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24年問題特集第3弾はフォークリフト

無人化と人材確保、問われる物流現場の過渡期対応

2023年10月19日 (木)

話題荷役現場に欠かせないフォークリフトだが、今そのオペレーターの不足が課題となっている。

政策パッケージにおいて言及された荷役現場効率化のためのパレット運送利用の推進、さらにはドライバーの働き方における荷役作業範囲の明確化など、物流改革におけるフォークリフトの必要性はますます増加するばかりだが、フォークリフトの登録教習機関あたりの技能講習修了者数は、2008年から19年で33%減少している。

では、フォークリフトの車両数の推移はどうか。日本産業車両協会(JIVA)が毎月公表しているフォークリフトの生産台数推移では、ことしに入ってから前年月比マイナスの報告が続いている。昨年度のフォークリフト生産台数は、バッテリー式が前年比9.4%増の6万7121台、ガソリンとディーゼルを合わせたエンジン式は同2.3%増の5万9480台、総生産台数は6.0%増の12万6601台と2年連続の上昇を続けてきただけに、まさに失速といったところだ。

これは、フォークリフトの世界トップシェアである豊田自動織機による排ガス規制の不正発覚が影響したものだ。3月に発覚した認証試験不正は、4月には同社のディーゼルエンジン2種類の型式指定が取り消される事態となった。業界最大手の名門企業による不正、しかも産業車両団体が環境問題への取り組みや物流危機対応への貢献を掲げていたタイミングでの不祥事だけに、業界全体に与えるインパクトも大きかった。エンジン式からバッテリー式へ、また有人フォークからAGF(自動運転フォークリフト)への転換期での問題だけに、単に一企業の業績の問題ではなく、フォークリフト市場の改変にもつながりかねない出来事となってしまった。

勢い増すAGF市場と中国企業躍進、されど普及までまだ長い道程

オペレーター不足、さらには有人フォークリフト市場の失速に、国策としての物流改革で改めてDX(デジタルトランスフォーメーション)化が叫ばれる状況となり、自動化省人化のためAGF台頭の機運はますます高まっている。9月に開催された「国際総合物流展2023 第3回 INNOVATION EXPO」においても、従来のフォークリフト車両メーカーのみならず、AGV(無人搬送車)・AMR(自律走行搬送ロボット)のバリエーションから発展させた企業や、ITソリューション企業が他社のフォークリフト車両との提携でAGF市場に参入するなど、大手からスタートアップまで、さまざまなバックボーンを持った企業から多数出品され、会場を賑わせていたのが印象深い。

▲マルチウェイロボット製の自動フォークのデモンストレーションの様子

中でも、すでにAGFの国内市場1万3000台に達しているという中国のVision Nav Robotics(ビジョンナビロボティクス)、マルチウェイロボット、ForwardX Robotics(フォワードエックス・ロボティクス)など、中国で先行する自動化技術の日本市場投入を目指すロボティクス企業の隆盛が際立つ。各社とも多数のラインアップをそろえ、現場で磨かれた技術や価格面の優位性で日本の物流品質への対応をアピールする。

迎え撃つ立場の国内メーカーでは、有人フォーク大手の三菱ロジスネクストと三菱重工業が共同開発する無人フォークリフト「AGF-X」を参考出品した。三菱重工が開発を進める自動化・知能化ソリューション、「ΣSynX」(シグマシンク)搭載により、高精度な自動荷役実現を目指す。また、ラピュタロボティクス(東京都江東区)は、三菱ロジスネクストの機体に自動化システムを搭載した「ラピュタAFL」の格納・パレットピッキング機能を披露。安田倉庫、鈴与の物流センターなどへの導入事例なども相次いで報道されており、導入拠点の増加から運用実績を積み、市場拡大を目指す段階へと移行している。また、大王製紙グループの施設では、仏BALYO製のAGFが採用されたとのニュースもあり、市場参入企業の多国籍化も進む。

▲大王製紙グループは仏BALYO製の自動フォークを導入(出所:大王製紙)

各メーカー、ベンダーとも、センシング技術、制御技術などで機能の向上、差別化を進めており、より繊細なパレット位置の調整や、段積み・段ばらしへの対応など、AGFは日々進化を続けている。かつては自動作業の遅さが課題とされていたが、現状はむしろ安全確保のために人間のスピードに準じて調整している部分もあり、開発競争がAGF技術の進歩を後押ししているのは間違いない。AGVとの連携による庫内搬送機能の拡大や、垂直搬送機との連携など、庫内「自動化」においては重要な役割を果たした運用も行われており、トラックから自動で荷下ろしし、そのままAGVに連携する運用がNEXT Logistics Japan(NLJ、ネクスト・ロジスティクス・ジャパン)の相模原センターで実装されるなど、その活躍領域は拡大するばかりだ。

▲NLJ相模原センターにて、トラックからAGVへ荷物を移す自動フォーク

とはいえ、JIVAが発表した22年度の無人搬送車システム全体の納入実績によると、国内・輸出向けの納入件数は合計で821システム(前年比4.7%増)、納入台数は2441台(6.6%減)となっており、納入システム件数では、輸出向けの減少を国内向けの増加でカバー、納入台数では、国内向けはほぼ横ばいで海外向けについては大きく減少しているという状況だ。納入件数の車両タイプ別の割合は、「無人搬送車(台車)」が 46.7%(前年比46.5%)、 「無人けん引車」が 46.4%(同45%)、「無人フォークリフト」が 6.9%(8.5%)と、自動フォークリフトの割合は2年連続で低下し、実数としては200台に満たないごく少数にとどまっている。オペレーター不足が後押しするとはいえ、属人化した物流現場からの変革はまだまだ過渡期といった状況だろう。

オペレーター確保、育成へのさまざまな取り組み続く

AGFの普及で低価格化や運用実績の積み上げを待つ間は、引き続き既存の資産の有効活用、オペレーター人材発掘の取り組みを続けねばなるまい。

配送事業、ライフサポート・エガワ(東京都足立区)では、毎年フォークリフトオペレーターを定期採用、大卒女性や外国人などが会社の戦力として定着している。また、プロロジスとスキマバイトサービスのタイミー(港区)は、スキマバイトの登録者を対象にしたフォークリフト運転技能講習を実施、より柔軟な働き方で対応できるオペレーターの裾野を拡大する試みを行っている。

▲プロロジスとタイミーの共同事業、運転技能講習の様子(出所:プロロジス)

そもそも自動搬送にそぐわない製品・業種はまだまだ多く、オペレーターが必要な現場ではこれからも、新規人材の確保と育成を諦めず、従来のオペレーター像に縛られない、新しい発想での人材発掘を続けていく必要があるだろう。AGFがなんでもやり遂げる、自動化現場の未来感あふれる荷役現場も魅力的だが、個人的には熟練オペレーターによる鮮やかな「職人技」、並外れた操作技術に驚かされるような現場が、いつまでも受け継がれることにも期待してしまう。

最後になるが、これからのフォークリフト現場では、物流の混乱が作業者の安全を脅かすような事態につながらないことが、もっとも大切なことなのは言うまでもない。23年1月から6月のフォークリフトに起因する死傷事故発生件数は805件、そのうち死亡事故は12件と報告されている。「人手不足」「効率化」、さらにはオペレーターのスキル不足なども、大きな事故につながる要因となりえる。安全をないがしろにし、貴重な人材を損耗することのないような荷役現場の運営を改めてお願いしたい。

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