イベントExotec Nihon(エグゾテックニホン、東京都港区)は9日、「国際物流総合展2026」の会場近くで荷主や物流事業者の経営層や物流責任者に向けたイベント「Executive ExoNight」(エグゼクティブエグゾナイト)を開催。物流統括管理者(CLO)の選任義務化などを背景に、物流を最重要の経営課題として捉える議論が交わされた。
パルやバリューブックス(長野県上田市)などの荷主企業、Mujin Japan(ムジンジャパン、東京都江東区)らマテハン機器ベンダーが登壇したパネルディスカッションでは、倉庫自動化の真の目的は「人減らし」ではなく、「顧客価値の最大化と事業成長」であることが明確に示された。(編集局・鶴岡昇平)

▲パネルディスカッションで物流戦略を語るバリューブックスの鳥居希代表
このイベントで最も白熱したのは、「変化の激しい時代の物流戦略」をテーマにしたパネルディスカッション(モデレーター:ローランド・ベルガー小野塚征志氏)だった。自動化投資をいかに自社の事業戦略と直結させているか、ユーザー企業から赤裸々な実態が語られた。
「Bコープ」認証を取得し、ステークホルダー全員が潤うエコシステムの構築を目指すバリューブックスの鳥居希代表は、埼玉県に構える床面積1700坪の拠点に10億円規模の投資を敢行し、エグゾテックの立体型ピッキングシステム「Skypod」(スカイポッド)の導入を進めている。

▲バリューブックスの鳥居希代表
「自動化は人を減らすためではなく、次にやりたい事業があるからだ」と鳥居氏は強調。「リストラはしない」と宣言した上で、従業員の不安を払拭するために10回にわたる説明会を実施したという。「自動化で空いたリソースを使って、これまで買い取れなかった本を買い取れるようにし、約束している『賃上げ』を果たすのが今回の投資の目的だ」と、生々しい現場の声を明かした。
一方、「3COINS」(スリーコインズ)など60のアパレル・雑貨ブランドを展開し、従業員のSNS発信を起点にEC売上が急拡大しているパルの堀田覚取締役専務執行役員も、「物流が事業成長を阻害してはいけない」と語る。

▲パルの堀田覚取締役専務執行役員
同社は天高5メートルを生かして保管効率を3倍に、ピック生産性を5−6倍に引き上げた。「テクノロジーはあくまで我々が届けたい価値を支える手段であり、すべてを無人化することが目的ではない」。堀田氏は、荷主として現場に入り込み、3PL事業者と切磋琢磨する重要性を指摘。2030年度のEC売上1000億円を目指す中、「全社戦略・事業戦略ときっちりフィットさせることが投資判断の鍵になる」と力説した。
こうしたユーザー企業の変革を技術面で支えるベンダー側からは、投資を成功に導く具体的なアプローチが提示された。

▲ムジンの荒瀬勇取締役CEO
知能ロボットコントローラーで物流自動化を進め、先日Exotecとの業務提携を発表したムジンの荒瀬勇取締役CEOは、「部分的な自動化から、エンドツーエンドの全体最適化へシフトしている」と現状を分析。「自動化設備は24時間稼働するため、人が運用するセンターとは設計思想を変える必要がある。完全自動化を推奨するわけではなく、中央値付近の物量で設計し、ソフトウエアの更新で変化に対応できるフレキシビリティが重要だ。そして何より、フィジカルAI元年と呼ばれる今、これらの設備を扱う人材を社内でどう育てるかが、3年後の経営戦略を大きく左右する」と、人にフォーカスした視点を提供した。

▲エグゾテックニホンの立脇竜社長
エグゾテックニホンの立脇竜社長もこれに同調する。「物流への投資は、実は人材への投資でもある。単純作業から設計・改善業務へとシフトすることで、企業の『手の内化』と体力強化につながる」。さらに同氏は、ROIC(投下資本利益率)などの指標を活用し、自社の「顧客価値」の実現度を測ることがCLOに求められる役割だと説いた。
パネルディスカッションに先立って行われた基調講演では、仏・エグゾテック本社の共同創業者兼CTOのルノー・ハイツ氏が登壇し、グローバル市場における倉庫自動化の3つのトレンドとして、「全体最適」「順応性」「標準化」について解説した。
同氏は特に「順応性」の観点から、レイアウト設計における“直列と並列”の違いに言及。「直列設計は柔軟性欠如の警告サインであり、並列設計こそが長期的な適応を可能にする」と指摘した。欧州のスポーツ用品大手Decathlon(デカトロン)の事例では、標準化されたシステムモジュールを用いることで、欧州7拠点のネットワークをわずか2年で構築し、各拠点の状況に合わせて稼働後も柔軟に能力を拡張しているという。

▲エグゾテック共同創業者兼CTOのルノー・ハイツ氏
「自動化設備は一つのツール。使いこなすのではなく、使い倒してほしい」(ムジン・荒瀬氏)
「何のために物流を良くするのか、そこが一番重要だ」(バリューブックス・鳥居氏)
イベントを通じて浮き彫りになったのは、最先端のロボティクスを導入すること自体はゴールではないということ。自社の提供価値を再定義し、現場の従業員と対話し、データを経営判断の基盤とする。物流投資とは、まさに企業価値を向上させるための「経営の原動力」であることが示された。

▲懇親会の場で荷主や物流事業者らと意見を交わすエグゾテックニホン立脇社長
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