「物流人になる理由」第5回コラム連載

話題少子高齢化と現場業務忌避の労働志向によって、物流関連業務は深刻な労働力不足に見舞われている。物流業務に関するイメージや風評を見聞きするたびに、「本当は違うんだけどなぁ」という嘆きや愚痴が止まないのは毎度のことだ。

第6章- 農業と物流の類似点

■ 必然の裏側

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近年の倉庫内設備の進化は目覚ましい。
ハードの自動化や無人化、ソフトの多様化と即応性の向上、最適効率追求とコスト管理――多産多死ながらも、その中には素晴らしいサービスや機材がいくつかある。とりわけWEB活用型の諸サービスは、長年の課題解決や他業界でのあたりまえを物流業界に持ち込む契機となったりもするので、実に頼もしく期待は大きい。

しかしその反面、物流部門の人材能力が均一化したり下降したり、などの地盤沈下が進行している気がしてならない。

■ 豊かな畑

物流業務には農業と似た側面が多い。
荒れ地を耕し、雑草を摘み取り、土を肥やすために肥料をまき、風雨への備えを怠らず、実りを得るまで地道で単調な作業をひたすら愚直に繰り返す。そんな農業業界にも、近年では耕うん機などの最新機材や作物生育管理に必要な気象データのリアルタイム確認、収穫から出荷までの機械化による人的負担低下と省人化などが進んでいるのだとか。また、高機能性薬剤をドローンや無人自動運転の機材で耕作地に散布できるようになったため、虫害や疫病の防除も負担少なく効率化できる。

「素晴らしい高機能農耕地」「農場ではなく工場」「農業という最先端事業」――こんな言葉を何度見聞きしても「豊かな畑」という形容を連想できないのは私だけなのだろうか。そもそも、自身の思い描く「豊かな」というイメージ自体が、もはや世の中には無用の概念となってしまったのだろうか。

■ 豊かな現場

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しかし、テレビやウェブで農業関係の番組を観れば、そんなモヤモヤは解消する。農業関係者は老若男女を問わず「農業には人の目と手と経験が不可欠だ」と断言する。機械やシステムはあくまで補助であり、補完機能として不可欠となっている面もあるが、「前提条件として知識や技術や経験無くして、消費者の顔を思い浮かべながらの収穫は実現できない」という。

この話を物流現場に置き換えることは難しい作業ではないだろう。いくつかの単語を物流現場の言葉に変換すれば、農業から物流業に変転した各場面が映像として立ち上がってくる。

利用・活用・補助・補完、などの表現にとどめるべきは何なのか。耕す技術あっての耕うん機、有機肥料を自前調合できる知見あっての除草剤や化学肥料、天候と作物の関係性の理解と過去の経験やデータ分析能力あってのシステム活用。やはりここでも言葉を置き換えれば物流現場に当てはまることばかりだ。この先については読者諸氏みずから言葉をつないでいただければ幸いだ。

―第6回（11月9日公開予定）に続く