「営業している非営業倉庫」番外編コラム第3回

話題営業倉庫は登録制である。当たり前のことだが、当事者はその例外が数多く存在していることを知っている。営業倉庫制度の歪みに切り込む永田利紀（LogisticsToday企画編集委員）の番外編コラム3回シリーズの第3回（最終回）。

第3章- 建物から事業者

法務については素人と自認しているし、法の成り立ちについて議論する気は毛頭ない。歴史をたどれば、相応の理由や過程を経て立法し改正されたのだろうと理解している。

今求められているのは、時代とともに変わる企業活動の実情に沿った法運用だ。当然ながら、監督官庁は十分に心得ているはずだし、筆者が知らぬだけで、すでに変革を進めているのかもしれない。いずれにしても、私見として「こうならよりよいのでは？」という提案を記しておく。

■ もはや建物主体ではないはず

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前章までに記したとおり、営業倉庫登録は建屋ごとに求められ、同一事業者は倉庫業を営もうとする該当建屋の数だけ書類作成し届出登録をしなければならない。前時代は建築技術や基準確認が不十分なことも散見されたため、事業者への資格付与にあたり、倉庫としての健全性や堅牢性の確保に難があることも珍しくはなかったのかもしれないし、事実古い倉庫には「これでも倉庫なのか」という外観・内部の物件も多い。

しかしそれとは逆に「こんないい建物で道路付けも最高なのに、営業倉庫が取れない」という物件も多い。それはひとえに「建築検査済証（以下、済証）」がないからで、厳密には違法建築にあたるからだ（既述のとおり、倉庫建屋に限らず、そんな建物は山ほどある）。

今は融資要件に済証の交付が含まれており、建築技術の著しい進歩もあいまって、新築案件については、ほぼ営業倉庫登録が可能だと思う。企業のコンプライアンス意識が高まり、「無届けの非営業倉庫への業務委託は順法ポリシーに反する」といった観点からも、急激に正規登録物件へのシフトが上場企業を中心に進んだ。

■ 環境の整備とともに

まだ古い建屋で届出登録なしのまま営業している倉庫も多いが、新築への建て替わりや、預け替えが進む現状を踏まえ、そろそろ「建屋」から「事業者」への営業倉庫登録要件を改変してはどうだろうか。

今は赤信号を皆でわたっているものの、誰も怖くないとは思っていない。しかし、背に腹をかえるわけにもゆかず、非登録倉庫での商いを止めることは、明日からの事業と従業員の生活を失うことになる。ゆえに、「今までお目こぼしにすがってきたように、そのまま生業を続けていきたい」という思いは、大多数の中小倉庫や運輸事業者の偽らざるところだろうし、その心情は十二分に理解できる。

■ 倉庫営業の要件

現状の非登録倉庫での営業・作業が、”荷主とその先の顧客にとって”支障ないのであれば、登録自体の要件を変えてもよいのではないだろうか。

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「倉庫営業事業者」は倉庫寄託約款もしくはそれに準じた倉庫業としての事業運営を義務とし、その営業に使用する倉庫建屋には、耐火や耐震などの基準設定や、接道、用途地域などの制限を満たすことが求められ、違反すれば罰則を受ける――という程度の資格要件なら、倉庫営業で商取引を行う事業者はもれなく届出登録可能になるし、まさに最低限度の必要条件としても理解できる。

中古物件でも、適当な改修や補強で営業倉庫として使用可能になり、事業者の自助努力でまかなえる範囲のものになる。過去に戻らぬ限り不可能な「済証」の確保とは異なり、今からの努力で要件を満たせるように規制整備することを監督官庁には強く求めたい。

火気厳禁・防火耐火・耐震耐候・用途地域・接道規制あたりの最低条件を満たせば、倉庫業の看板を掲げて支障ない。そんなところで議論停滞する必要はなく、寄託行為の当事者たる荷主と倉庫事業者の順法と準拠運用を絶対ルールとして施行。それに反対する者などいないはずだと考えている。