
BCMは地域の方舟(連載3回)
https://www.logi-today.com/369319
駅からのみち(連載2回)
https://www.logi-today.com/373960
日本製の物流プラットフォーム(連載10回)
https://www.logi-today.com/376649
もしも自動運転が(連載5回)
https://www.logi-today.com/381562
あなたは買えません(連載5回)
https://www.logi-today.com/384920
物流人になる理由 (連載中)
https://www.logi-today.com/400511
■時事コラム
“腕におぼえあり”ならば物流業界へ
https://www.logi-today.com/356711
-提言-国のトラック標準運賃案、書式統一に踏み込め
https://www.logi-today.com/374276
物流業界に衝撃、一石”多鳥”のタクシー配送
https://www.logi-today.com/376129
好調決算支える「運賃値上げ」が意味すること
https://www.logi-today.com/377837
営業している非営業倉庫-実態に即した法改正を望む-(連載中)
https://www.logi-today.com/402673
■取材レポート
業界の“風雲児”MKタクシーに聞く「タク配」の可能性
https://www.logi-today.com/380181
その仕事、港湾でもできますよ -兵機海運取材レポート-(連載3回)
https://www.logi-today.com/386662